強い個性は顔に出る! 中途半端感を完全払拭【新型レクサスGSプロトタイプ試乗評価】の目次
中途半端だったレクサスGSの位置付けを、再び問い直した新型GS
日本でのレクサス店のスタートに合わせて2005年8月に発売されたGSが近くフルモデルチェンジを受ける。レクサスの主力市場であるアメリカでは2011年8月にペブルビーチで発表され、ハイブリッド車はフランクフルトショーに出品されている。
日本のユーザーとしては、日本に由来する自動車メーカーは日本で最初に、そうでなくても海外で発表するときには日本でも同時に発表して欲しいと思うが、最近は海外で先に発表されるのは珍しいことではなくなった。
ただ日本においてもGSはレクサスブランドにとって重要な車種である。新しいGSからレクサスブランドのふた回り目が始まるからだ。日本では、GSはデビューした当初こそ一定の売れ行きを示したが、LSが追加された後は位置付けが中途半端になって売れ行きは落ち込んでいた。実はアメリカでも似たような状況があった。アメリカにはLSのほかに日本にはないESというモデルがあり、両方に挟まれてアメリカでも目立たない存在になっていたのだ。
このため、今回のGSはその存在意義を改めて問い直すところから開発が始められた。というか、開発中止の寸前まで追い込まれながらなんとかレクサスブランドの上級セダンとしての存在意義を見いだして開発が続けられ、発売にこぎつけたと評価できる。
今回のレクサスGSの特徴はスポーツ性を高めたことにある。これまでGSという車名の由来はグランドセダンの略とされていたが、今回のモデルではGSはグランドツーリングセダンとされている。ラグジュアリーセダンであると同時に、スポーティさというか操る楽しさを実現したのがGSであり、長距離を高速で移動する大旅行(グランドツアー)に適したクルマに仕上げたという。
スピンドルグリルがレクサスの顔になる
外観デザインはフロントのスピンドルグリルが印象的だ。アメリカで発表されたモデルの写真を見たとき、このグリルが強調されていたので、かなり違和感を感じたのだが、プロトタイプ車を近くで見ると意外にすんなり受け入れることができた。
先に発売されたレクサスCT200hにもこの要素が取り込まれていたが、このスピンドルグリルが次世代のレクサス顔になるとのこと。中途半端とされることが多かったGSとしては存在感を主張する意味もあるだろう。やや地味な感じのあったリヤビューも、より存在感を示すものになり、走り去る姿を印象づけるデザインになったと評価したい。
ボディサイズは全長やホイールベースは従来と変わらず、全幅は20mm拡大されて全高も30mm高くなった。心持ち大きくなったが、ほぼ従来のモデル並みのサイズである。日本で使うには十分に大きいが、大きすぎるというほどでもない。
インテリアはインストセンター部分にビルトインされた12.3インチのワイドディスプレーを採用が特徴的。その画面を操作するリモートタッチも新世代のものになった。また自然素材の採用などで質感の高い空間を作っているのは従来と変わらない。
ホイールベースは変わらないがパッケージングを煮詰めることで、従来のGSの弱点のひとつだった後席の居住空間がやや拡大され、ラゲッジスペースの空間もグンと大きくなった。
存在感を主張するエンジン、それが新しいGSの方向性
新しいGSではV型8気筒エンジンの搭載車が廃止され、ハイブリッドのGS450hを頂点に、ガソリン車のGS350とGS25Oがラインナップされることになった。2.5Lエンジンの搭載車を用意することで、価格帯が下に広がる形になるはずだ。それぞれのモデルに、スポーティなFスポーツが設定され、ほかにラグジュアリー志向のバージョンLが用意される。
試乗したプロトタイプ車ということだったが、乗った印象はほとんど市販車と同等といった感じの仕上がりだった。新設定のGS250Iパッケージに搭載されるのは4GR-FSE型のV型6気筒2.5L。すでにISに搭載されているエンジンで、158kW/260N・mという2.5Lとしては上々動力性能を持つ。走らせた印象はこれで十分といった感じだが、この日は同時にGS350やGS450hにも試乗したので、それらと比較すると低速域のトルクに差があり、上り坂での立ち上がり加速時にはもう少し力強さが欲しいと感じるシーンもあった。
GS350はFパッケージに試乗した。3.5Lエンジンと6速ATというパワートレーンは従来とと同じ(厳密に言うとIS350と同じ)だ。ヨーロッパのメーカーがより多段化したATを採用していることを考えると、記号的には物足りなさを感じる部分もあるが、変速の滑らかさは文句のないレベル。市街地でほとんど使えない7速や8速ギアを設けるより、使える6速ATのほうが良いともいえる。
標準車が18インチタイヤなのに対してFパッケージは後述するハイブリッド車も含めて前後異サイズの19インチタイヤを履くが、今どきの偏平タイヤは乗り心地の良さもスポイルしない。
GS450hも専用にチューンされた3.5Lエンジンに電気モーターを組み合わせるのは変わらない。搭載エンジンは微妙にデチューンされた感じもあるが、システムとして出力できる最高出力は256kWなので、圧倒的な動力性能であると高評価だ。
リミッターをカットした試乗車で富士スピードウェイの長い直線を走ると200km/hを大きく超えて無限に加速していくような感じになる。ハイブリッドの無段変速トランスミッションの切れ目のない加速感がとても気持ち良い。
センターコンソールのスイッチでエコやスポーツ、スポーツ+などモードの切り換えが可能で、切り換えるとインパネの画面も切り替わる。スポーツモードにすると、加速時のエンジンレスポンスが良くなり、排気音なども高まって、走りが強く主張される。これまでの静かなハイブリッド車というイメージを変えたような印象がある。もちろん、街乗りなどでは十分に静かで滑らかな走りを実現するのだが、モードを切り換えて踏み込んだときの走りはこれまでのハイブリッドとは違って明確にスポーツ性を高めている。
このあたりがGSがグランドセダンからグランドツーリングセダンに変わったことを象徴する部分なのだろう。静かで滑らかであることはハイブリッドやレクサスブランドが持つ大きな価値だったが、GSはそれだけでは終わらないクルマになった。
安全で安定した走りを支える後輪操舵機能LDF
新しいGSでは、パワートレーンはキャリーオーバーした部分が多いが、基本プラットホームはレクサス専用の新プラットホームに一新された。
レクサス専用という言葉は、GSやISがデビューしたときの3.5Lエンジンでも使われて、今ではクラウンやマークXにも搭載されていることを考えると、単純に鵜呑みにするわけにはいかないが、少なくともGSの開発関係者はその気合で開発したという。これをトヨタブランドにも流用するかどうかはトップの判断ということになる。
それはともかく新プラットホームの採用に合わせて新しい電子制御デバイスが設定された。LDF(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)と呼ぶ後輪操舵機構がそれで、常時車両の挙動を見ながら、ドライバーの意思に合わせた走りを実現するように、車速や操舵量などに応じて後輪を同位相や逆位相に操舵する仕組みをもつ。
スプリットミュー路面でのブレーキング、ダブルレーンチェンジ、パイロンスラロームなどを試した結果、クルマの挙動とても落ち着いていて、ごく自然に安定した走りが得られることが良く分かった。
これは新プラットホームに合わせて新開発されたサスペンションとの組み合わせで実現したもので、当面はレクサス車だけが持つ新しい価値になる。国内での発売が楽しみなクルマだ。
ハイブリッドシステム最高出力[ps(kw)/rpm]343ps(1252kw)ミッション電気式無段変速機
代表車種 | レクサス GS450h |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4850×1840×1455mm |
ホイールベース[mm] | 2850mm |
乗車定員 | 5名 |
エンジン種類 | 3.5L、V6エンジン+モーター(ハイブリッド) |
燃費(10・15モード) | 20km/L以上を目標 |
駆動方式 | FR |
タイヤサイズ | F&R:235/45R18 |
発売日 | 2012年初頭 |
価格 | 未定 |
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