フォルクスワーゲン ティグアン新車情報・購入ガイド コンパクトSUVの枠を超えた上級装備とクオリティ。しかし、FFだけでいいの? クリーディーゼル車は?
SUVでもFFが中心! 脱セダン、ミニバン顧客に人気のコンパクトSUVがティグアンだった
フォルクスワーゲン は、コンパクトSUV のティグアン を8年ぶりにフルモデルチェンジし発売を開始した。新型フォルクスワーゲン ティグアンは、このフルモデルチェンジで2代目となる。
初代フォルクスワーゲン ティグアンアは、2008年に登場した。全世界的にSUV人気が高まる中、コンパクトSUVと呼ばれるクラスのパイオニアとも呼べるモデルだった。現在のSUVは、より乗用車的要素が強く押し出されているが、初代ティグアンは大きなアプローチアングルをもつなど、オフローダーとしのも高いパフォーマンスを発揮した。デビュー当時は、2.0LターボとAWD という組み合わせだった。
SUVということもあり、デビュー当時からしばらくの間はAWDのみの設定だった。売る側の感覚としては、SUVなので当然AWDが好まれるという思い込みがあった。しかし、2012年にティグアンにリーズナブルな価格設定がされたFFモデルが投入される。売る側の予想とは異なり、このFF車が大ヒットする。なんと当時、FF車は全体の75%を占めるほどとなった。エンジンが1.4Lターボとなり、より低燃費化されたことも、売れた要因だ。
クルマ業界的に言うと、オフロードを走ることを意識したSUVなのだから、当然、AWDが売れる。と、考えがちだ。しかし、マーケットはそんな従来の考え方とは異なる価値観をもっていたのだ。
セダン 車の低迷もあり、セダン車に乗る顧客が着座位置が高く見晴らしがよく使い勝手の良いSUVを選択するようになった。今まで乗っていたセダンでは、駆動方式にこだわりがなく2WDでも十分満足していた顧客なので、SUVだからといってAWDである必要もない。当然、より価格の安いFFで十分ということになる。また、ミニバンに乗っていた顧客が、子離れしたことから乗り換えるケースも多いという。ミニバン のアップライトな着座位置は運転しやすいので、こうした利点を維持しながらコンパクトなモデルという選択になると、こうしたコンパクトSUVになるようだ。ほとんどのミニバンがFFなので、ティグアンの優れたAWD機能は無用の長物となり、価格の安いFFで十分ということになるのだ。
多くのSUVが存在するが、やはり人気の中心はFFモデル。こうしたマーケットニーズを踏まえ、新型ティグアンは初期のライナップではFF車しか用意されていない。いずれ、AWDも用意される予定だ。
よりワイドで低いスタイリングになり、スポーティな印象となった新型ティグアン
新型フォルクスワーゲン ティグアンのボディサイズは全長4,500mm(先代型比+70mm)、全幅1,840~1,860mm(先代型比+30~+50mm)、全高1,675mm(先代型比-35mm)となっている。先代ティグアンと比較すると、ひと回り大きくなった印象だ。全高が低くなり、全幅がワイドになったことで、よりワイド&ローフォルムが強調されスタイリッシュなスタイリングになった。
フロントフェイスのデザインは、先代モデルのイメージを残しつつ、より水平基調のデザインが採用されている。兄貴分となるSUV、トゥアレグと同じデザインテイストだ。全幅がよりワイドになったこともあり、水平基調のデザインがより鮮明になった。
インテリアは、フォルクスワーゲンらしいカッチリとしたデザイン。精緻感あふれるデザインで、先代モデルよりかなり高級感がアップしている。
同様に上質さを引き立たせているのが、Highlineにオプション設定されたでは、ブラックと新色のサフラノオレンジを組み合わせたレザーシート。鮮やかなサフラノオレンジが、インテリアに華やかさをプラスしてくれる。
そして、より高級感と先進感をアピールしているのがデジタルメータークラスター「アクティブインフォディスプレー」だ。従来のアナログ型に代わるTFT12.3インチ大型ディスプレイによるフルデジタルメータークラスターだ。高解像度ディスプレイには、速度計とタコメーターに加え、好みに合わせて数種類のモードから選択したグラフィックが表示される。そして、ナビゲーションモードを選択した場合は、左右のメーターが通常モードより小さくなり、メーター中央にはナビシステムである“Discover Pro”と連動したマップをより大きくワイドに映し出すことができる。この画面は、なかなか見やすく、視線移動が少ないため安全性も高い。一度使うと、センタクラスターにある通常のナビ画面を見るのも面倒になるくらいだ。アクティブインフォディスプレーは、新型ティグアンのHighline、R-Lineに標準装備される。
広くなった室内! ライバルを凌駕する広い荷室は、使い勝手の良さを重視するフォルクスワーゲンならではの設計
新型ティグアンは、ホイールベースが延長されたことで、室内スペースが拡大した。室内長で+26mm、後席のニールームで+29mm広くなった。とくに、リヤシートは180mmの前後スライド幅を確保。居住性向上だけでなく、ラゲージルームの容量拡大にも貢献している。
ラゲッジルームの容量は、後席を一番前にした状態で615L(先代モデル比+145L)と広い。後席を完全に折り畳むとクラストップレベルの1,655Lとなる。この広さは、かなりのもので荷室の広さに定評があるゴルフ ヴァリアントが605~1,620L。メルセデス・ベンツGLAが421~1,235Lなので、フォルクスワーゲン車らしく実用面でも高いレベルにある。
この荷室へのアクセスには、荷物で両手がふさがっている時に便利な“パワーテールゲート“(挟み込み防止機能、”Easy Open & Easy Close“機能付)をHighlineとR-Lineでは、オプションで選択ができる。キーを持った人が、リヤバンパーの下で足を動かすと、センサーが反応してテールゲートが自動で開き、”Easy Close”ボタンを押してクルマから離れると、テールゲートは自動的に閉まる。コンパクトカーSUVとしは、なかなか贅沢な機能だ。
安全装備面も充実している。フォルクスワーゲンは、歩行者検知式自動ブレーキなどの先進安全装備類などの総合安全コンセプトを「フォルクスワーゲン オールイン・セーフティ」と呼ぶ。新型ティグアンには、このコンセプトに基づき優れた安全装備が用意された。
ただ、歩行者検知式自動ブレーキであるシティエマージェンシーブレーキ機能は、歩行者に対応する速度が30㎞/h未満という設定。歩行者との衝突による致死率は、30㎞/hを超えると急激に上昇する傾向にある。つまり、より高い速度から減速し衝突回避することが望まれる。または、高い速度域からでもとにかくできるだけ減速させて、衝突回避ができないまでも30㎞/h以下に落とすことが重要だ。歩行者を見分けることができない自動ブレーキよりは効果的だが、致死率を下げるという意味では少々物足りない。対車両に関しては、全速度域で衝突被害軽減ブレーキが作動するという高性能なものになっている。
また、一度使うとやめられなくなるほど運転が楽になり疲労軽減ができるアダプティブクルーズコントロール“ACC”(全車速追従機能付)が全車標準装備化された。さらに、渋滞時追従支援システム“Traffic Assist”もエントリーグレードを除き標準装備化。この機能は、渋滞時の発進&停止、車線維持を自動制御し渋滞時の疲労軽減と衝突リスクを軽減する。渋滞の多い日本では、とても頼りになる機能だ。
その他、駐車支援システム“Park Assist”や歩行者衝突時に歩行者の頭部損傷を軽減する“アクティブボンネット”や“ポストコリジョンブレーキシステム”などの安全装備も全車に標準装備。
さらに、Highline 以上にはレーンキープアシストシステム“Lane Assist”や渋滞時追従支援システム“Traffic Asist”などを標準装備した。
フォルクスワーゲンというと、愚直なまでクルマの本質を追い求めるメーカーというイメージが強い。しかし、新型ティグアンでは新しい時代の「つながる SUV」として、フォルクスワーゲンCar-Netを全車標準装備とした。硬派のフォルクスワーゲンが、IoTに敏感に反応する時代になった。
新型ティグアンには、純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”(Highline 以上:標準装備)やや“Composition Media”(Comfortline:標準装備)を通じて、Volkswagen のモバイルオンラインサービス“フォルクスワーゲンCar-Net”が使える。Highline 以上では、インターネット接続によりナビゲーション検索性能、案内精度、快適性を大幅に高めるテレマティクス機能“Guide & Inform”を標準装備した。
さらに、全車に標準装備する3つの通信プロトコルに対応した“App-Connect”を利用すれば、ドライバーの端末機種(iOS でも Android でも)をUSB接続するだけで、スマートフォン内のアプリを楽しむことができる。
新型フォルクスワーゲン ティグアンのグレード選び。お勧めはR-Line! ディーゼル&AWDの追加に期待!
新型フォルクスワーゲン ティグアンのグレード選び。ティグアンのグレードは3つ。「Comfortline」、「Highline」、「R-Line」となっていて、1.4Lの直4ターボでFFのみの設定だ。エンジンは1タイプで駆動方式もFFのみとシンプルなので、装備で選ぶしかない。
新型フォルクスワーゲン ティグアンの価格は、Comfortlineが360万円、Highlineが433.2万円、R-Lineが463.2万円となっている。ComfortlineとHighlineの価格差が約73万円と大きいのが特徴だ。この価格差は、渋滞時追従支援システム“Traffic Assist”などの安全装備、LEDヘッドライト、ナビ(Volkswagen Car-Net含む)、スマートエントリー、デジタルメータークラスター“Active Info Display”などによるもの。安全装備もオプション装備となるものもあるが、一定の水準を超えているのでシンプルに予算重視で乗るならComfortlineでも十分といった印象だ。ただ、せっかく輸入車のSUVを買うという部分での満足度を考えると、Highline以上のグレードがお勧めだ。とくに、より充実した安全装備やデジタルメータークラスター“Active Info Display”、ナビは外せないだろう。
R-Lineは、Highlineに対して19インチホイールになることや、R-Line専用のエアロパーツ類や専用インテリアパーツ類が装備される。価格は約30万円アップ。プラスされた装備を考えると、ややお買い得といった印象。こうしたスポーツモデルが好きなら、迷わず選択したいグレードだ。
新型ティグアンの中で、最も高いリセールバリューとなると思われるのは、スポーティなR-Lineだろう。5年以内くらいの短期間での売却であれば、R-Lineはリセールバリューが高いので、車両価格がやや高くてもリセールバリュー差で、若干元が取れる可能性が高い。グレード選びに迷ったら、R-Lineを選択するといいだろう。そうなると、新型ティグアンのお勧めグレードはR-Lineということになる。
新型ティグアンは、先代モデルがFFを中心に売れたことから、初期段階ではFF車のみの設定。とはいえ、こうしたSUVである以上、AWDを望む顧客も多いことや、降雪地域の顧客のニーズもある。数は少ないとはいえ、AWDの設定が無ければ、AWDを望む顧客は最初からティグアンを購入リストに入れない。こうなると、フォルクスワーゲンのAWD車に対する理解が進まないのと同時に、AWDを望む顧客との接点がないまま他メーカーへ流出させてしまうことになる。AWD車の設定は必要だろう。
そして、パワーユニットも1.4Lターボだけというのは少々微妙。十分な出力や優れた燃費値(16.3㎞/L)なのだが、さすがにエコ時代にガソリン車のみ、それもハイオク仕様では割り切り過ぎだ。せめて、ハイオク仕様ではなくレギュラー仕様にして、日本マーケットのニーズに適応するくらいの努力は必要だろう。
さすがのトヨタも、ハイオク仕様だったオーリスの1.2Lターボを、新型ティグアンと同じクラスに属するSUV、C-HRにはレギュラー仕様に変更して搭載したくらいだ。とくに、フォルクスワーゲンのように、プレミアムブランドではなく、日本車との競合が多くなるメーカーほど、日本マーケットへの最適化が必要だ。
また、車重が重くなるSUVとの相性がいいクリーンディーゼル車 の投入にも期待したい。そして、安価な設定のPHVも今後必要になるだろう。エコカー減税が今後どうなるか分からないが、顧客に対してエコカー減税免税などのメリットを十分に提示するためには、クリーンディーゼルやPHV といったパワーユニットが必要になる。こうしたメリットを顧客に提示できないと、クルマは非常に魅力的でも販売面では厳しい戦いになるだろう。
今後クリーンディーゼル車やAWD車は追加される可能性が高い新型ティグアンなので、そんなに慌ててクルマを乗り換えなくてもいいという人は、クリーンディーゼル車やAWD車が出て、ライナップが充実してからでも遅くはない。
フォルクスワーゲン ティグアン価格
・TSI Comfortline :3,600,000円
・TSI Highline :4,332,000円
・TSI R-Line:4,632,000円
フォルクスワーゲン ティグアン燃費、スペックなど
全長 4,500mm
全幅 1,860mm
全高 1,675mm
ホイールベース 2,675mm
車両重量 1,540kg
乗車定員 5名
JC08燃料消費率 16.3km/L
エンジン 種類 直列 4 気筒 DOHC インタークーラー付ターボ(4 バルブ)
総排気量 1,394 cc
最高出力 110kW(150PS)/ 5,000~6,000rpm
最大トルク 250Nm(25.5kgm)/ 1,500~3,500rpm
トランスミッション 6速 DSG
フロントサスペンション マクファーソンストラット(スタビライザー付)
リヤサスペンション 4 リンク(スタビライザー付)
使用タイヤサイズ 255/45R19
価格(税込) 4,632,000円
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