プジョー2008に搭載されるエンジンは、新開発の直列3気筒1200ccで、208に搭載されたのと同じもの。気筒数を少なくして排気量のダウンサイジングを図ると同時に、エンジンの軽量コンパクト化も同時に達成した。こうした手法は最近のヨーロッパで多くのメーカーが採用している。

プジョー ・シトロエン ・ジャポンでは、このエンジンとETG5と呼ぶシングルクラッチの新トランスミッション、さらにはスタート/ストップ機構(アイドリングストップ機構)を組み合わせて新世代のパワートレーンを作っている。ヨーロッパではピュアテックと呼ばれる新機構だ。

他のメーカーでは、ダウンサイジングしたエンジンにターボを装着してトルクを稼ぐのが普通だが、プジョー・シトロエンは自然吸気のままで小排気量エンジンを搭載している。

当然ながら、プジョー2008の動力性能は控えめな数値にならざるを得ない。60kW/118N・mの実力だから、今どのエンジンとしては相当に非力な印象といっても良いくらいだ。しかも2008はSUV感覚のボディなので208に比べて50kg〜70kgくらい重い。大人一人分くらいの重さの違いがあるから、乗る前にはちゃんと走るのかなという懸念を感じていた。

ところが、実際に走らせてみると普通に良く走る感じだった。とりたてて重さに負けている感じはなく、余裕十分とまでは言えないものの、必要十分な動力性能だと思った。

また3気筒エンジンは、ともすれば余分な振動が発生しやすいのだが、それもうまく抑えられていた。まあ最近は、たいていの3気筒エンジンが良くできているから、余分な振動がなくて当たり前の時代になっている。3気筒であることが分かったら失格だ。

　プジョー2008に搭載された新ミッションであるETG5は、なかなか具合が良かった。シングルクラッチのトランスミッションというと、ほかのプジョー・シトロエン車やスマート、up!など、ヨーロッパでは幅広い車種に採用されている。そして、どのクルマでも変速時のトルク抜けが大きな欠点とされてきた。

それがプジョー2008に搭載されたETG5では、相当にスムーズな変速を示すようになっていた。これまでのシングルクラッチの常識を破るといっても良いくらいにスムーズな変速を見せるのだ。

日本には、デキの良いAT車やCVT車がたくさんあって、滑らかな変速フィールはごく当たり前のことになっている。だから、日本車に比べたらETG5もまだまだといった感じが残るのだが、これまでのシングルクラッチタイプのセミATと比べると、格段に良くできている。

変速時のエンジンとトランスミッションの総合制御がシングルクラッチでもできるようになったことが、この変速フィールにつながったのだろうが、事前にあまり期待を持たずに乗ったこともあって、実際に乗ったときの印象はとても良かった。

強いていえば、発進時に少し気を使って発進することが必要だが、それさえ遵守したなら、走り出した後は普通のAT車に乗るのと変わらない感覚である。それくらいに良くできているので、高く評価していい。

また、スタート/ストップ機構も、プジョー・シトロエンとしては今回が初で、今さらという感じのタイミングでの設定ながら、燃費に貢献するようになった。後から出てきたことが有利に働いたのか、再始動時の振動や騒音も気にならず、なかなか良い仕上がりだった。

価格は試乗したプレミアムが246万円、上級グレードのシエロが270万円の設定だ。直接的なライバル車と目されるルノー・キャプチャーが、ターボ仕様の1.2Lエンジンと6速のデュアルクラッチを搭載して249.8万円と259.8万円の設定だから、価格競争力の面ではやや厳しい感じである。

＜プジョー2008価格＞
・2008 Premium　2,530,000円
・2008 Cielo　2,780,000円

＜プジョー2008スペック＞