トヨタ ミライ(MIRAI)長期評価レポートVol.9 高速道路の航続距離は、実燃費で600㎞超の実力! 往復約700㎞! ロングドライブで分かったミライの真実!!(復路編) [CORISM]
往路で114.3km/kgだった燃費だが、少し速度を落として走ってみると?
豊田市から東京までの復路は、第二東名を中心に一気に芝公園の水素ステーションまで行くルートだ。往路の走りで、十分な航続距離を確認しているものの、第二東名の区間は浜松から御殿場まで、大半の区間が登り坂である。しかも急な登り坂も多いので、それによる航続距離の減少が考えられる。
まあ、最悪の場合には、海老名IC近くの海老名中央水素ステーションを利用することも視野に入れ、取り敢えず大丈夫との判断で出発だ。海老名なら、東京の芝公園水素ステーションに行くのに比べて30~40kmほど近い。
念のために、復路は基本的に90~95km/h程度でのクルージングしていくことにした。速度を上げれば上げるほど、空気抵抗が大きくなって燃費が悪くなる。また、速度を上げた分、モーターが使う電気量も多くなる。往路のクルージング速度100㎞/hから、90~95km/hまでわずかに速度を下げただけでも確実に燃費が良くなるからだ。
足柄SAから海老名SAの下り区間は、なんと167.8km/kgを記録! トータルで134.9km/kgを叩き出し、往路を上回る低燃費となる!
静岡SAから足柄SAまでの83.2kmの区間では、最も厳しい登り坂が続く区間だったが、それでも燃費は120.6km/kgを表示していた。登り坂による影響がないわけではないが、それでも相当に良い燃費である。
びっくりしたのは足柄SAから海老名SAまでの区間だ。この区間は急な下り坂の部分が長かったこともあり、48.2kmを平均車速88km/hで走った結果が167.8km/kgという極めて優れた数値を示したからだ。完全に高速道路だけの区間であり、区間距離もあまり長くないが、それでもこの数値はすごい。
往路で足柄から静岡まで、84.4kmを平均車速86km/hで走ったときに記録した146.9km/kgを上回る数字である。感覚的には往路の足柄SA~静岡SA間のほうが急な下り坂であったように感じられたが、燃費は復路のほうが良かった。
海老名SAから芝公園までの最終区間は44.7kmの距離。首都高で少し渋滞もあったので平均車速は63km/hに落ちた。この区間の燃費は121.6km/kgとなった。
復路の走行距離は313kmで、充填した水素の量は2.32kgと少なかった。水素代は2,756円となった。ほとんどが高速道路だけの走りとはいえ、134.9km/kgの計算。正にJC08モードに匹敵するとてつもない数値である。往路が114.3km/kgだったので、やや速度を落としただけで燃費性能は大きく異なった。
朝に錦糸町を出発してから(厳密にいえば前日に水素を充填して自宅まで走った9kmほどの距離も含む)芝公園に着くまでに走った距離は658.5kmだった。この間の燃費表示は124.9km/kgになっていて、実際に水素を充填した量から計算すると123.3km/kgだから、ほぼ現実に見合った数値である。満タン法なので多少の誤差はある。
ミライに水素タンクは約5㎏の容量がある。タンク内5kgをすべて使いきる計算なら、高速道路を600㎞超という距離を走り続けることができる計算だ。燃費のよいハイブリッド車と比べると、さすがに航続距離は短めになるものの、少し前の3.5Lクラスのガソリン車とならいい勝負になりそうな航続距離といえるだろう。今回の高速道路をベースとした航続距離は、ミライを購入する際のにそれほど問題にならないことが確認できた。これだけ水素ステーションが少ないと、約5㎏の水素タンクを空にするギリギリでは走れないので、約1㎏の水素を残す計算でも、約500㎞の航続距離になる。これだけ走れは、ミライの航続距離に問題はない。今後の課題として、水素ステーションのインフラ整備問題がより鮮明になった長距離ドライブだった。
水素ステーションのインフラが進めば、電気自動車よりも色々な部分で利便性が高い燃料電池車
燃料電池車も電気自動車 の一種だが、電気自動車と決定的に違うのはまず航続距離が長いことだ。EVで長距離を走るためには、何度も充電する必要があるのに比べ、燃料電池車は格段に長い距離を走れるのでクルマとしてのリアリティが高い。
東京から豊田まで行こうとしたら、何度も充電しなければならないのがリーフで、一気に走り抜けられるのがミライである。
逆にミライにとっての弱点は、今のところ水素ステーションのインフラが十分ではないことだ。現在は、四大都市圏で約30個所程度しか充電ステーションがない。錦糸町に住んでいると、使えるのは実質的に芝公園だけであり、ほかに九段の移動式もあるが、それ以外はわざわざ充填に行くのような距離ではない。ほとんどの水素ステーションが9時~5時の営業であることを考えると、ますます不便である。
また、どこか遠くへ行こうと思っても、水素ステーションがある場所にしか行けないのが現状。今回のロングドライブのように、高速道路だけならミライの航続距離にそれほど不満はない。水素ステーションさえ増えれば、ほとんど普通のガソリン車のような使い方ができると実感できた。
これに対して電気自動車は、頻繁に充電しなければならないという不便さはある。だが、急速充電のインフラ整備が急速に進んでいる。今回のテストドライブ中に立ち寄った海老名、足柄、静岡、駿河湾沼津などのSAには、いずれも2台ずつの急速充電器が設置されていた。
しかも平日の昼間だったので充電している電気自動車は1台もなく、いつでも自由に充電できる状態になってきた。このことを考えると、充電による時間のロスはあるにしても、電気自動車のほうが自由に動けるのは間違いない。
電気自動車には他に、自宅に充電設備を設けられる戸建て住宅に住む人でないと買えないという制約もある。どちらが良いかの判断は人によって変わるだろう。
個人的には電気自動車は制約が多すぎるので自分のクルマとすることはできず、燃料電池車のほうがリアリティがある。ミライを選んだことに、改めて満足している。
長距離走行で分かったミライの魅力「疲れないシート」
日頃からクルマの運転席に座っているか、あるいは事務所でパソコンの前に座っているかで、ずっと椅子に座っている。このため私の腰はけっこう優れた腰痛センサーになっていて、デキの悪いシートをすぐに見分ける能力を備えている。
だが、ミライのシートは10時間も走らせて苦痛を感じさせなかったのだから立派である。ランバーサポートなどを備えているわけではないのに、これだけ疲れの少ないシートは大したものだと思う。
トヨタ ミライ価格、航続距離、スペックなど
代表グレード | トヨタ ミライ(TOYOTA MIRAI) |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,890×1,815×1,535mm |
ホイールベース[mm] | 2,780mm |
トレッド前/後[mm] | 1,535/1,545mm |
車両重量[kg] | 1,850㎏ |
最小回転半径[m] | 5.7m |
FCスタック型式 | FCA110 |
FCスタック最高出力[kw(ps)] | 114(155)kw(ps) |
高圧水素タンク容量[L](2本) | 122.4L(前方60.0L/後方62.4L) |
モーター最大出力[kw(ps)] | 113(154)kw(ps) |
モーター最大トルク[N・m(kg-m)] | 335(34.2)N・m(kg-m) |
駆動用バッテリー | ニッケル水素電池 |
容量[Ah] | 6.5Ah |
サスペンション(フロント/リヤ) | ストラット式コイルスプリング/トーションビーム式コイルスプリング |
最高速度(㎞/h) | 175㎞/h |
一充電走行距離距離[㎞] | 約650㎞(JC08モード走行パターンによるトヨタ測定値) |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 7,236,000円 |
発表日 | 2014年11月18日 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | トヨタ/編集部 |
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