日産アリアB6 VSトヨタbZ4X 徹底比較評価の目次
続々とSUVのEVが投入された2022年
空前のSUVブームの中、ミドルサイズのSUVに続々とEV(電気自動車)が投入され始めた。今回は、その中で国産SUVのEVをピックアップ。
全車KINTOによるリース販売というチャレンジに出たトヨタbZ4Xと、国内EVのパイオニアでもある日産が送り出したアリアを徹底比較評価した。
日産アリアB6(FF)の特徴
日産アリアB6(FF)は、アリアはバッテリー容量が2種類設定されている。
- B6(66kWh)
- B9(91kWh)
それぞれ、後輪側にモーターを設置した4WDのe-4ORCEがある。
2022年7月現在、発売されているのはB6(FF)のみだ。他のグレードの販売はコロナ禍における半導体不足などによって大幅に遅れているが、体制が整い次第順次発売される予定だ。
アリアは、日産のEVラインアップでは最上位モデルに当たる。アリアB6(FF)の航続距離は470km(WLTCモード)、アリアB9(FF)は610km(予定)と、航続距離は十分だ。
4 WDのe-4ORCEモデルはまだ発売されていないが、既に非常に注目されている。
e-4ORCEは路面状況や走行状況に応じてタイヤのグリップを最大化し、モータートルクを自動的に前後輪に最適配分するのだ。
減速時には、前後モーターによる回生ブレーキと4輪の油圧ブレーキを組み合わせて協調制御する。フラットな車体姿勢を保ちつつ、スムースで安定したハンドリングを誇る。
トヨタbZ4Xの特徴
トヨタbZ4Xは、2022年5月に登場した新型EV(電気自動車)だ。車名のbZとは「beyond Zero(ゼロを超えた価値)」として、カーボンニュートラルに貢献していく意思が込められている。
bZ4Xは、トヨタとスバルとの共同開発により誕生した。スバルブランドでは、ソルテラとして発売される。両車は外観や走りの質が若干異なり、それぞれのメーカーらしさがアピールされている。
FF(前輪駆動)に加え、後輪側にモーターを設置した4WDもある。この4WDもトヨタとスバルでは、若干制御が異なり、それぞれ独自の走りをみせる。
bZ4Xに搭載される駆動用バッテリーは71.4kWhと大容量だ。航続距離も559km(FF車)と十分である。
特徴的なのは、販売方法だ。
EVはリセールバリューがかなり低い傾向にある。さらに、長期使用によるバッテリー容量の低下が不安視されている。bZ4Xではこうした顧客の不安を払拭するために、全車KINTOによる個人リース販売となった。
残念なのは、トヨタディーラーに急速充電器があまり設置されていない点だ。そのため、出先での充電は、日産ディーラーや公共の急速充電器を使うしかない。
電費、航続距離共にbZ4X優位
1.航続距離・電費比較
日産アリアの評価 4.0
トヨタbZ4Xの評価 3.0
日産アリアとトヨタbZ4Xのバッテリー容量、航続距離は以下の通りだ。(双方WLTCモード)
バッテリー容量 | 航続距離 | |
---|---|---|
アリアB6(FF) | 66kWh | 470km |
bZ4X(FF) | 71.4kWh | 559km |
bZ4X(4WD) | 71.4kWh | 540km |
搭載するバッテリー容量差は、わずか5.4kWhだ。1kWhあたりの電気で走れる電費は、アリアB6が約7.1km/kWh、bZ4Xは約7.8km/kWhである。
ボディサイズはbZ4Xの方がやや大きいが、車重が同じ1,920kgであることを加味すると、bZ4Xは電費面でややリードする。
bZ4Xはバッテリー容量が少し多い。航続距離の559kmは、アリアB6と比べると89km長くなっている。大差では無いものの、EVでより安心して長距離を走りたいという顧客にとっては大きな差といえるだろう。
2.価格比較
アリアの評価 2.5
bZ4Xの評価 2.0
日産アリアB6とbZ4Xの価格は以下の通りだ。
FF | 4WD | |
---|---|---|
アリアB6 | 5,390,000円 | - |
bZ4X | 6,000,000円 | 6,500,000円 |
*bZ4Xは全車リース販売のため参考価格。下記、個人リースの条件等。
- 申込金 385,000円
- 月額利用料1~4年目106,700円/月 5年~10年目 74,690~48,070円
- 5年目以降は毎年支払い金額が減少
- Zグレード(FF)、18インチタイヤ、標準ルーフパッケージ、追加オプション無し、補助金無し
- 東京都全域にお住まいの方が 申し込みの場合、補助金1,300,000 円を1年目〜4年目までの月額利用料に毎月 27,100 円還元。(月額利用料から減額)
参考価格で比較した場合、アリアの価格はbZ4Xに対して少しリーズナブルといえる。大きな装備差も無い。
bZ4Xの場合、リセールバリューやリチウムイオンバッテリーの劣化リスクなども加味し、ユーザーメリットを考えた結果リースのみの販売になっている。その反面、顧客から選択肢を奪っているのも事実だ。買う側により多くの選択肢を提示して欲しい。
リチウムイオンバッテリーはコストが高く、車両価格に大きな影響を与えている。車両価格に対して、リチウムイオンバッテリー1kWh当りの価格を計算すると、アリアB6が8.2万円/kWh。bZ4Xは、8.4万円/kWhとなった。この価格でもアリアのコストパフォーマンスは若干優れている。
だが、アリアもbZ4Xも、まだまだ高価だ。EV普及のために戦略的価格にチャレンジして欲しいところである。
アリアの国の補助金は、最大92万円。bZ4Xは、85万円となっている。これに、地方自治体独自の補助金が加わる。つまり、住む地域によって支払う金額が変わる。
かなりお得感があるのだが、補助金を使ってもこのクラスのハイブリッド車と比べるとまだまだ高価。普及を目指すのであれば、補助金を使うとハイブリッド車よりも安くなるくらいの価格設定を望みたいところだ。
両車補助金のメリット大
3.購入時の値引き術
アリアの評価 3.0
bZ4Xの評価 2.5
日産アリアは、予約販売がメインだ。ようやく通常発売されたグレードもB6(FF)のみである。
そのため、2022年7月時点では値引きはほぼ無い。通常販売されるB6(FF)も同様に、ディーラーオプションのサービスや、下取り車の買取価格アップ程度だろう。
下取り車の価格がアップしても、他店との比較を忘れないようにしたい。
一般的に、買取店は高値で下取りするケースが多い。買取車は、何社か見積を取り、最も高値を付けたところに売却しよう。
アリアで値引きを期待するのであれば、すべてのグレードが通常販売され、納期が安定するまで待つ必要がある。新車効果が無くなり、半導体不足が解消されていることが前提だ。こうした状態になるのがいつになるのかは不明だが、少なくとも1年以上は待つ必要があるだろう。
bZ4Xは、リース販売のため値引きはゼロだ。
4年縛りのリースだが、税金や整備や修理費、自動車保険などすべてがコミコミの定額制である。支払いが一定なので、生活費が安定するなどのメリットもある。また、5年目以降は年々リース料が安くなる。
両車、値引きはほとんど無いが、補助金のメリットが大きい。
アリアB6(FF)は国の補助金が最大92万円+自治体の補助金、bZ4Xは国の補助金85万円+自治体の補助金となっている。かなり補助額なので、EVを買うメリットは大きい。
補助金の予算が超過した時点で終了となる。納期が長期化しているので、買うなら早めがよい。とくに、2022年は数多くのEVが登場しているからだ。
EVらしいデザインのアリア。EVらしさを感じないbZ4X
4.デザイン比較
アリアの評価 4.0
bZ4Xの評価 4.0
日産アリアのデザインは、エンジンよりコンパクトな電動パワーユニットを活かし、非常に短いボンネットになっている。EVらしいシルエットに日本の伝統美を取り入れた。
フロントグリル部分となるシールドには、日本の伝統的幾何学模様「組子」を立体的に表現した。ボディは日本的な「粋」、「整」、「間」「移ろい」といったキーワードをベースにデザインされている。
- ノーズやショルダーのハイライト…シンプルな「粋」
- ノーズからリヤにつなぐライン…機能美である「整」
- リヤコンビネーションランプ…日本のミニマリズム「間」
- ダイナミックなボディ…「移ろい」
フロントフェイスは大きな顔とシールドを組み合わせ、押し出し感をアップした。さらに大きなフェイス上部に薄型LEDを組み合わせるという流行りのデザインも取り入れている。
Vモーショングリルとシーケンシャルポジションランプは一体化され、日産車らしい顔もアピールしている。
リヤビューは最新SUVのトレンドである横一文字型コンビネーションランプだ。
アリアのデザインは個性がありながらも、多くの人に受け入れられやすいといえる。
アリアのインテリアデザインは、「間」をキーワードとし全体的にシンプルにまとめられている。
インパネ周りは、12.3インチ大型モニターをふたつ並べ近未来感を演出した。ダッシュボートに物理的なスイッチは無く、シンプルでユニークな世界観を表現している。
電源を入れると操作系のアイコンが浮かび上がり、操作時は振動するハプティクススイッチ式を採用した。シンプルながら、モダンな印象が強い。
対するトヨタ bZ4Xのデザインコンセプトは、「Hi-Tech and Emotion」だ。先進感とクルマ本来の美しさを融合させている。
全体的なシルエットはボンネットが長く、通常のガソリン車とあまり変わらない。トヨタはEV専用のプラットフォームと言うが、中型のFF車に使われるGA-Kプラットフォームをベースとして開発されているので、一般的なガソリン車のシルエットになったのだろう。ボンネットを開けると、前部には大きな空きスペースがある。
フロントフェイスはグリルレスだ。台形のキャラクターラインで安定感を表現している。bZ4Xも流行りの薄型LEDを上部に配置したことで、睨みの効いた迫力ある顔となった。
サイドビューはアリアのような重厚感あるフォルムとは異なり、後方へ抜けるシャープなキャラクターラインによってスピード感のあるフォルムとなった。ワゴンのクロスオーバー車のようなシルエットが魅力的だ。
リヤのコンビネーションランプは、アリアと同じく流行りの横一文字型だ。
アリアはシンプルにまとめているが、bZ4Xは複雑な線と面の組み合わせで独特のスポーティさを演出している。
アリアとbZ4Xは共に、好き嫌いが明確になるデザインは避け、より多くの人に好感度を与えたいのだろう。
この2車種は共通のデザイントレンドを導入しているが、全く異なるモデルに見える。アリアがSUVのような重厚感ある存在感を放っているのに対し、bZ4Xはスピード感あるスポーツモデルのようだ。どちらも方向性は異なるが、個性的で魅力的なデザインといえる。
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室内の広さと開放感、使い勝手でアリアが上回る
5.室内空間と使い勝手
アリアの評価 4.5
bZ4Xの評価 3.5
日産アリアとトヨタbZ4Xのボディサイズとホイールベースは以下の通りだ。
全長×全幅×全高 | ホイールベース | |
---|---|---|
アリア | 4,595mm×1,850mm×1,655mm | 775mm |
bZ4X | 4,690mm×1,860mm×1,650mm | 2,850mm |
全幅と全高はほぼ同等だが、全長とホイールベースはアリアのほうが短い。数値からはアリアの方が室内スペースは狭く感じるが、実際は逆だ。アリアの方が広々としている。
こうした結果になったのは、インテリアデザインによる部分が大きい。アリアのインパネは、水平基調のシンプルな面構成だ。できるだけ無駄を無くし、広いスペースの確保や開放感を出す意図を感じる。
対するbZ4Xは、スポーツカーのように包まれるようなコックピット感が強い。インパネデザインも前方に迫ってくるような迫力がある。
また、アリアはEVのメリットであるフラットフロアを活かし、世界初の電動センターコンソールボックスを装備している。このセンターコンソールボックスは、最大150mm前後に移動させることができる。最後方にセットすれば、室内で運転席から助手席に移動することも可能だ。
さらにセンターコンソールボックスには、シフトノブやドライブモードセレクターなどの操作系が装着されている。ドライバーの体形など、好みに合わせてベストな位置に設定できる使い勝手の良さもある。
対するbZ4Xのセンターコンソールは、SUVの力強さをアピールする極太系デザインとなった。普通のガソリン車と同じようなデザインテイストだ。運転席と助手席の間に大きな空間をもつアリアと比べると、開放感は少ない。
後席のスペースも、アリアの方が足元のスペースに余裕があり広い。頭上のスペースも同様だ。
インテリア空間の作り方は、アリアがEVらしい優れたスペース効率を発揮したのに対し、bZ4Xが既存のガソリン車に似たテイストとなった。
アリアはスイッチやダイヤルタイプの操作系を極力排し、エアコンなども静電タイプだ。振動などで操作に対するフィードバックはあるものの、運転中のブラインドタッチは難しく、使い勝手面で少々物足りない。
対するbZ4Xは、エアコン関係の操作系はスイッチタイプなので使いやすい。
ナビなどは両車タッチパネル式だ。タッチパネルのモニターは、ほとんどの人が利き手では無い左手で操作する。揺れる車内では正確にタッチすることが難しく、指先を注視して操作せざるを得ない。前方監視はどうしても疎かになりがちだ。
停車中であれば、タッチ式は便利だが、走行中はダイヤル式が便利で確実だ。タッチ式とダイヤル式の両方を設定して欲しいところだ。
予防安全装備ならbZ4X。運転支援機能ならアリア
6.安全装備の比較
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