ホンダを支えるベーシックカー「FIT」に159万円の最安ハイブリッドが登場
ホンダは、コンパクトカー「フィット」をマイナーチェンジするとともに、新たにハイブリッドモデル「フィット ハイブリッド」を新設定し、10月8日より発売する。
今さら改めて言うまでもないが、フィットはホンダを、いや日本を代表する人気ベーシックカーだ。価格、燃費・性能、広さや使い勝手、デザインと全方位でバランス良く、結果多くのユーザーから支持され続けている。2001年に初代、2007年10月には現行型の2代目がデビュー。先月9月末には国内150万台を超える販売実績をホンダ車最短期間で達成するなど、その勢いは相変わらず強い。もちろん国内のみならずホンダの世界戦略車でもあり、欧州、北米、中国など世界115ヶ国累計で350万台以上が販売されるグローバルカーでもある。
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デビューから丸3年を迎えた今月、現行型フィット初の大規模なマイナーチェンジが実施された。ホンダの根幹を支えるグローバルカー「フィット」、その重責を担う開発責任者の本田技術研究所 人見 康平さんは『フルモデルチェンジ並みに手を入れた』と胸を張る。改良点は多岐に渡るが、今回の目玉は何と言っても、時代が求めるエコカー「FIT HYBRID(フィット ハイブリッド)」の登場だろう。価格は159万円[価格は消費税込み:以下同]から。もちろん、国内のハイブリッド車の中では最安値となる。
フィット ハイブリッドは、フィットシリーズのフラッグシップモデル
そのフィット ハイブリッド、端的に言えばハイブリッド専用車「インサイト」に搭載される軽量コンパクトなハイブリッドシステム「IMA(integrated Motor Assist)」+1.3リッター i-VTECエンジンをほぼそのまま移植したものだ。ただしモーターのアシスト量をインサイトに比べ高めたことで発進加速性能を向上。また渋滞路など低速走行時のモーター走行領域を拡大したり、アイドリングストップの頻度を高めるなどの改善も図られ、街乗り用途が多いコンパクトカーに最適化したセッティングへと改められている。
いっぽうで、ハイブリッド専用設計が施されたインサイトに対し、元のフィットそのままでは燃費の面で不利だという。軽量コンパクトとはいえ、新たにモーターなどのハイブリッドシステムを搭載し、それらを補う補強と相まって重量が増えるほか、背が高いボディは空気抵抗の面でどうしても劣ってしまうのだ。そんなネガティブ面を潰すべく、徹底的に走行抵抗を減らす努力が図られた。具体的には、転がり抵抗が少ない専用エコタイヤの採用や、ボディ下面の空力パーツを配したりした。空力対策と言うとレースのような超高速域だけの話かとも思うが、法定速度内でも十分に効果があるとホンダでは説明する。その結果、インサイトと同様の10・15モード燃費30.0km/Lという低燃費性能をマークする。
また内外装についても専用色や専用デザインのフロントグリル、専用メーターやHYBRID専用ナビシステムの採用など、先進的なハイブリッド車に相応しい仕立てとした。さらに吸遮音材の追加やエンジン回転の抑制などにより静粛性の向上にも目が向けられている点は、ハイブリッドがフィットの中のフラッグシップモデルという位置付けである事を表す一面とも言える。ラインナップは、ベースの「フィット ハイブリッド」1,590,000円に加え、「フィット ハイブリッド スマートセレクション」1,720,000円、「フィット ハイブリッド ナビプレミアムセレクション」2,100,000円の3タイプが用意される。
多岐に渡る改善を実施出来たのもベストセラーならではの贅沢
もともと非常に燃費に優れたフィットだが、従来型の24.0km/Lから24.5km/L(10・15モード燃費)と燃費はさらに向上させた。エンジンの燃焼効率向上や抵抗低減,CVTの改良などに加え、ハイブリッドのところでも触れた空力面においても、前後バンパーやフェンダーの形状を改良することで空気抵抗を抑える配慮がなされるなど、非常に地道な積み上げが重ねられている。実用燃費の向上も目指し、エンジン・CVT・エアコンなどを統合制御しエコ運転を行うホンダ車お馴染みの「ECONモード」も採用されている。
いっぽう街乗りの取り回しの良さはそのままに、高速道や郊外路走行時の安心感を高めるべく、電動パワーステアリングのセッティングも改良された。
またインテリアやラゲッジルームアンダーボックスの形状など、ユーザーの声を反映し事細かに地道な改良が細かに施されているのも、ロングセラーモデルならでは。給油口のフューエルリッド開口部を拡大したり開閉動作音を追加したのも、セルフ給油が増えた昨今の事情を反映したものだという。ベースグレード「13G」の価格は1,230,000円(5速MT/CVTともに)から。
「走り出しから違う」 15RSはホンダ入魂のスポーティモデルとしてさらに進化
スポーティなサウンドを演出するべく、マフラーの音圧やエンジンマウント(中回転からの抜け感に影響するという)に配慮したほか、前後のスタビライザー強化に代表される足回りの性能向上、ボディ剛性自体の強化などで、よりきびきびした走りを狙う。開発者自ら『走り出しから違う』と誇る自慢の作だ。またショートストローク化された6速MTを新採用した点も興味深い。ホンダいわく『CR-Z同様のスポーティなシフトフィール』だというから、これは試乗が楽しみだ。CVTモデルについても発進性能を高めたいっぽうで、巡航時のエンジン回転を抑え乗りやすさや燃費性能にも配慮した。「15RS」の価格は1,698,000円(6速MT/CVTともに)。
ダウンサイジングユーザーのための上質グレード「15X」もさらに質感向上
国内のホンダ車の中で、フィットは実に25%強の販売割合を占めるまでに成長した基幹車種だ。ということは、裏を返せば上級のセダン車などからもマーケットを奪っていることを暗に示している。実際、ユーザーの燃費志向の高まりとも相まって、上級から移行してきたダウンサイジングユーザーがフィットを求めるケースが年々増えているという。その受け皿となっているのが、1.5リッターエンジン搭載の上級グレード「15X」だ。
今回のマイナーチェンジで、その15Xもさらに上質感を高めた。ブラウンカラーのスウェード調専用表皮シートに代表される落ち着いたインテリアや、運転席&助手席シートヒーター、クルーズコントロール、Hondaスマートキーシステムなどの上級装備などがおごられている。またハイブリッド同様に吸音・遮音対策もさらに強化され、静粛性にも配慮されており、ダウンサイジングユーザーのニーズに応える。「15X」の価格は1,498,000円/1,673,600円(2WD/4WD)。
エコカー補助金終了の影響は、好調なフィットとはいえ他人事ではない。ホンダでは今回のフィットのマイナーチェンジやフィット ハイブリッド投入を販売強化の切り札としてとらえ、販促にも力を注ぐ。発売前の事前告知にも力を入れており、既に放映中のTVCMは最終的に全15種ほどを放映するなど、マイナーチェンジモデルとしては異例の力の入れようをみせる。またホンダの全販売店約2200拠点全てに「フィット 13G」と「フィット ハイブリッド」を試乗車として配備する予定となっている。
代表グレード | ホンダ フィット ハイブリッド[FF] |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3900x1695x1525mm |
車両重量[kg] | 1130kg |
総排気量[cc] | 1339cc |
エンジン:最高出力[ps(kw)/rpm] | 88ps(65kW)/5800rpm |
エンジン:最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 12.3kg-m(121N・m)/4500rpm |
電動機(モーター)種類 | 交流同期電動機(薄型DCブラシレスモーター) |
電動機(モーター):最高出力[ps(kw)/rpm] | 14ps(10kW)/1500rpm |
電動機(モーター):最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 8.0kg-m(78N・m)/1000rpm[エンジン始動時:9.4kg-m(92N・m)/500rpm] |
トランスミッション | ホンダマルチマチック(無段変速オートマチック) |
10・15モード燃費[km/L] | 30.0km/L |
定員[人] | 5人 |
消費税込価格[万円] | 159.0万円 |
発売日 | 2010/10/08 |
レポート | 徳田 透(CORISM編集部) |
写真 | 本田技研・CORISM編集部 |
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