2019年10月、新車販売台数ランキング クラウン危機! 昨年の約25%しか売れていない!
増税の影響が顕著に出た10月の自動車販売
日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会がまとめた2019年10月の新車販売台数が発表された。10月の新車販売は、最近とは少し違った状況を呈した。これは消費税の増税が大きく影響しているものと考えられる。
まず登録車は、乗用車だけだと16万4672台で前年比99.3%と微減。貨物車などが伸びたため、全体では19万2504台で100.1%とほぼ前年並の数字になった。一方軽自動車は乗用車が9万5233台前年比79.6%と20%以上のマイナスで、貨物車を含めても12万2280台で前年比77.7%とほぼ似たような状況だった。
地方に住み、クルマがないと生活ができないが、クルマにたくさんのお金をかけられないので軽自動車を買うというようなユーザーが、消費税増税の影響をてきめんに受けていることを示している。
また、9月の軽自動車販売は好調だった。増税前の駆け込み需要が若干あったからだ。10月は、その反動で販売台数を落としているともいえる。
カローラブランド復活の狼煙? 軽自動車を抑え3位へ
こうした状況を受けて、別掲の販売ランキングにも目に見える変化が出ている。最近は1位から4位、あるいは5位までを軽自動車が占めるのが普通だったが、10月は3位にカローラが食い込んだからだ。
カローラは、先にカローラスポーツを発売し、次いでセダンやフィールダーがフルモデルチェンジを受けたことで、新型車効果が大きく出たとはいえ、軽自動車の上位独占を崩したのは大きい。トヨタは、カローラブランドの再構築を行っている。その効果が出てきたということにもなる。
N-BOX急減速?
ただ、トップ10を見ると軽自動車の強さは相変わらずといった印象もある。N-BOXは2年以上にわたって首位を独走しているし、10月は2位にスズキのスペーシアが入った。さらに4位のタント、5位にデイズ系、7位にムーヴ系、10位にアルトという具合で、10車種中6車種が軽自動車という状況である。
ただ、N-BOXはライバル車であるタントやスペーシアに比べ、前年比が最も悪い76.9%になっている。N-WGNのトラブルにより、営業力が削がれたのか、単なるN-BOX離れなのかは不明だが、今後の販売状況を注視する必要がある。圧倒的ナンバー1だったN-BOX離れが進めば、ベスト5は月替わりでナンバー1が異なるという激戦になることが必至だからだ。
圧倒的な強さをアピールするトヨタ勢
トップ10以外も含め、10月に顕著になった傾向としてトヨタの圧倒的な強さがある。トップ10のうち軽自動車を除いた残り4車種は、3位のカローラ、6位のシエンタ、8位のルーミー、9位のプリウスという具合に4車種ともトヨタ車が占めている。トヨタ車以外の登録車となると、日産のノートが14位、その次はホンダのフリードの20位である。20位くらいまでを見る限り、軽自動車とトヨタ車の強さが際立つばかりだ。
地味に強いスズキ
もうひとつの顕著な傾向として軽自動車におけるスズキの強さも上げられる。例月なら5位前後に位置することが多いスペーシアが2位に入っているのはその象徴である。さらに10位のアルト、11位のワゴンR、17位のハスラーという具合にスズキの軽自動車が軒並み健闘している。
ふだんランキングに顔を出したことのないジムニーが35位、エブリイワゴンがぎりぎりの50位に入っているのもスズキの強さを示すものだ。
そればかりではない。これらのスズキ車の多くが、前年比をプラスにしている点だ。軽自動車は20%以上のマイナスなのに、スペーシアが前年比105.2%、アルトが121.3%、ジムニーが117.3%、エブリンワゴンが101.7%という具合に、前年の上回る数字を残している。
ただ、スペーシアとハスラーに関しては、自社登録車が少々目立つ状況。自社登録車とは、メーカーやディーラーの都合で、買い手がいないのに登録(届出)した車両。一度登録(届出)すると中古車扱いになるため、中古車店で未使用車として売られる。ほぼ新車コンディションながら、安価に売られるため、新車が売れなくなる原因を作っている。
ワゴンRとハスラーは、前年比マイナスだったが、全体としてスズキ車が良く売れたのは間違いない。消費税増税に負けないよう、積極的な販売キャンペーンを展開するなどしたのだと推測される。この勢いを継続できるかどうか、11月の売れ行きも注目されるところである。
■2019年10月の新車販売ランキング 1位~10位
1)N-BOX系 15,768台( 76.9%)
2)スペーシア 12,433台(105.2%)
3)カローラ 11,190台(129.5%)
4)タント 11,071台( 95.8%)
5)デイズ系 9,344台( 82.4%)
6)シエンタ 9,302台( 94.5%)
7)ムーヴ系 7,621台( 64.5%)
8)ルーミー 6,962台(108.1%)
9)プリウス 6,898台( 78.5%)
10)アルト 6,441台(121.3%)
大戦争前の静寂? コンパクトカー、大幅ダウン!
ランキングに話を戻そう。11位から20位までの車種は、軽自動車が11位のワゴンR、13位のミラ、17位のハスラーの3車種だ。トヨタ車は12位のタンク、15位のアルファード、16位のアクア、18位のヴォクシー、19位のヴィッツと半分の5車種を占めている。
ほかのメーカーは前述のように14位のノートと20位のフリードだ。ノートは、前年の売れ行きが登録車ナンバー1であったことを強調するテレビCMを流しているが、さすがにモデル末期状態なので、息切れ状態になってきたようだ。
全般的に従来売れていたノート、アクア、ヴィッツ、フィットなどが軒並み前年比大幅マイナスとなっている。このBセグメントのコンパクトカー勢のほとんどが、2019~2020年にかけてフルモデルチェンジが予定されていることが大きく影響していると予想できる。
ヴィッツは、車名が変更され海外名だったヤリスとなる。ヤリスはフィット同様に、東京モーターショーで新型モデルが登場済み。両車は、2020年2月頃に国内で販売が開始される予定。
そして、ノートは時期未定ながら2020年にフルモデルチェンジ予定だ。アクアは、継続販売される。2020年は、Bセグメントコンパクトカー3車種がフルモデルチェンジ予定となっていて、三つ巴のコンパクトカー大戦争となりそうだ。
■2019年10月の新車販売ランキング 11位~20位
11)ワゴンR 5,703台( 76.8%)
12)タンク 5,420台( 96.2%)
13)ミラ 5,367台( 56.8%)
14)ノート 5,263台( 54.0%)
15)アルファード 5,130台( 88.2%)
16)アクア 4,967台( 47.7%)
17)ハスラー 4,642台( 81.0%)
18)ヴォクシー 4,394台( 56.1%)
19)ヴィッツ 4,383台( 73.8%)
20)フリード 4,368台( 64.7%)
トヨタの販売力に大敗を喫したソリオ
21位から30位までの車種でもトヨタ車が目立つ。22位のRAV4、28位のノア、29位のパッソ、30位のC-HRと、4車種を占めている。ここではホンダ車も目立ち、23位のフィット、24位のステップワゴン、26位のヴェゼルと3車種が入った。ただ、この3車種、本来ならもっと上位にいてもおかしくはない車種でもある。ほかは21位にセレナ、25位に軽自動車のキャスト、27位にソリオである。
このうちソリオは、トヨタ/ダイハツから競合車が出てきたことで、かなり影響を受けているように見られる。ルーミーが8位、タンクが12位で合わせると1万台を大きく超えるが、ソリオは3000台以下にとどまっているからだ。さらにいえば、10月はダイハツのトールも2071台を販売して37位に入っているから、その差はさらに広がる。クルマの完成度という点は、完全にソリオが上回っているものの、トヨタの圧倒的な宣伝・販売力にやられている。
■2019年10月の新車販売ランキング 21位~30位
21)セレナ 4,313台( 67.3%)
22)RAV4 3,919台(-------)
23)フィット 3,136台( 48.0%)
24)ステップワゴン 3,127台( 72.0%)
25)キャスト 3,009台( 80.7%)
26)ヴェゼル 2,815台( 55.6%)
27)ソリオ 2,627台( 77.1%)
28)ノア 2,598台( 56.9%)
29)パッソ 2,588台( 58.1%)
30)C-HR 2,554台( 43.6%)
クラウン最大の危機? まさかの超低空飛行、前年比25.7%!
30位台になると、マツダの新世代商品が顔を出す。31位のCX-30が2525台、26位のマツダ2が2080台、39位のマツダ3が1891台という状況だ。いずれもこのランキングや台数ではやや不満といったところだろう。比較的近いタイミングで3車種が続けて販売されたことも、突出した台数を稼げない理由かも知れない。
何度か書いているが、34位のヴェファイアはアルファードの半分以下にとどまっている。フロントグリルのデザインにあれだけ大きな違いがあったら、売れ行きに差が出るのも当然である。発売時に開発関係者にこのことを話したが、「絶対にそんなことはない」と強く否定されたのを思い出す。
そして、完全に危機的状態といえるのがクラウンだ。前年比25.7%という前代未聞の低空飛行状態に陥っている。新車販売台数50位までのクルマで、前年比25.7%という低い数値はクラウンだけだ。
セダンが売れない時代とは言え、膨大な保有台数をもつクラウンにとっては異常事態といえる状況だ。クラウンは、2018年6月に登場したばかり。早くも失速している理由のひとつは、やはり価格だろう。売れ筋となるハイブリッド車は、約500万円からという高額車になってしまった。最上級グレードになると700万円を超える。
この価格帯は、もはやメルセデス・ベンツやBMWといったドイツの高級車に近い。こうなると、ブランド力があるメルセデス・ベンツやBMWに顧客が流れることは当然ありえること。さらに、従来のクラウン顧客では、現在の価格では手が出せないなど、価格面でのマイナス要因が大きい。また、クラウン顧客は、高齢化が進んでいる。価格が高ければ、ダウンサイジングという選択をする顧客も出てくるだろう。クラウン、大ピンチ状態は、まだまだ続きそうだ。
■2019年10月の新車販売ランキング 31位~50位
31)CX-30 2,525台(-------)
32)エスクァイア 2,524台( 72.2%)
33)シャトル 2,485台( 80.8%)
34)ヴェルファイア 2,221台( 58.6%)
35)ジムニー 2,172台(117.3%)
36)マツダ2 2,080台(-------)
37)トール 2,071台( 89.1%)
38)eKワゴン系 1,975台( 68.8%)
39)マツダ3 1,891台(-------)
40)ハリアー 1,804台( 47.9%)
41)ウェイク 1,771台( 70.5%)
42)クラウン 1,723台( 25.7%)
43)フォレスター 1,708台( 42.9%)
44)スイフト 1,669台( 67.4%)
45)ランドクルーザーワゴン 1,665台( 69.8%)
46)インプレッサ 1,615台( 43.0%)
47)エクストレイル 1,493台( 52.4%)
48)ピクシス系 1,489台( 66.4%)
49)クロスビー 1,431台( 73.0%)
50)エブリイワゴン 1,341台(101.7%)
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