アウディA3 スポーツバックがフルモデルチェンジを受けた。アウディA3は基本プラットホームをフォルクスワーゲン ゴルフ と共用するとともに、MQBと呼ぶモジュラー開発・生産システムで共用化されている部分が多い。それだけに、アウディA3としてはゴルフとの個性の違いをどれだけ明確にできるかが問われることになる。

外観デザインは、いかにもアウディらしいもの。シングルフレームグリルを継承するなど、アウディらしさは明快だ。ただ、従来のモデルに対してあまりにも代わり映えがしない感じを受ける。

オーナーならすぐに違いを見分けるだろうし、並べてみれば違いも分かるが、一般のユーザーにはすぐに見分けられないのではないだろうか。もう少し変化をつけられなかったものか。

A3スポーツバックのボディサイズは、心持ち大きくなったが、ほぼ従来と同じサイズにとどめられている。ホイールベースを延長した室内空間を拡大したが、全長はホイールベースほどには延びていない。ボディをむやみに大きくしないのは歓迎だ。

搭載エンジンは、FF車に2種類の1.4Lエンジンを用意。また4WD 車には1.8Lエンジンが、さらにS3には2.0Lエンジンが搭載されている。いずれも直噴でインタークーラー付きターボを装着したTFSI仕様のエンジンだ。

　A3スポーツバック1.4TFSIは、ゴルフと変わらない感覚の走りをもつ。試乗したのは2機種あるうち気筒休止システムのないベースモデルだったが、90kW/200N・mの動力性能を持つ。低速域から余裕あるトルクを発生するエンジンなので、走らせているとこれで十分という気持ちにさせられる。アウディらしいスポーティさという点では物足りなさを感じる人もいるだろうが、特に走りを求める人でないならこれで十分だ。

シリンダー・オン・デマンドと呼ぶ気筒休止機構の付いた1.4Lエンジンは、103kW/250N・mへと動力性能が向上する。このモデルには試乗できなかったが、装備の差はともかく燃費の差はほとんどないので、多くのユーザーにとってはベースモデルで十分という印象だった。

アウディらしいスポーティさを求めるのなら、1.8Lエンジンを搭載する1.8TFSIクワトロを選ぶべきだ。1.8Lの直噴ターボ仕様エンジンの動力性能は132kW/280N・mを発生し、ベースグレードとの動力性能の差は明確。このエンジンを搭載したモデルなら余裕十分走りが楽しめる。

1.4TFSIと1.8TFSIクワトロでは、エンジンの違いに加えて駆動方式の違い、装備の違いが加わって、価格差が85万円に達するので、簡単に1.8TFSIクワトロを選ぶわけにはいかないが、走りの魅力を考えたら、このモデルがお勧めである。

　新型アウディA3では、インフォテイメント機能が大きく向上した。MMIベーシックが全車に標準装備されたほか、オプションを含めれば車内で8台の端末にWiFi接続が可能になり、またグーグルアースやグーグルストリートビューを取り込んだ表示が可能となる。

この新しさは特筆できるポイントだが、クルマの魅力がクルマ本来の魅力から離れた部分で語られるような感じになるところが微妙なところ。次世代のクルマには、走る、曲がる、止まるのほかに、“つながる”機能が求められるのは理解できるが、何となく複雑な気持ちである。

■アウディA3スポーツバック価格
Audi A3 Sportback 1.4 TFSI ¥3,080,000
Audi A3 Sportback 1.4 TFSI cylinder on demand ¥3,470,000
Audi A3 Sportback 1.8 TFSI quattro ¥3,930,000
Audi S3 Sportback ¥5,440,000