ライバルからのシェア奪還を目指して「何もかもが、KINGだ。」
今でこそトヨタにシェアを大きく奪われてはいるが、元々Lクラス高級ミニバンの市場を大きく開拓したのは1997年に登場した初代エルグランドだった。当時は当たり前だった商用バンの派生車ではなく、全く新しい乗用車専用モデルとして設計された初代エルグランドは、押出しの強いマスクや余裕の走り、ゆとりある室内空間などがウケて大ヒット作となった。これを受けてトヨタは、2002年の2代目エルグランドが登場した翌日に「アルファード」を発売。クラウンをほうふつとさせる高級感を与えたインテリアを仕立てる一方で低価格な2.4リッターモデルを設定する周到ぶりで、イッキにトップシェアを獲得した。そのアルファードは08年早々にフルモデルチェンジを果たし、追加された兄弟車「ヴェルファイア」と併せ好評を博しているのが現状だ。
この状況下で、"老舗"エルグランドは満を持して約8年ぶりのモデルチェンジを迎えた。シェアを奪われたうっ憤を晴らすかのように、全てに渡り気合の入った内容がテンコ盛りな新型エルグランド。その大いなる変貌ぶりについて、詳細にお届けしていこう。
FRからFFに大変身! 走りの質や静粛性も大幅に向上した
搭載されるのはV6 3.5リッター「VQ35DE」型エンジンと、新採用の直4 2.5リッター「QR25DE」型エンジンで、エクストロニックCVT-M6(6速マニュアルモード付き)と組み合わされる。ともに環境性能は大いに高められ、新プラットフォーム化によるボディの軽量化と相まって各クラストップの燃費性能をマーク。4WD車を含め、エコカー減税の適合を受ける(3.5リッターFF車のみ一部で適合)。さらにECOモードスイッチや燃費計、ナビ協調変速機能など燃費走行をアシストする「エコドライブアシスト機能」により実用燃費の向上もサポートする。
クラストップの9.8km/L(10・15モード燃費)をマークするなど、従来型3.5リッター車に比べ20%も燃費が向上している。
先代モデルのV6エンジンから直4へと変更された2.5リッター車。最大11.6km/Lの低燃費を誇るなど先代より30%も燃費が向上した。
フロントマスクの「らしさ」は残しつつ、内外装のイメージは一新
まずは外観から。フロントフェンダーから伸びるZラインの軽快なショルダーライン、いっぽうで低重心を強調する下半身のどっしりした安定感、前席から連続して一周するキャビン部のガラス処理など、走りの良いドライバーズカーであることをエクステリアでも表現するとともに、単調になりがちな箱型ミニバンのスクエアフォルムを引き締める効果も得た。もちろん、全体として高級ミニバンに相応しい上質感も獲得している。写真よりも、実物を屋外でしみじみ眺めて見て頂いたほうがその実感を得られるかもしれない。
いっぽうの室内。先代エルグランドではモダンでクールな印象のスタイリッシュなインテリアデザインが特長だったが、ライバル車に対してはシンプルに見え、その分高級感という面でやや見劣りがしていたのも事実だ。マイナーチェンジを重ねる毎に、インパネ周りなどは年々厚化粧になっていった経緯がある。新型ではその点に当初から注力されたようだ。同じ日産のミニバン「セレナ」が見晴らしが良く開放感あるシンプルなインパネ周りなのとは対照的に、新型エルグランドはボリューム感あるラウンドフォルムのデザインとし、ドライバーに適度な包まれ感を与えるとともに上質感を演出する。クローム類の加飾やクラス最大の面積を誇るという木目調パネルをあしらったのも効いている。
そして最大の見所は、座り心地の良い3列各シートにある。7人乗り仕様には、助手席と2列目シート2席に同時に使えるトリプルオットマンを採用。中でも2列目シートにはシートクッション一体型オットマン、中折れ機能付きシートバック、3層構造パッドを同時採用する世界初の「コンフォタブルキャプテンシート」を搭載し、快適な乗り心地をサポートする。また3列目シートも従来の左右跳ね上げチップアップ収納を止めフォールダウン収納とすることで、シート自体の掛け心地も大幅に向上させた。
最上級ミニバンに相応しい贅沢な装備を満載
後席スライドドアの電動化は今では軽自動車でも当たり前の装備だが、エルグランドは一味違う。ドアノブのスイッチを一押しするだけでオートスライドドアが作動する「ワンタッチオートスライドドア」を世界で初めて採用したのだ。今まであるようでなかった便利装備で、他モデルへの普及も期待出来るだろう。なお、助手席側電動スライドは全車標準、両側の電動化は2.5リッター車でオプション、3.5リッター車で標準装備となる。
このほかインテリジェントエアコンシステムは、従来の菌やウィルスの不活化や匂い低減に加え、お肌のうるおいを保つ高濃度プラズマクラスターイオンを発生させるものに進化した。内外気自動切換え機能も排ガスのみならず外気の匂いを防ぎながら換気することで、室内環境をより快適に保つ。
走りや安全装備の面では、VDC(ビークルダイナミクスコントロール:横滑り防止装置)やカーテンエアバッグ、運転席・助手席サイドエアバッグシステム、タイヤ空気圧警報装置が全車で標準装備される。中でも、ボディが大きく背も高いミニバンにとって、タイヤの空気圧管理なくしてはVDCも安全に機能しない。ただ実際のユーザーには空気圧管理の大事さはそこまで浸透しておらず、この警報装置の存在は地味ながら重要な機能となるだろう。なお空気を充填した際、指定圧に達するとブザーで知らせる日本初のガイド機能も装備される。
このほか、0-100km/hで機能するインテリジェントクルーズコントロールはインテリジェントブレーキアシストとセットで3.5リッター車にオプション設定される。
ラインナップは「ハイウェイスター」中心に構成
8年ぶりのモデルチェンジとあって、とても全てを紹介することが出来ないほどに盛り沢山の進化を遂げた新型エルグランド。グレード構成は、エアロパーツ・18インチアルミホイール付きの「ハイウェイスター」シリーズがほぼ占めている。価格は2.5リッター「250ハイウェイスター」3,381,000円/3,664,500円[FF/4WD・8人乗り]から3.5リッターの最上級モデル「350ハイウェイスター プレミアム」4,357,500円/4,641,000円[FF/4WD・7人乗り]まで。16インチホイール装着のベーシックな「250XG」は8人乗りのみの設定で3,076,500円/3,360,000円(2WD/4WD)となっている。ボディカラーは全5色だがハイウェイスター専用色・250XG専用色がそれぞれあり、各4色の設定と選択肢は少ない。いっぽう内装色は本革「ダークエスプレッソ」、合皮・織物コンビ「ブラック/ベイブラウン」、スエード調クロスの明るい「シルキーベージュ」からグレードに応じて選択出来る。
なお上記の価格は全てオーディオレスの状態で、高価なHDDナビゲーションシステムやアラウンドビューモニターなど、エルグランドを買うなら「絶対欲しい」装備は、全車でオプション装着となる。くれぐれもお忘れなきよう。
また併せてオーテックジャパンが仕立てるカスタム仕様、お馴染みの「ライダー」と、福祉仕様「アンシャンテ セカンドスライドアップシート」も同時設定される。価格は「ライダー」[2.5・FF・8人乗り]3,601,500円から。
日産では、新型 エルグランドの販売目標台数を1900台/月と発表している。
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代表グレード | 日産 エルグランド 350 Highway STAR Premium(ハイウェイスター プレミアム)[2WD] |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 44915x1850x1815mm |
車両重量[kg] | 2020kg |
総排気量[cc] | 3498cc |
最高出力[ps(kw)/rpm] | 280ps(206kW)/6400rpm |
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 35.1kg-m(344N・m)/4400rpm |
トランスミッション | エクストロニックCVT-M6(6速マニュアルモード付無段変速機) |
10・15モード燃費[km/L] | 9.4km/L |
定員[人] | 7人 |
消費税込価格[万円] | 4,357,500円 |
発売日 | 2010/08/18 |
レポート | 徳田 透(CORISM編集部) |
写真 | 日産自動車/CORISM編集部 |
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