スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレー新車情報・購入ガイド 3つの顔を作った理由とは? 強面迫力系に振り切れないスズキのジレンマ? [CORISM]
顧客の人気はスーパーハイト系に! 徐々に売れなくなっていったワゴンR。フルモデルチェンジが遅れたのは、あの事件の影響!?
先代となる5代目スズキ ワゴンRは、2012年にデビュー。ライバルであるダイハツ ムーヴ と熾烈な燃費戦争を繰り広げたモデルだ。デビュー時から、ムーヴと競い合いながら徐々に燃費を向上。安全装備面でも、今では簡易式と呼ばれるようになってしまったが、対車両のみ30㎞/h程度以下に作動する自動ブレーキ、レーダーブレーキサポートなども装備された。
そして、大きな転換期は2014年のマイナーチェンジだった。なんと、軽自動車初となるマイルドハイブリッド システムをワゴンRに搭載。燃費は32.4㎞/Lを達成。ムーヴは価格優先とし、ハイブリッドモデルを投入しなかったこともあり、燃費戦争も決着した。燃費戦争は決着したものの、ワゴンRのマイルドハイブリッド車は、最終的に33.0㎞/Lまで燃費を向上させた。
マイルドハイブリッドを採用し、クラストップの燃費値を誇るワゴンRだったが、販売台数はそれほど伸びなかった。その理由は、まずハイト系ワゴンクラスが、年々マーケットでの人気が下がってきていた。軽自動車の人気カテゴリーは、スペーシア やタント といったスーパーハイト系 にシフトしていた。2013年には約18.6万台売ったワゴンRも2014年には約17.5万台、2015年は10.8万台、2016年は8.1万台とドンドンと販売台数を落としていった。また、ワゴンRのマイルドハイブリッド車は、価格がやや高かったことも販売台数が伸びなかった要因と言われている。
そして、2016年には三菱と同様にスズキにも燃費不正問題が発覚した。本来ならば、2016年の9月頃にはフルモデルチェンジしている予定だった新型ワゴンRだったが、国交省の影響もあり半年近く遅れ2017年2月にフルモデルチェンジした。
まだまだ、上品さを捨てきれないワゴンRデザイン
HYBRID FZは、標準車のトップグレードということもあり、異なるデザインで差別化された。先代のFZがやや高価でありながら、デザイン的にも差別化されておらず販売面で苦戦を強いられたことに対する対応だろう。フロントグリルから続く横基調のラインで上下2段に分割されたデザインが採用された。トヨタ の大型ミニバン 、ヴェルファイア にも似た印象を受ける。ヘッドライトは贅沢なLEDヘッドランプが採用され、上段にブルーリフレクターを使い精悍な顔つきとしている。こうした強面迫力系のデザインとなったHYBRID FZは、他社のカスタム系にも匹敵する。車体色は、青色「ブリスクブルーメタリック」をはじめ、全8色を設定した。
ワゴンRスティングレーは、縦型のヘッドライトに大きなグリルの組み合わせた個性的なデザインとなった。こちらは、キャデラック系のデザインにも見える。メッキ加飾とブラックパール塗装のフロントグリル、ボディー後方に向かって延びるLEDヘッドランプ、大きな開口部が特徴的な専用フロントバンパーが採用された。また、夜間でも目立つように、スモールランプに連動して点灯するLEDイルミネーションをヘッドランプに採用している。背の高いハイト系 に似合うデザインともいえ、なかなかスタイリッシュにまとめられている。車体色は、新色のカーキ「ブレイブカーキパール」をはじめ、全6色を設定した。
新型ワゴンRがこのように3つもの顔をラインアップしたのには訳がある。それは、ダイハツ の動向だ。ダイハツは、ムーヴ系 が5タイプ、キャストが3タイプとこのクラスに計8タイプの車種をラインアップしている。新型ワゴンRが3タイプ用意されたとはいえ、ハスラーを入れて4タイプにしかならない。顧客ニーズの多様化に、細かく対応できるとい点では圧倒的にダイハツが有利なのだ。こうしたライバル車対策でもある。
また、先代ワゴンRは、スティングレーを含め、デザインがおとなし過ぎたという反省点もあるのだろう。マーケットは、ハスラー のようにデザイン性を重視する顧客層と、デザイン性よりとにかく強面迫力系デザインを好む顧客層がある。最近では、標準車では個性不足ということもあり、デザイン性なのか迫力強面系なのか両極端に振れる傾向が強いようだ。新型ワゴンRは、こうしたマーケットの傾向に対応したともいえる。
ただ、新型ワゴンRのデザインは、まだ上品さを捨てきれていない。迫力強面系で人気があるモデルには、上品さやデザイン性は無く、とにかく目立つことに注力している。極端に言えば、下品に見えるくらいがちょうどいい。新型ワゴンRは、3つの顔を用意したものの、まだ若干振り切ったデザインになっていないように見える。
新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」採用で、室内はより広く、そしてさらに便利に!
HYBRID FXなどは、ベージュ系のルーミーなインテリアカラーも用意されている。汚れを嫌いブラック系の人気が高いが、ベージュ系は明るく室内も広く感じるメリットもある。
ワゴンRは、室内に広さに定評があったモデル。今回のフルモデルチェンジでは、新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」が採用され、ホイールベースが2,460mm(先代モデル+35mm)となった。ホイールベースの長さは、室内の広さに直結する傾向にある。ホイールベースが伸びたことで、室内長は2,450mmのとなり、このクラスでトップとなる室内空間を実現した。
使い勝手面では、乗降性を追求。前席のヒップポイントの高さを見直して、よりスムーズに乗り降りできるようにした。これは、高齢者などにはうれしい変更だ。さらに、Aピラーのスリム化、ドアミラーを小型化し下方に配置することで右左折時の視界を大きく向上させた。また、リヤワイパーをハイマウントストップランプの下側にレイアウトし、リヤクォーターガラスも新設したことで後方視認性を高めた。視認性を高めることで、より安全性を高めている。
ラゲッジルームは、リヤコンビネーションランプをバンパー上端に配置するデザインとしたことで、荷室開口幅を先代モデル比で100mm拡大し、使い勝手を向上。シートアレンジは、フルフラットや助手席を前に倒して広く使えるシートアレンジと、片手で操作できるワンタッチダブルフォールディングリヤシートや、左右独立リヤシートスライドなど、ワゴンRの使い勝手の良さを継承している。
定評のある収納スペースでは、軽自動車初となる後席ドア両側の内側にアンブレラホルダーを採用。傘についた雨水を車外に排出できるため、濡れたままでも傘を収納でき、収納スペースを含め、便利機能は一段と進化。
装備関連では、ウインカーレバーを車線変更しようとする方向に軽くおさえるだけで、ターンランプが3回点滅するレーンチェンジウインカーをスズキ軽自動車で初採用した。
また、カーコネクティッド機能でもあるスマートフォンとの連携も強化。スマートフォンと連携したサービスが利用可能なApple CarPlayやAndoroid AutoTM、より高精度の渋滞回避案内等が可能となるVICS WIDEに対応している。
クラストップの燃費33.4㎞/Lを達成できる優れた技術力がありながら、環境重視の時代にアイドリングストップ機能を外したモデルを投入する企業姿勢とは?
この設定は、スズキの環境問題に対する企業姿勢を明確にした。売れれば環境問題など関係ないといった設定で、アイドリングストップ機能さえも装備されていない。マイルドハイブリッドシステムを搭載し33.4㎞/Lというクラストップの低燃費を実現していても、こうした設定があるだけで、低燃費性能を追求するのは儲けるためだけであって、社会貢献は考えていないという企業であるように感じさせてしまう。スズキに対するマイナスのイメージを醸成する仕様だ。メインは、マイルドハイブリッドシステム搭載車だから大きな問題ではないという意見もあるようだが、こうしたグレードがいずれ大量に自社登録され、未使用車となり流通するのだから大きな問題だ。
マイルドハイブリッド車エンジン出力は、52ps&60Nmとなった。先代ワゴンRが52ps&63Nmなので、ややトルクが落ちている。ただし、モーター出力&トルクが大きくなっているので力強さは同等か、先代以上といったところだろうか。
ターボ車の出力は、64ps&98Nmとなった。最大トルクはムーヴより6Nmほど上回っていて、車重も800㎏とムーヴカスタムよりも軽いので、力強さはムーヴカスタムを上回ると予想できる。
安全装備も進化した。スズキの軽自動車に初採用となる歩行者検知式自動ブレーキであるデュアルセンサーブレーキサポートが用意された。この自動ブレーキは、単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを組み合わせた衝突被害軽減システム。誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能と、ヘッドランプのハイビーム/ロービームを自動で切り替えるハイビームアシスト機能(スズキ軽自動車初)がある。
多機能で交通死亡事故減に貢献できる高い安全装備ながら、すべてオプション設定になっている上に、エントリーグレードであるFAには装備することもできないという状況。軽自動車は、高齢者や初心者などが多く使うカテゴリーだけに、こうした安全装備は標準装備化を進めていくべきだ。
さらに、新型ワゴンRになっても、サイドエアバックやカーテンエアバッグは設定もされていない。ライバルのムーヴには、グレードによってオプション装着が可能になっている。スズキの安全装備は儲からない、という考え方はワゴンRの悪しき伝統となっている。
また、軽自動車初となるヘッドアップディスプレイも用意。走行中の視線移動が少なく、焦点の調整も少なくなるため、安全運転に寄与する技術だ。ディスプレイには、前方衝突警報/自動ブレーキ作動状況、車線逸脱警報、車速、シフトポジション、凍結警告、クルーズコントロール設定(ワゴンRスティングレー HYBRID T)、交差点案内(全方位モニター付メモリーナビゲーション装着車)を表示する。
新型スズキ ワゴンRのグレード選び。歩行者検知式自動ブレーキにサイド&カーテンエアバッグを標準装備化したワゴンRスティングレーHYBRID Tがお勧め!
そして、強面迫力系デザインとなったHYBRID FZは、マイルドハイブリッド機能を搭載したモデル1グレードのみ。これに、セーフティパッケージ(59,400円)を装備したい。
新型ワゴンRスティングレーで、ターボモデルのHYBRID Tは、デュアルセンサーブレーキサポートやサイドエアバッグ、カーテンエアバッグまで標準装備化され高く評価できるグレードになっている。価格は1,658,880円とやや高価だが、価値ある1台といえるだろう。
ワゴンRスティングレーの自然吸気エンジンを搭載したHYBRID X(1,488,240円)は、デュアルセンサーブレーキサポートは標準装備化されているもののサイドエアバッグ、カーテンエアバッグは設定がされていない。せめて、オプション装着できる設定であってほしいところだ。
ワゴンRスティングレーのエントリーグレードであるLは、アイドリングストップ機能もないので、購入リストから外したいグレード。デュアルセンサーブレーキサポートは、オプション装着が可能となっている。
アクティブセーフティとパッシブセーフティの安全装備レベルで判断するのであれば、ターボ車のワゴンRスティングレーHYBRID Tがお勧めだ。少々高価で、エコカー減税も免税レベルではない点がやや難点でもある。予算に余裕があるのならば、ワゴンRスティングレーHYBRID Tを選びたい。
そして、さすがにターボ車の1,658,880円は高価過ぎるというのであれば、自然吸気エンジンを搭載したワゴンRスティングレーHYBRID Xという選択もある。サイドエアバッグとカーテンエアバッグは装着できないが、全体的なバランスはよい。他社のカスタム系となるスティングレーは、ワゴンRのグレードの中ではリセールバリューも高いので、多少高価でもスティングレーを選んでおいた方が満足度は高い。
価格優先となると新型ワゴンR HYBRID FXにセーフティパッケージを装着した1,273,320円がお勧めだ。価格も130万円を切っていて買い得感もある。
スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレー価格
・FA 2WD 1,078,920円/4WD 1,202,040円
・HYBRID FX 2WD 1,177,200円/4WD 1,298,160円
・HYBRID FZ 2WD 1,350,000円/4WD 1,470,960円
■ワゴンRスティングレー
・L 2WD 1,293,840円/4WD 1,414,800円
・HYBRID X 2WD 1,488,240円/4WD 1,609,200円
・HYBRID T 2WD 1,658,880円/4WD 1,779,840円
スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレー燃費、スペックなど
代表グレード | スズキ ワゴンRハイブリッドFZ |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3,395×1,475×1,650mm |
ホイールベース[mm] | 2,450mm |
トレッド前/後[mm] | 1,295/1,300 |
車両重量[kg] | 790kg |
総排気量[cc] | 658cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 52PS(38Kw)/6500rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 60(6.1/4,000rpm |
モーター最高出力(kW/rpm) | 2.3〈3.1PS〉/1,000rpm |
最大トルク(N・m/rpm) | 50〈5.1kg・m〉/100rpm |
動力用主電池 種類 | リチウムイオン電池 |
ミッション | 副変速機付きCVT |
タイヤサイズ | 155/65R14 |
JC08モード燃費 | 33.4km/L |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 1,350,000 |
発売日 | 2017/2/1 |
レポート | 編集部 |
写真 | スズキ |
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