アメリカン・スペシャリティカーを代表するのがマスタング。アメリカンドリームを象徴するクルマとして、実に45年に及ぶ歴史を持つ。途中で一時的に途
切れたこともあったが、2005年(日本では2006年)からの現行モデルは6代目に当たり、初代モデルを彷彿とさせる外観デザインを採用して注目を集めた。
ロングノーズ・ショートデッキのエクステリアデザインは正にマスタングそのものといった感じであり、ランプ回りのデザインなど細部に至るまでマスタング
らしさを継承して作られている。初代モデルを彷彿させるといっても、空力特性への配慮など現代風のアレンジが加えられており、現代のマスタングとして作ら
れている。
インテリア回りも同様で、左右対称のデザインに仕上げられている点などは初代モデルと共通だし、3本スポークのステアリングホイールも初代モデルそのま
まといった感じである。メーターも文字盤もクラシカルなイメージでまとめられている。

　今回の45周年記念特別仕様車は、V8 GTクーペ・プレミアムをベースとしたもので、用意された専用の仕様はグラスルーフとHDDナビ。クーペボディの美しいと評価していい
ルーフラインを保ちつつコンバーチブルを思わせるような開放的で明るい室内空間を作る固定式のグラスルーフは、安全性にも配慮して合わせガラスを採用している。マスタングとしては初採用のガラスルーフだという。またHDDナビは最新の地デジ対応のナビとされている。
走りについては基本的に従来からのマスタングと共通で、特に変更を受けていない。搭載されるV型8気筒4.6Lエンジンは、V8ならではの低くて太い排気音が特徴。これもマスタングらしさを象徴するもので、ドッドッドッといった排気音がお腹に響く感じだ。同時に排気量に見合う力強い低速トルクによって余裕の走り
を見せる。

　アクセルを踏み込めば馬力換算で304psに達する224kWのパワーによって豪快な加速フィールを味わうことができる。このV型8気筒エンジンは機構的にはシンプルな3バルブのSOHCながら、吹き上がりの滑らかさはまずまずの印象。アクセルの踏み込みによってエンジン音や排気音とともに力強いパワーが盛り上がっていく感じは、古典的というか、古き良き時代からのアメリカ車のものだ。
電子制御5速ATは現代のクルマであることを示すもので、変速フィールはそれなりに好感の持てるもの。ショックの少ない滑らかな変速を実現する。ややローギアードに設定された各ギアが、重量級のボディを力強く前方に押し出していく感じで、豪快な加速感を演出している印象があると評価していい。
45周年特別仕様車の価格は498万円で、ベース車に対して38万円高の設定。グラスルーフとHDDナビを考えたら十分に割安な価格設定であり、今の時点でマスタングを買うなら断然45周年記念特別仕様車が有利。45台の限定なので、欲しいなら早めに対応することだ。

代表グレード	マスタング V8 GT クーペ 45TH Anniversary
ボディサイズ［mm］（全長×全幅×全高）	4765x1880x1385mm
車両重量［kg］	−
総排気量［cc］	4606cc
最高出力［ps(kw)/rpm］	304ps(224kW)/5750rpm
最大トルク［kg-m(N・m)/rpm］	44.2kg-m(433N・m)/4500rpm
ミッション	電子制御5速AT
10・15モード燃費［km/l］	−
定員［人］	4人
税込価格［万円］	498.0万円
発売日	2009年1月21日
レポート	松下 宏
写真	森山 良雄