空力&ボディ補強で、楽しい走りと低燃費を両立
デミオ とともにマツダ の主力車種となるアクセラ は2011年9月にマイナーチェンジを受け、SKYACTIVの第二弾として登場するが、それに先立ってプロトタイプ車に試乗したのでレポートしておきたい。
マイナーチェンジなので内外装のデザインは大きな変更は受けていない。外観は空力特性を向上させるためにバンパー回りの形状を変更し、新デザインのアルミホイールを採用した程度。インテリアも上級グレードを中心にコンソール部分の質感の改善が行われたほか、i-DMの採用などによってインパネのデザインが変更された程度だ。
ただ、空力特性の向上では床下にアンダーカバーを設置したり、ボディ剛性を向上させるためにやはり床下にプレースバーを設定するなど、見えない部分でも改良を行っている。
大きく変わったのはパワートレーンだ。これまで2.0Lエンジンの搭載車にはアイドリングストップ機構のi-stopが採用されていたが、今回のアクセラではエンジンをSKYACTIV-Gに変更した上で、トランスミッションを電子制御6速ATのSKYACTIV-DRIVEに変更している。これによって最も燃費の良い仕様で20.0km/Lの低燃費を実現した。従来は16.4km/Lだったから20%以上の大幅燃費の改善だ。
エンジンは動力性能が110kW/186N・mから113kW/194N・mへと向上した。テミオでは排気量をやや縮小したことなども影響して動力性能がやや下がっていたが、今回は動力性能も燃費も向上させている。
とはいえ、今回のモデルはまだフルにSKYACTIV仕様にはなっていない。基本プラットホームが従来と同じなので、4-2-1のタコ足排気系は採用できなかったし、圧縮比も12.0にとどまっているからだ。今回のSKYACTIV化は電子制御6速ATが設定されたことが大きなポイントだ。フルSKYACTIVは来年早々に発売されるCX-5 まで待つことになる。
今回のアクセラは徹底して低燃費を狙ったデミオと違って、スポーティな走りを維持すると同時に低燃費を実現することを狙ったモデルで、走りと燃費の高次元バランスを追求したと評価したい。
タイヤサイズで異なるキャラクター! 燃費重視の15インチ、走りの17インチ、バランスの16インチ
プロトタイプ車の試乗は、発売前のクルマということもあって、マツダの美祢自動車試験場で行われた。かつて美祢サーキットと呼ばれていた場所で、今はマツダが買い取ってテストコースとして使っている。
周回路はかつてサーキットして使われていた当時のレイアウトそのままだそうで、路面は舗装をし直したものの、コース自体は変わらないという。こうした会場で試乗会を開催することは、新型アクセラの走りに対するマツダの自信の表れと考えていいだろう。
試乗車は2.0LのSKYACTIV+6速ATの組み合わせのみで、タイヤは15インチと17インチの2種類が用意されていた。主要グレードは16インチが標準で、一部は15インチが標準。16インチ車には15インチと17インチがオプション設定されるという。なので、今回はほとんどがオプション装着のタイヤを履いていた。
走らせた印象は、エンジンやトランスミッションなどSKYACTIVの前にタイヤの違いの大きさが印象的だった。15インチタイヤは燃費スペシャルともいえるもので、20.0km/Lの燃費を実現しているのは15インチタイヤを履いた仕様だけだ。
このため、サーキットのようなテストコースを走らせるにはやや性能不足といった感じで、制動性能やコーナリング性能などが明らかに見劣りする感じだった。
日常的にはタイヤのショルダー部分を思い切り使って走るサーキット走行のようなことはしないにしても、17インチタイヤの走りが良かっただけに、15インチではもの足りないと思わせる部分があった。
タイヤはむやみに大きくすれば良いというものではなく、特にタイヤ交換やスタッドレスタイヤの装着を考えると大径タイヤは考えものだが、アクセラの15インチと17インチだったら17インチを選びたいと思った。その意味で今回は乗れなかった標準仕様の16インチがバランスが取れているのだと思う。
トルクのあるエンジンにダイレクトなAT。ただの低燃費車ではない仕上がりだ
改良を受けたエンジンは低速域のトルクが厚く盛り上がっていて、相当に力強い走りが可能だった。低燃費エンジンというと、とかくトルク感のないスカスカのエンジンにすることで燃費を稼ぐといったことになりがちだが、今回のSKYACTIV-G 2.0に関していえば、そんな印象はみじんも感じられなかった。しっかり走る良いエンジンという印象だと評価したい。
もちろん手放しでほめちぎるわけではなく、サーキットでの試乗では高速域での伸びというかパンチ力が、もっとあっても良いと思われたし、従来に比べて停止条件を拡大したというi-stopも、状況によっては止まらないことがあったので、もっと止まるようにして欲しいと思うシーンもあった。
今回のアクセラで目玉となるのが電子制御6速ATのSKYACTIV-DRIVEだ。CVTと比較すればダイレクト感があって燃費が良くなるのが特徴。ヨーロッパで普及しているDSGと比べても発進時やクリープ時のフィールに優れる上に、ダイレクト感でも同等以上のフィールが確保されて良いことづくめのATに仕上げたという。
大きな特徴はほとんど全域でロックアップすることによるレスポンスの良さで、キックダウンさせての加速時やコーナーからの立ち上がりなどのとき、アクセルワークに応じてエンジンが吹き上がるのとほとんど同時に加速が立ち上がっていく。このダイレクト感は現行アクセラと乗り比べることで良く分かった。現行アクセラは5速ATなので、変速フィールそのものの違いも大きい。
ATはトルクコンバーターを介することによる反応の遅れやギアチェンジによる段差のある加速感が特徴だったが、そうしたネガティブな部分なくした上で、反応も向上させている。とても良くできたATという印象があった。
このほか、前述の床下にプレースバーを採用してボディ剛性を高めたことが、乗り心地の良さにつながったり、これらを含めてさまざまな対策をすることで静粛性を向上させるなど、いろいろな面で走りが向上したのが今回のアクセラだ。特に乗り心地の良さは、プレマシー以来の最近のマツダ車の特徴となる部分で、リニアリティというか、Gのつながりの自然さが印象的だったと評価できる。
フルモデルチェンジに近いマイナーチェンジだが、ハイブリッド車よりお買い得感が出せるかがカギ
デミオはマイナーチェンジでSKYACTIVを搭載した後、とても好調な売れ行きを見せているが、アクセラも同じように売れるかどうかは価格次第だろう。
デミオはSKYACTIV化するに当たって直噴エンジンに変更したり、i-stopを装着するなどコストのかかる対策をいろいろやったが、今回のアクセラはそうしたことが必要なかった。すでに直噴仕様でi-stopを装着していからだ。
ATが6速ATに変わったことはコストアップ要因だが、その分を抑えて従来のモデル並みに200万円を挟む価格帯に据え置いたなら、一定の売れ行きは期待できると評価していい。
なお、今回のアクセラでは1.5Lエンジンの搭載車も含めて横滑り防止装置のDSCを標準装備するなど、安全装備を充実させた点も見逃せない。
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