クリーンディーゼル時代突入か? 社運を賭けた渾身の1台!!【マツダ CX-5新車試乗評価】

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【マツダ】2012/04/20

 

大きいクルマだが、意外と小回りがきく

マツダCX-5

マツダ が渾身の力を入れて開発した新型マツダCX-5が発売された。デミオ から少しずつ採用が始まったSKYACTIV技術、そのすべてを盛り込んだのがこのCX-5なのだから力が入るのも当然。日本では、必ずしも良く売れるジャンルではないSUV である点がやや微妙だが、マツダの車種計画とSKYACTIVの開発がちょうどシンクロしたのがCX-5 だった。

外観デザインは、マツダ新デザインテーマである魂動き(こどう)を具現化したもので、いままさに獲物に飛びかかろうとするチーターをイメージさせるもの。躍動感にあふれた力強いSUV デザインである。個人的には、フロントの五角形グリルが大きすぎるような印象を持つが、このグリルの下部には左右に広がるシグネチャーウイングが設けられ、五角形グリルを強調して存在感を高めている。ボディサイドは、大きく張り出したホイールアーチが力強さを表現し、前傾したフロントノーズと後退したキャビンによってチーターが走り出す瞬間の動きを表現していると評価しよう。

インテリアはSUVらしさを備えるとともに、乗用車らしい質感や洗練されたイメージを併せ持つものとされた。インパネの上部がすべて手触りに優れたソフトパッドで覆われているのはその典型で、ピアノブラックによる加飾も質感を表現している。

ボディサイズは、全長は4540mmと手頃なサイズだが、全幅は1840mmとかなり大きい。日本では大きすぎるサイズだが、ヨーロッパではちょうど良いと言われ、アメリカではもっと大きくと言われるサイズである。世界中での販売を目指すマツダとしては、このサイズにせざるを得なかったのだろう。

大きめの全幅の割には、最小回転半径は5.5mと一般的な数値。CX-5には17インチと19インチのタイヤが設定されているが、どちらも同じ最小回転半径を実現している。日本でも取り回しで苦労するようなクルマではない。

マツダCX-5
マツダCX-5
マツダCX-5

 

マツダCX-5
マツダCX-5
マツダCX-5
マツダCX-5

軽快なガソリン車、重厚で大トルクをもつディーゼル車。2つの個性をもつマツダCX-5

マツダCX-5

 搭載エンジンは、ガソリンが直列4気筒2.0LのSKYACTIV-G 2.0で、ディーゼル が同じく2.2LのSKYACTIV-D 2.0となる。どちらもSKYACTIV-DRIVEの電子制御6速ATとの組み合わせだ。ヨーロッパではMT車の設定もあるが、国内向けには6速ATだけの設定となる。

マツダCX-5がフルSKYACTIVと言われるのは、エンジンやトランスミッションなどのパワートレーンだけでなく、軽量高剛性で衝突安全に対応したボディや、人馬一体のドライビングプレジャーを実現するシャシー(サスペンションやステアリング)にもSKYACTIV技術が盛り込まれているからだ。

SKYACTIV-Gのガソリン車は、基本はアクセラに搭載されたものと同じだが、圧縮比がアクセラの12.0から13.0にまで高められ、これによってほんのわずかだが動力性能も向上し、114kW/196N・mを発生する。それでもまだSKYACTIV本来の14.0には至っていないだが、これは日本のレギュラーガソリンのオクタン価が影響しているとのこと。ハイオク仕様にして14.0にするくらいならレギュラー仕様のほうがユーザーのためになる。

SKYACTIV-Dは129kW/420N・mの実力で、V型8気筒エンジン並みの圧倒的なトルクを発生する。こちらはディーゼルエンジンとして世界で最低となる14.0の圧縮比を実現しており、これぞSKYACTIVとも言うべきエンジンとなった。

ガソリンエンジンの搭載車は、20SのFF車を中心に試乗した。ガソリン車でFFなので、ディーゼルの4WDに比べると200kg近く重量が軽い。それもフロント部分だけで120kgも軽いのだ。この軽さが軽快感を生むと同時、フロントの軽さが回頭性を良くしている。SUVのボディはセダンに比べればやや重いが、それでも箱根のワインディングを走っても南九州の高速道路を走っても、動力性能に不満を感じるシーンはなかった。

個人的には、SUVボディなら4WD という古い先入観にとらわれているのでCX-5のFF車を積極的に勧めようとは思わないが、ガソリンのFF車にも十分に存在意義があるのがCX-5だった。

それ以上に、好感が持てたのがSKYACTIV-Dのディーゼルエンジンを搭載したXD Lパッケージで、圧倒的なトルクがガソリン車とは全く違う次元の走りを実現していた。アクセルを踏み込んだ瞬間から十分なトルクが立ち上がり、ボディの重さを感じさせないかのように力強く走り出していく。この感覚は、なかなか良い評価だ。

2008年9月に発売されたエクストレイル20GTは、同じクリーンディーゼルながら低速域でのトルク感に物足りなさがあった。それに比べるとCX-5のトルク感は格段に違うのだ。エクストレイルは3年半も前のクルマなので、今の段階で比較してはかわいそうだが、大きな差があるのは間違いない。

高速クルージングも快適だ。車速と回転数など走行条件によってはディーゼルのエンジン音が感じられる部分もあったが、振動については良く抑えられていて、ガソリン車と変わらないレベルにあった。ディーゼルは停車中のアイドリング音も多少大きめだったが、CX-5にはi-stopが備えられていて、停車中にはエンジンも停止することが多い。

トルコンのスリップを極力なくし、ほとんどのシーンで直結状態を維持するSKYACTIVの6速ATも良かった。これはガソリン車も共通だが、先に採用されたアクセラに乗ったとき以上に好印象があった。さらに改良が進められたのだろう。

マツダCX-5
マツダCX-5
マツダCX-5

 

マツダCX-5

マツダCX-5

 ディーゼル車のメーター。ディーゼルエンジンとは思えないくらい、軽快に回るのもSKYACTIV技術

マツダCX-5

 ガソリン車のメーター。レギュラーガソリン仕様のため、圧縮比は13。ヨーロッパ仕様の圧縮比14に比べると、少々パワーとトルクが落ちる

 

 

 

 

 

ガソリン? それともディーゼル? 走りの違いやライフスタイルで選ぶとよい

マツダCX-5

 ガソリンのSKYACTIV-G。JC08モード燃費で16.0km/L

 ステアリングは、自然なフィールが好印象だった。箱根や霧島高原のワインディングなどを走っても、操舵に対して素直に反応してくれる感じで、自然な動きを見せるのだ。

マツダは2010年7月に発売したプレマシー 以降、リニアリティを重視するシャシーセッティングをするようになったが、その路線はCX-5でもしっかり受け継がれている。かつてのマツダはキビキビした走りを強調するセッティングだったが、それが今は人間の感性にあった走りに変わったいる。これがとても好印象なのだと評価していい。

20Sが17インチタイヤを履いていたのに対し、XD Lパッケージは19インチタイヤが標準となる。日頃から、ボディやエンジンやタイヤが大きくなることに異議を唱え続けている私の立場からすれば、19インチタイヤに対しては「デカ過ぎる」と文句を言いたいが、CX-5のタイヤについてはちょっと微妙な部分もある。

というのは、17インチと19インチを走り比べると、19インチのほうがずっと良かったからだ。南九州での試乗日は春の嵐で日本列島が台風並みの強風に見舞われた日だった。低気圧はすでに南九州から離れていたが、高速道路ではまだ横風なども強かった。そんなシーンでは19インチタイヤの安定性が格段に優れていたのだ。何年か先に交換するときやスタッドレスタイヤをどうするかなど、19インチタイヤには問題もあるが、走りの面からいえば19インチタイヤのほうがお勧めである。

CX-5の価格は20SのFF車が220万円、XD Lパッケージは追突軽減ブレーキのスマート・シティ・ブレーキ・サポートやBOSEサウンドシステムなども標準となため319万円の価格が設定されている。

XDのFF車なら258万円だから、20SとXDでFF車同士を比較すると38万円の価格差ということになる。これはガソリン車に対するクリーンディーゼルの価格アップとしては一般的なものといえる。燃料代の違いを含めた燃費を考えても単純に経済性を考えたらガソリン車のほうが有利だが、走りの違いが大きいのでそれをどう判断するか。圧倒的なトルクを考えたら、ディーゼルも十分に魅力的だ。

というのは、エクストレイル に比べると格段に安いからだ。エクストレイルの20GTが313万円であるのに対し、XDの4WDは279万円で30万円以上も安い。これはSKYACTIV-Dが排気ガスのクリーン化のために高価な触媒を使わなくてすむことが大きいと思う。その意味で、CX-5ではディーゼル車が勧められるだ。

街乗り中心で走行距離の短い人ならディーゼルを選んでもメリットは少ないが、距離を走るユーザーならディーゼルのほうが良い。

XD Lパッケージを選ぶならオプション装着の必要はないが、XDを選ぶならセーフティクルーズパッケージを装着したいところ。ただ、これを選ぶと自動的にディスチャージパッケージも選ばざるを得なくなり、約16万円の価格アップになる。

マツダCX-5には、BOSEサウンドシステムや19インチタイヤなどもオプション設定されている。予算を考慮しながら選択できる組み合わせを選びたい。

マツダCX-5

 ディーゼルのSKYACTIV-D。JC08モードで18.6km/L

マツダCX-5

 ラゲッジスペースのフロア下には、小物入れが用意されている

マツダCX-5

 XD Lパッケージに装着される225/55R19タイヤ&アルミホイール

 

マツダCX-5

 標準で装備されるアルミホイール&タイヤは225/65R17

マツダCX-5

 ナビはディーラーオプションとなる。そのため、色々選べるのはよいが、完成度はそれほど高くはない

マツダCX-5

 ロックアップ領域を多く取りダイレクト感のある6速AT

 

 

 

<新型マツダCX-5 20S FF スペック>

・全長 x 全幅 x 全高 4,540 x 1,840 x 1,705mm
・ホイールベース 2,700mm
・ガソリエンジン  SKYACTIV-G 2.0
・排気量 1,997cc
・最大トルク 196N・m/4,000rpm
・最高出力 114kW/6,000rpm
・燃費(JC08モード[10・15モード]) 16.0km/L[17.6km/L]
・ミッション SKYACTIV-DRIVE(6速オートマチック)
・ステアリング 電動パワーステアリング(コラム式)
・サスペンション (前)マクファーソンストラット式/(後)マルチリンク式
・ブレーキ (前)ベンチレーテッドディスク/(後)ディスク
・タイヤ 225/65R17

■ディーゼルエンジン  SKYACTIV-D 2.2
・排気量 2,188cc
・最大トルク 420N・m/2,000rpm
・最高出力 129kW/4,500rpm
・車両重量 1,510kg
・燃費(JC08モード[10・15モード]) 18.6km/L[20.0km/L]

<新型マツダCX-5価格>

・XD(クロスディー) 2WD SKYACTIV-D 2.2 2,580,000円
・XD(クロスディー 4WD SKYACTIV-D 2.2 2,790,000円
・XD L Package 2WD SKYACTIV-D 2.2 2,980,000円
・XD L Package 4WD SKYACTIV-D 2.2 3,190,000円
・20C 2WD SKYACTIV-G 2.0 2,050,000円
・20S 2WD SKYACTIV-G 2.0 2,200,000円
・20S 4WD SKYACTIV-G 2.0 2,410,000円

 

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(レポート:松下 宏

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