ホンダS660(エスロクロクマル)試乗記・評価 もどかしい自主規制枠だが、使いきれるパワーは好感度大

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【ホンダ】2016/02/17

 

 

ストリートでは不満の無いパワーだが・・・

ホンダS660(エスロクロクマル)

ホンダS660 の搭載エンジンは、直列3気筒のDOHCターボ仕様で、47kW/6000rpm、104N・m/2600rpmのパワー&トルクを発生する。軽自動車 自主規制で動力性能が抑えられているので、数値的にNシリーズのものと変わらない。

かつて、レジェンド が280psという登録車の自主規制枠を破ったように、S660でも軽自動車の自主規制枠を破るのではという期待も一部にあったが、残念ながらそれは実現しなかった。ホンダは昨年、リコール問題などがあったので、国土交通省に睨まれるようなことはできず、自主規制枠の突破はできなかったのかも知れない。

ホンダS660には、プロトタイプ車に袖ヶ浦のサーキットで試乗したのを皮切りに、高知県の公道や鷹栖のテストコースなど、さまざまなシチュエーションで試乗している。サーキットやテストコースなど、速度制限の制約を受けないシーンで走らせると47kW(64ps)のパワーでは不足し、もっとパワーを、という感じになったが、一般道での試乗ではそこまでを求めることはまずなかった。

ただ、S660では箱根ターンパイクを走っていない。急な上り坂が続くターンパイクを走らせたら、やはり47kWで打ち止めになることに不満を感じるかも知れない。

まあ、エンジンはパワフル過ぎて扱いにくく感じるより、手の内に入るパワーでそれを使い切れるようなクルマのほうが絶対に楽しい。単にパワーだけを求めるのは考えものである。

ホンダS660(エスロクロクマル)
ホンダS660(エスロクロクマル)
ホンダS660(エスロクロクマル)
ホンダS660(エスロクロクマル)

 

絶妙のシフトフィールをもつ6MT

ホンダS660(エスロクロクマル)

 運転席の助手席の間の後方には、上下にスライドできる小窓が備えられていて、これを開けるとエンジン音や排気音などが大きく入ってくる。特にアクセルから足を離したときに、ブローオフバルブが発生するプシュという音が聞こえなかなか良い。

トランスミッションは6速MT、7速マニュアルモード付きCVTともに良かった。6速MTは前述のように短いストロークのシフト操作できびきびと決まる感じで、1速から5速までのギア比がクロスしていて、シフトアップもシフトダウンもスムーズで楽しい。このシフトフィールは、ぜひとも実際に味わって欲しい。

CVTは、7速のマニュアルモード付きでパドルシフトで操作できる。これまたとても具合が良い。しかも標準モードのほかに、スポーツモードが設定されていて、スポーツモードで車速に対して高めの回転数を維持し、アクセルワークに対してスロットルの開度を大きくしている。パドルシフトの操作時の変速時間も短く設定されている。なので、CVT車でもけっこう楽しい走りが得られるのだ。

ホンダS660(エスロクロクマル)
ホンダS660(エスロクロクマル)
ホンダS660(エスロクロクマル)

 

 

価格は高いが、それ相応の価値がある!

ホンダS660(エスロクロクマル)

 ホンダS660が真価を発揮するのはコーナリング時だ。ホンダの関係者は、S660のコーナーでの走りを「スッとノーズが入る、ピタッと路面に張りつく、グッと踏ん張る、ガツンと立ち上がる」という4拍子で表現していたが、正にその通りの走りを実現する。

エンジンを後部の中心に近い位置に搭載するMRの駆動方式のため、コーナーでの挙動は素直で回頭性に優れている。ロックトゥロックが2.6回転ほどのステアリングを操作すると、それに合わせてごく自然な感覚で向きが変わり、同時にしっかり路面をとらえながら安定した姿勢でコーナーを抜けていく。

これは内側のタイヤにブレーキを効かせるアジャイルハンドリングシステムと呼ぶ機構が全車に標準装備されていることが大きい。いわゆるトルクベクタリング機構だが、口惜しいことにそれが効いているのを全く実感できない。ただ単に自分の運転がうまくなったかのように思えるだけなのだ。

それにくらいに自然なフィールで電子制御が入ることで、S660のハンドリングはとても気持ち良いものになる。かなり硬めにセッティングされた足回りも、それなりにストロークするサスペンションによって、不快な乗り心地にはなっていない。

S660は走りを楽しみたい人に最適な1台といえる。専用の生産ラインで作られていて、1日の生産台数が40台から48台に引き上げられたにしても、生産上の制約が大きく、今の時点で注文してもまだまだ長い納車待ちが発生することになりそうだ。

また、価格も相当に高い。上級グレードのαには218万円の価格が設定されている。いくつかのオプションを装着したら購入予算は軽く250万円を超える。値打ちモノのクルマであるのは確かだが、軽自動車を買う予算としては相当に大きなものになるのも確かである。

ホンダS660価格

ホンダS660(エスロクロクマル)

ホンダS660価格
・α 6MT 2,180,000円/CVT 2,180,000円
・β 6MT 1,980,000円/CVT 1,980,000円

ホンダS660特別仕様限定車価格
・CONCEPT EDITION 6MT 2,380,000円/CVT 2,380,000円

 

ホンダS660燃費、スペックなど

代表グレード ホンダS660 α 6MT
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 3.395×1.475×1.180mm
ホイールベース[mm] 2,285mm
トレッド前/後[mm] 1,300/1,275
車両重量[kg] 830kg
総排気量[cc] 658cc
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] 64PS(47Kw)/6000rpm
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 104(10.6/2,600rpm
ミッション 6MT
タイヤサイズ 前:165/55R15 後:195/45R16
JC08モード燃費 21.2km/L
定員[人] 2人
税込価格[円] 2,180,000円
発売日 2014/4/2
レポート 松下 宏
写真 編集部

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