ホンダ は、人気のコンパクトハイブリッドカー「トヨタ アクア」 を一部改良し、12月2日から発売を開始する。

トヨタ アクアは、2011年12月末にデビュー。ヴィッツ 系のプラットフォームをベースに、2代目プリウス の1.5Lハイブリッドシステム を改良し搭載。その結果、35.4㎞/Lという世界最高燃費を叩き出した。さらに、重量物であるハイブリッド用電池をリヤシートしたに収納したことで、居住・積載スペースを犠牲にしないパッケージングとなった。また、この電池の設置場所による効果で、重量配分や低重心化が向上。シッカリとしたハンドリング性能も併せ持つ。

しかし、ハイブリッドモデルは高価でも売れる！ と、判断したトヨタは3代目プリウスのお買い得価格から、一気に方向転換。トヨタ アクアの価格は、かなり高価な価格帯へと突入した。ほとんど何らかのオプションを装着しなくてはならず、価格表にある金額よりも実際の購入価格は大幅に高くなっていた。そうなると、3代目プリウスとの価格差も近くなり、プリウスはマイナーチェンジで大幅な価格アップをして、アクアとのバランスを取るかたちになったほどだ。

そんな高価なトヨタ アクアだが、それでもとにかく売れた。月平均2万台以上という販売台数を記録。プリウスを除く他車モデルが1万台を超えるのがやっとといった中、人気軽自動車以上の販売台数を記録する。

しかし、2013年9月にホンダ フィットハイブリッド がフルモデルチェンジし登場。ハイブリッドとガソリン車を合わせたフィットの2013年10月の販売台数は、2万台を超えアクアから月間新車販売台数ナンバー1を奪取した。ホンダ フィットハイブリッドは、アクアを超える36.4㎞/Lを達成したことや価格が安いというのも売れている要因だ。

そんな状況を打破し、一度はわずかな期間だけ譲った世界最高燃費の座をトヨタ アクアは、今回の一部改良で奪い返した。

今回の改良では、エンジンのフリクションを低減するとともに、モーターやインバーターなどの制御を改良しハイブリッドシステムの効率を一段と高めた。その結果、燃費は37.0km/L(従来型比＋1.6km/L)へ向上。フィットハイブリッドを0.6㎞/L上回る実力をもった。

また、燃費向上だけでなく足回りのチューニングも変更。ゴツゴツしたカタメのサスペンションは、乗り心地重視へと変更。さらに、ハイブリッド車の魅力である静粛性を遮音材の追加などにより向上させている。

装備面では、ドアミラーにドアの施錠・解錠と連動して格納・復帰するオート機能と、フロントドアガラスに撥水機能を追加し利便性を向上。ヒルスタートアシストコントロールには、坂道を感知する機能を追加し、車両のずり落ちを緩和する性能を高めた。

このほか、外板色に新色ディープアメジストマイカメタリックを追加し全11色とするとともに、スピードメーター文字色を変更している。

ただ、アクアは、ツーリングパッケージ（16インチタイヤ）のメーカーパッケージオプション装着すると、最小回転半径は5.7mとなる。この最小回転半径は、アルファード＆ヴェルファイアといった大型ミニバン 並み。コンパクトカー なのに、この5.7mという最小回転半径はありえない状態で、小回りが苦手なコンパクトカーとなっている点は、未だ改善されていない。

今回の一部改良では、目先の燃費だけでなく、静粛性や乗り心地の向上など、全体に熟成されてきているといえるだろう。もちろん、これらの変更はライバルのフィットハイブリッドの存在があったからこそでもある。

ただし、アクアVSフィットハイブリッドの燃費戦争は、ある意味顧客不在のだまし合いに近い。まず、トヨタ アクアは、ベースグレードのままでは物足りないので何らかのオプションを選ぶことになる。これらのオプションを装着すると、オプションにより10㎏車重が上がる。車重が1,090㎏以上になると、アクアの燃費は33.8㎞/Lと一気に-3.2㎞/Lも落ちる。

こういった内容を理解するためには、諸元表の下にある小さな説明書きをしっかりと読み込まなくてはならない。

そして、ホンダ フィットハイブリッドも同様。エントリグレードとして設定されているハイブリッドグレードには、後席中央のヘッドレストが無い。さらには、40Lタンクが32Lへと小さくされるなど、徹底した小細工が施され車重は1,080㎏とし、燃費を36.4㎞/Lとしている。

一般的な売れ筋グレードで約43％を占めるLパッケージの燃費は、33.6㎞/Lとなり-2.8㎞/L燃費が下がる。スポーティなSパッケージに至っては、31.4㎞/Lまで下がり-5.0㎞/Lになる。フィットハイブリッドは、まだ諸元表の燃費欄にパッケージで燃費が違うことが明記されているが、アクアはひと目で分かるようになっていないのが大きな違いだろう。

これらの燃費スペシャルのようなクルマは、アクアやフィットハイブリッドだけではないのだが、完全に顧客無視の燃費競争といえる。こういった過度なだまし合いは、CMなどで燃費ナンバー1と言われると、盲目的に信じて販売店へ行くという顧客の行動から始まったとも言われている。

我々顧客側がわずかな燃費差にこだわった結果、技術革新が進みより良い燃費のクルマが増え、クルマを走れせることでの負担が減った。しかし、逆に顧客のだまし合いも始まっていて、それをクルマを買うときにどう見抜くかが重要になる時代になってきている。

　アクアの燃費向上と一部改良と同時に、アクアのラインアップに「トヨタ アクアG SPORTS(G's)」が加わった。このトヨタ アクアG SPORTS(G's)は、12月9日から発売される。

トヨタの“G's”は、「走りの味」「クルマの楽しさ」を提供するために、GAZOO Racingのテストドライバーがトータルチューニングを施し、「意のままに操れる」ハンドリング性能を実現。さらに、架装工程のインライン化などにより、カスタマイズモデルであってもお買い得な価格設定を実現したスポーツコンバージョン車シリーズだ。

トヨタ アクアG'sは、「走りの楽しさ」「操る喜び」を追求するため、コイルスプリングやショックアブソーバーに専用チューニングを施したサスペンションを採用。車高は約25mmダウンする。さらに、補強材や溶接スポット打点の追加によりボディ剛性を向上させたほか、専用17インチアルミホイールや高性能タイヤを採用している。元々、アクアは重い電池をリヤシート下に収納して、前後重量配分や低重心化に優れている。通常のアクアもハンドリング性能などは良好なので、これらのチューニングが施されたのであれば、想像を超えるようなハンドリングマシンに変貌していると思われる。

もちろん、エクステリアもG's のこだわりである、専用デザインのバンパー(フロント・リヤ)を採用し、ひと目でノーマルのアクアとの違いをアピールする。G'sエンブレムをフロントフェンダーならびにバックドアに配したほか、フロントLEDイルミネーションビームやブラック加飾のヘッドランプなどにより、知的な躍動感を表現した。

インテリアは、運転席および助手席にG'sエンブレム付専用スポーティシートを装着。シート表皮には、アルカンターラを採用し、滑りにくさと高級感をアピール。また、シルバーステッチを施したシフトノブやアームレスト付センターコンソールボックス、ラメ入りピアノブラック塗装のステアリングホイールやパワーウインドウスイッチベース、アルミ製のペダル(アクセル・ブレーキ)などにより、スポーティ感を演出している。

トヨタ アクアG'sのベース車は、アクアGグレード。トヨタ アクアG'sの価格は、222万円でアクアGの187万円に対して35万円高となっている。これだけの専用装備が施されて、35万円高はかなりお買い得と言える。パワーユニットなどの変更はないものの、ハイブリッドホットハッチの誕生だ。

■トヨタ アクア価格
L　1,700,000円
S　1,810,000円
G　1,870,000円
Gブラックソフトレザーセレクション　1,950,000円
G's　2,220,000円