日産自動車、2,370億円で三菱自動車を傘下に! 救われた三菱、激安で買えた日産 [CORISM]

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【日産】2016/05/13

激安! とても良い買い物ができた日産

日産自動車 カルロス・ゴーン社長
 日産 は、燃費不正問題で揺れる三菱自動車 に約2,370億円出資する。その結果、株式比率は34%となり事実上、日産は三菱を傘下企業に収めるカタチになった。

 この日産の出資は、随分安い買い物になった。不正問題が発覚する前、三菱自動車の株価は2015年11月頃に1,000円を超える株価を記録している。その後、徐々に株価は下がり、不正が発覚した後の株価は400円台半ばまで落ちた。日産は新規に発行される5億660万株の三菱自動車株を、一株当たり468円52銭で取得する予定。株価は、2016年4月21日~2016年5月11日までの期間の出来高加重平均としている。ほぼ、不正発覚前の半額以下の株価、ほぼ底値のような価格で三菱を傘下に収めたことになる。

スピーディでスムースな出資合意の裏には?

 まさに、巧妙に仕組まれたシナリオがあったように、両社とも2015年度の決算を終えた後の出資話。三菱自動車の益子会長は、日産との軽自動車 に関する合弁会社NMKVを設立した頃から出資関連の話はあったとしている。しかし、日産が燃費不正について指摘したのが2015年11月、不正公表は2016年4月。まるで、この間、こうなることが決まっていたかのように、順調に話が進んでいるようにみえる。

 三菱自動車をグループ傘下にしたいと日産が以前から考えていたのだとしたら、三菱自動車の燃費不正問題は、日産にとって軽自動車の供給が止まるという痛手を負いながらも、バーゲンプライスで三菱自動車を手に入れたカタチになる。

 三菱自動車の株主である三菱グループから、出資の話がほとんど出てこないというのも不思議な状況。三菱グループとの調整も極秘のうちに勧められ、こうしたシナリオに向けた準備が着々と進められていたようにもみえる。ましてや、国交省が、三菱自動車に立ち入り検査に入ったのは、日産が出資の発表を行った翌13日だ。国交省もこうしたシナリオに絡んでいるようにもみえる。

いつ稼働再開できるか不安はあるものの、国内工場閉鎖という最悪のシナリオは回避できた三菱

 日産にとって三菱自動車を傘下にしたことは、大きなメリットがある。三菱はASEANに強く、日産は参入を強化中。三菱とのアライアンスにより、新たな工場への出資をせずにOEM供給を受けることができれば、効率よく日産車の販売が可能になる。もちろん、三菱も工場の稼働率も上がり、コストが下がり高収益が期待できる。

 三菱自動車にとって、日産とのアライアンスにより、軽自動車が今まで通りOEM供給できるため、国内の工場を閉鎖する必要がなくなるのは心情的にも大きい。今回の燃費不正問題では、三菱の国内販売は長期間に渡り大打撃を受けることは確実。国内専用車の軽自動車は、国内で生産され国内で売らるため海外に輸出されない。軽自動車は、とくに深刻で単独での復活は無理といった状況。こうなると、軽自動車の生産工場閉鎖となる可能性が高く、閉鎖にならなかったとしても三菱は多くの仲間を失うことになる。関連会社やサプライヤーを含めれば、三菱だけの問題でなく、日本経済にも打撃を与えかねない。

 もはや、自動車は高度化が進み、莫大な開発費がかかる。自動運転技術や燃料電池車などには、多くの開発費が必要になり、三菱1社の体力ではこうした投資がしにくいというのも事実だ。頼みの綱だった三菱グループも赤字やゼロ金利、トラブルなど各社三菱自動車を支援する余力が少ない状況だったことも、スムースに日産が出資で来た理由のひとつだろう。益子会長にしてみれば、もはや選択肢が無い状況だったのだろう。

 三菱自動車を救った日産の出資は、三菱自動車にとってデメリットは少ない。三菱は日産の協力を得ることで国内の雇用を守り、さらなる未来への一歩を踏み出すことができるようになった。

 また、我々が心配なのは、三菱ブランドがどうなってしまうのか? と、いうことだ。日産のゴーン社長は、独立したブランドであり続けることに変わりないと強調する。

 結果的に、日産とルノーグループは、三菱自動車を傘下に入れたことで、世界での販売台数は1,000万台に近付く。世界トップ3入りが目前となってくる。

 さて、下世話な話だが日産ゴーン社長は、ルノーから約8億8000万円の報酬を得ている。同時に日産からもも報酬を得ている。今回の出資では、日産が三菱に対して取締役の推薦ができる。もし、ゴーン社長が三菱の取締役をも兼ねることになると、ゴーン社長はルノー、日産、三菱という3社から報酬を得ることも考えられる。

日産、プレスリリース全文「日産自動車と三菱自動車、戦略的アライアンスを締結」

日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:カルロス ゴーン)と三菱自動車工業株式会社(本社:東京都港区、会長:益子 修)は12日、両社による幅広い戦略的アライアンスに関する覚書を締結したことを発表しました。三菱自動車の発行済み株式34%を、日産自動車が2,370億円で取得する予定です。

両社の戦略的アライアンスは、過去5年間に亘り、協力を続けてきた現行のパートナーシップを更に発展させるものです。

日産と三菱自動車はまた、購買、車両プラットフォームの共用、新技術の開発分担、生産拠点の共用、および成長市場を含む、複数の面で協力することにも合意しました。

日産の社長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーンは、「本件は画期的な合意であり、日産と三菱自動車の双方にウィンウィンとなるものです。両社が集中的に協力し、相当規模のシナジー効果を生み出すことで、新たな自動車産業の勢力ができあがることになります。当社は、三菱自動車の筆頭株主として、同社のブランドと歴史を尊重し、大きな成長の可能性の実現をサポートしていきます。日産は課題に直面している三菱自動車を支援し、同社をアライアンス・ファミリーの新たな一員として歓迎したいと思います」と述べました。

三菱自動車の取締役会長兼CEOの益子修は、「長年に亘り数々のパートナーシップで成果を生み出してきた日産自動車には、アライアンスのメリットを最大限に活かす豊かなノウハウがあります。今回の合意で、両社の将来の発展に求められる、長期的な価値を生み出すことができるでしょう。開発や共同購買など、リソースの共有を含む戦略的なパートナーシップの深化が、長期的な価値をもたらします」と語りました。

以上の取り決めに従い、日産は新規に発行される5億660万株の三菱自動車株を、一株当たり468円52銭で取得する予定です。株価は、2016年4月21日~2016年5月11日までの期間の出来高加重平均とします。取引成立後、日産は三菱自動車の筆頭株主となります。

三菱自動車と日産は、三菱重工業、三菱商事、ならびに三菱東京UFJ銀行が、今後も三菱自動車への出資比率を高水準で維持し、この戦略的アライアンスを支持することを期待しています。

株式の取得は、三菱自動車の株主である三菱グループと株主間契約を結び、規制当局の承認を経て、2016年5月末を目処にアライアンスの正式契約を締結し、2016年末までに全ての手続きが完了する見込みです。

日産による三菱自動車への戦略的な出資は、17年間に亘る仏ルノーとの株式持合いを中心とするアライアンスモデルを更に拡大します。日産はダイムラーとアフトワズを含む他の自動車グループにも出資、またはパートナーシップを結んでいます。

本合意を受け、三菱自動車は、日産が推薦する、同社の議決権に比例した人数の、取締役会会長を含む取締役候補を提案することになります。

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(レポート:大岡 智彦

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