シトロエン は、輸入車の中では数少ない7人乗りのMPV であるC4 ピカソをフルモデルチェンジし発売を開始した。

　先代シトロエンC4ピカソは、2007年5月に日本に導入された7人乗りのMPV。乗員分用意されたゆったりとした3列シートや豊富な収納スペース、ガラスエリアが頭上まで広がる「スーパーパノラミックフロントウィンドウ」と「スライディングサンバイザー」が特徴だった。ユニークなスタイルと、7人乗りというミニバン 的に使えるということもあり、人気モデルのひとつだった。

　今回、7年ぶりのフルモデルチェンジとなったC4ピカソは、このモデルから2タイプが用意されることになった。従来からの7人乗りモデルは「グランドC4ピカソ」と車名が変更された。そして、新たに投入された5人乗りが「C4ピカソ」となっている。こうした2つのモデルを導入することで、日本マーケットの細かなニーズに対応するという。

　しかし、C4ピカソとグランドC4ピカソとも、日本では当たり前となっているスライドドアは採用されていない。軽自動車でさえ、スーパーハイト 系ワゴン はスライドドアが使われている日本マーケットにおいて、ヒンジドアであるということは厳しい戦いになる可能性が高い。そのため、機能で選ぶミニバン的なクルマというより、C4ピカソというクルマのデザイン力やシトロエンのブランドで買うクルマかもしれない。

　そんなシトロエンC4ピカソとグランドC4ピカソだが、単純に5人乗りか7人乗りかという違いではない。ボディサイズやホイールベースまで違う。ボディサイズは、C4ピカソが全長4,430ｘ全幅1,825ｘ全高1,630mmでホイールベースは2,780mm。それに対して、グランドC4ピカソは全長4,600ｘ全幅1,825ｘ全高1,670mmでホイールベースは2,840mm。全幅以外まったく違う。グランドピカソは、7人乗りを可能とするために全長とホイールベース、全高をアップさせ居住性を向上させていることがわかる。

　そして、全長。グランドC4ピカソの全長は4,600㎜。国産ミニバンであるトヨタ ノア ＆ヴォクシー が約4,700㎜なので100㎜も短く、意外とコンパクト にまとめられている。また、C4ピカソの全長は4,430㎜。これは、プリウス よりも50mm短い。結構、コンパクトなボディだ。

　外観は、いかにもシトロエンらしいユニークで近未来感のあるデザインをもつ。デザインもC4ピカソとグランドC4ピカソそれぞれに違いがある。フロントフェイスでは、横に広く伸びるダブルシェブロンにつながる薄型LEDヘッドランプをグランドC4ピカソでは一体化。リヤデザインは、シトロエン独自の3D LEDタイプのリヤコンビネーションランプを採用。グランドC4ピカソは「C」をモチーフにしたデザインなのにたいして、C4ピカソは横に広くスポーティなデザインが施されているなど、細部に渡り違いを持たせている。

　インテリアは、エクステリア同様に先進的な感覚にあふれてデザインになっている。C4ピカソのウリでもあるパノラミックフロントウィンドウは、ガラスルーフなどによって、ガラス面はクラス最大レベル（GRAND C4 PICASSO: 5.7 ㎡／C4 PICASSO： 5.3㎡）に拡大し、明るく開放的な室内としている。

　そして、グランドC4ピカソは、全席ファーストクラスの質感を誇るという。シートは、全席が独立して可動可能。そのため、乗車人数、積載する荷物に応じて多彩に使い分け可能。グランドC4ピカソは、助手席をフラットにたたむことによって、2.75m もの長さを収納できるスペースを作り出している。

　また、グランドC4ピカソの2列目、3 列目シートはヘッドレストを外すことなくワンアクションで収納でき、収納するとフラットなフロアのラゲッジスペースが出現する。ラゲッジ容量は 3列目シート収納時には 645ℓ、さらに、2列目シートも収納した場合2,181ℓ という大容量スペースを誇る。

　搭載されるエンジンは、両車ともアイドリングストップ機能付き1.6Lターボエンジン。出力は165ps＆240Nmとなっている。エンジン型式は5G01。同じ1.6Lターボながら、C4に搭載されている5F02型とは型式が違い、9psアップしている。ミッションは6速ATが組み合わされている。燃費は現在、申請中とのことだ。

　C4ピカソとグランドC4ピカソの安全装備は、シトロエン車の中で最高水準のモノが用意された。アクティブクルーズコントロールは、速度調整式の追従型で国産車ではACCとも呼ばれるもの。前方車両のスピードを検知、速度に応じて自車の速度をコントロールし車間距離を一定に保つ。レーンデパーチャーウォーニングは、走行中に道路上の車線を感知し、ウィンカーを出さずにレーンを外れた場合、シートベルトの振動で、ドライバーへ注意を促す。同時にアクティブシートベルトが、テンションを調整。万一の事故に備える。また、ミラーなどでは確認しきれないボディ斜め後方のブラインドスポット（死角）に存在する後続車両を超音波センサーが感知。ドアミラー内にオレンジ色の警告灯を点灯させ、ドライバーに知らせるブラインドスポットモニターなどなど、数多くの安全装備が用意された。メルセデス・ベンツCクラス などに搭載されている安全装備に比べると、まだまだ物足りない部分も多いが、平均点には達している。

　新型シトロエンC4ピカソ、グランドC4ピカソの価格はグランドC4ピカソ セダクションの347万円から。国産5ナンバーミニバンのハイブリッド 車より高価な価格帯。アルファード やヴェルファイア 、オデッセイ などの上級ミニバンのガソリン車とほぼ同じ価格帯になる。車内の広さやラグジュアリーな雰囲気、スライドドアの使い勝手などは国産ミニバンが圧倒。

　そうなると、グランドC4ピカソを選ぶ理由は、スタイルと走りの質やインテリアの解放感ということになる。国内のミニバンは、どうしても迫力重視一辺倒なので、こうしたミニバンはオシャレではないと感じている人や、他人と同じミニバンには乗りたくないという個性派に向くだろう。また、グランドC4ピカソのリセールバリューは、台数が少ないこともあり不安定。そのため、短期の乗り換えの場合、あまりお勧めできない。乗り潰すくらいのつもりで買うとちょうどいいかもしれない。

・シトロエンGRAND C4 PICASSO Seduction （セダクション）：3,470,000円
・シトロエンGRAND C4 PICASSO Exclusive （エクスクルーシブ）：3,780,000円
・シトロエンC4 PICASSO Exclusive （エクスクルーシブ）：3,570,000円

代表グレード	シトロエン グランドC4ピカソ エクスクルーシブ
ボディサイズ［mm］（全長×全幅×全高）	4,600×1,825×1,670 mm
ホイールベース［mm］	2,840mm
トレッド前/後［mm］	1,575/1,585mm
車両重量［kg］	1,550kg
総排気量［cc］	1,598cc
エンジン最高出力［kw(ps)/rpm］	121(165)／6,000
エンジン最大トルク［N・m/rpm］	240／1,400-3,500
ミッション	6速AT
タイヤサイズ	205／55 R17
定員［人］	7人
燃費	申請中
発売日	2014/10/25
レポート	編集部
写真	シトロエン