【編集部レポート】”デザイン”が集う! アジア最大のデザイン展示会「グッドデザインエキスポ 2009」レポート [CORISM]

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【イベント・モーターショー】2009/09/01

2009年度グッドデザイン賞 二次審査対象「トヨタ 新型 プリウス」

模倣ではない、日本発"デザイン"創造のために

2009年度グッドデザイン賞の展示会「グッドデザインエキスポ 2009」
 近年、新興国のデザイン模倣が問題になっている。国際モーターショーへ「堂々と」出展された、まるで日本車とうりふたつなクルマ。有名キャラクターのそっくりさんが勢揃いした遊園地・・・。なんとも苦笑するしかない状況だが、しかし戦後復興期の日本でも、やはり同じような問題が起きていたことを忘れてはならない。これではいかん!と、当時の通商産業省が1957年(昭和32年)に創立したのが「グッドデザイン商品選定制度(通称「Gマーク制度」)だった。
 模倣ではなく、日本発のデザインを"創造"しよう。そんな真摯な取り組みが、戦後日本の発展に大いに貢献した。50年以上続く「Gマーク(グッドデザイン賞)」では身近な生活用品から建築、広告デザインに至るまで、過去に約35,000点もの受賞作品が選ばれている。自動車も選定対象になることが多いから、Gマークの名前をそこで耳にした方も多いことだろう。しかも昨年は、全受賞作の中からトヨタの新型コンパクトカー「iQ」が栄えある大賞に選ばれている。
 さて、「グッドデザインエキスポ 2009」[主催:日本産業デザイン振興会(JIDPO)]は、2009年のグッドデザイン賞二次審査会が行われる会場を一般に公開するもの。アジア最大規模のデザイン展示会である。すっかり恒例となったこのイベントは、8月28日(金)から30日(日)まで、東京都江東区の東京ビックサイトで開催された。身近なデザインへ、一堂に触れ合える貴重な機会となるグッドデザインエキスポ。今年もその模様をお届けしよう。
ホンダ モンキー

1967年に初代がデビューした「モンキー」が、30年ぶりのモデルチェンジを実施。”モンキーらしさ”を残しつつも環境性能を進化させている。

特別賞「ロングライフデザイン賞」の審査対象「液状のり アラビックヤマト」

グッドデザイン賞とは別に、特別賞のロングライフデザイン賞審査対象として出展された「液状のり アラビックヤマト」。1975年から続く長寿デザインだ。

特別賞「フロンティアデザイン賞」審査対象「トヨタ i-REAL(アイ・リアル)」

未来のデザインに与えられる特別賞「フロンティアデザイン賞」の審査対象「トヨタ i-REAL(アイ・リアル)」。写真はセントレアで実証実験を行うモデルだ。

対象は人と社会をとりまくあらゆる「もの」や「こと」

年内デビュー予定の「日産 新型 フェアレディZ ロードスター」
 グッドデザイン賞の対象は、人と社会をとりまくあらゆる「もの」や「こと」。主催のJIDPOでは、グッドデザイン賞は『「優れたデザイン」のもつ卓越した「デザインの力」をもって、豊かな生活を築きあげ、産業の健全な発展を導いていこうとする制度』だと主張する。誤解されがちだが、単に見た目の優劣や美しさを競うのではない。
 選考は5つのジャンルに分類される。身の回り商品やスポーツ用品などが該当する「身体領域」、日用品や生活家電、家具、住宅までが含まれる「生活領域」、産業機器やオフィス、店舗、生産関連施設などの「仕事領域」、医療・福祉機器、公共関連設備・施設の「社会領域」、携帯電話やPC、オーディオ、コミュニケーションデザインなどが含まれる「ネットワーク領域」の5つだ。ちなみに我らが自動車は、生活領域に含まれている。グッドデザインエキスポ2009では、これら5つの中からグッドデザイン賞の2次審査が行われる。また特別賞として「ロングライフデザイン賞」「フロンティアデザイン賞」も別途出展された。
年内デビュー予定の「日産 新型 フェアレディZ ロードスター」(しかも右ハンドルの日本仕様!)がひとあし早く展示され注目を集めていた

年内デビュー予定の「日産 新型 フェアレディZ ロードスター」(しかも右ハンドルの日本仕様!)がひとあし早く展示され注目を集めていた。

ヤマハ 新型 V-MAX

他に類を見ないワイルドさが支持されスマッシュヒット作となったヤマハ「V-MAX」。その2代目モデルも出展されていた。

日産 フォークリフト「アグレス FX」

日産 フォークリフト「アグレス FX」。普段はあまり間近に観る機会もないような産業・輸送用車両などを目にすることが出来るのも楽しみのひとつ。

「5ドアハッチバック イコール ハイブリッドカー」という既成概念

「ステージプログラム」移動ユニット 公開プレゼンテーション審査の模様

「ステージプログラム」移動ユニット 公開プレゼンテーション審査の模様

 会場には企業や団体、教育機関など約1000社から、2000点以上におよぶデザインが実際に展示された。会場は大盛況で、デザイン学校の生徒から海外からの来場者、そして実際の出展者自身に至るまで、出展されるあらゆるジャンルのデザインに刺激を受けていたようだ。
 また会場では、出展デザイナーが「公開審査」と称して、審査員にプレゼンする興味深いステージプログラムも行われた。我々が注目したのは「移動ユニット」の公開プレゼンテーション。「グリーンデザインを考える」をテーマに、電動アシスト自転車などと並びプレゼンを行ったのが、話題のハイブリッドカー「トヨタ プリウス」「ホンダ インサイト」の2台だった。クルマ好き以外にも注目度が高い話題のモデルだけに会場は満席で立ち見が出ていた。審査員の『インサイトのデザインはプリウスに瓜二つだが』との厳しい問いに対し、ホンダの開発者はそのつもりはないと前置きしつつも『「ハイブリッドカー イコール 5ドアハッチ イコール プリウス」という既成概念の強さを実感し、改めてプリウスの存在の大きさに脅威を覚えた』と正直に語るなど、興味深い話が聞かれた。
「トヨタ プリウス」

審査員はトヨタのプレゼンターにも「インサイトに酷似したデザイン」を問うと、このサイズ(全長)では、空力性能の観点で2代目から採用したワンモーションフォルムが最も効くことが明かされた。そのいっぽう世界で認知された2代目との連続性を意識的に持たせた。これはトヨタ車でも数少ないヘリテージ(遺産・伝統)だと胸を張った。

「ホンダ インサイト」

ホンダでは、新しい「インサイト」をデザインするにあたり、世界で広く使われるスタンダードな「セダン」というボディ形状に、エコカーが必要とする空力の効果や、高効率な空間を与えるパッケージングの観点を加えたことで、必然的に5ドアハッチバックという形状になっていったと説明する。

「ホンダ インサイト」インテリア

インサイトならではの特長として、インテリアの多層的なインパネデザインを紹介した。これは瞬間認知と直感操作が出来るものだと説明し、さらに「エコアシスト」機能により、環境性能の高さや真面目さだけではない、エコカー独自の「楽しさ」をも表現したという。

特別展示「デザインコミュニケーション」TOTOブース

特別展示「デザインコミュニケーション」TOTOブースでは、5年の歳月をかけてデザインされたという新パブリックトイレ群「レストルームアイテム01」が展示された。

特別展示「デザインコミュニケーション」パナソニック電工 ブース

こちらは「パナソニック電工」ブース。本格的な機能を持たせながらもシンプルなデザインで部屋に置いても違和感を持たせない新製品のマッサージソファを紹介した。

キッコーマンの新しょうゆペットボトル

キッコーマンの新しょうゆペットボトル。馴染みのデザインイメージを残しつつ、丸みを帯びた柔らかなラインが与えられた。漆黒のお椀のような「和」のイメージだという。

アジア最大のデザイン展示会「グッドデザインエキスポ 2009」会場の模様[東京ビックサイト]
(Photo&レポート:CORISM編集部 徳田 透)

(レポート:admin

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