マツダ i-ACTIV AWDなど雪上試乗記・評価 乾燥舗装路では分からなかったGベクタリングコントロールの効果やi-ACTIV AWDの実力が雪道で明確に!? [CORISM]
■雪上ではハッキリ分かったGベクタリングコントロール効果
北海道の剣淵町にあるマツダ の冬季試験場で開催された雪上試乗会に参加し、さまざまな雪上ドライブを楽しんだ。
マツダ の剣淵試験場は、冬季に閉鎖される剣淵町の町道を借り切って試験場にしているもの。コースの一部はマツダの所有だが、大半の部分は夏場に町道として使われている道路である。なので一般道そのままの試験ができるのが特徴だ。剣淵試験場は、今年で30周年を迎えるとのことで、昭和の終わり頃から使われている。
●Gベクタリングコントロール(GVC)
最初に試したメニューはGVCの効き味を雪上で試すコースだ。アクセルワークやステアリング操作に応じて微妙にエンジンのトルクを絞って無駄な挙動を抑制するGVCは、乗っているユーザーがその効果を実感しにくいのが特徴ともいえる。つまり、それだけ自然に制御が行われているためでもある。
今回は雪上で特別にオン/オフスイッチを設けたデミオ の2WD の試乗車に走らせたが、オンとオフを切り換えながら低速でパイロンスラロームなどをすると、その効果がとても良く実感できた。
GVCをオフにした状態で走らせると、時速20km程度の速度であっても、パイロンで切り返すときに後輪が微妙に滑る感覚がはっきりと感じられるのに、GVCをオンにするとそれが感じられなくなる。言ってみれば、オフとオンでは2WDが4WD になったよう感じの走りになる。この違いは大きい。
さらに、一般道を模した対向車もあるような雪道でもオン/オフを切り換えながらアテンザ の2WDや新型CX-5 のAWD (マツダでは4WDと呼ばずAWD=iアクティブAWDと呼んでいる)などを走らせた。
アテンザでは、同じシーンをGVCオフで走ると修正操舵が必要な部分でも、GVCをオンにするとその必要がなくなることで、GVCの効果が体感できた。CX-5のAWDは、基本性能が高い上にAWDの操縦安定性もあるためにGVCの効果が分かりにくくなるが、それでもオン/オフを繰り返しながら走ると微妙に利いているのが実感できた。
ドライの舗装路では分かりにくいGVCの効果も、雪道では高い効果が発揮されていることが分かりやすくなる。改めてGVCのシステムの良さが確認できた試乗だった。
最近は燃費を向上させるために転がり抵抗の低いタイヤが装着されることが多く、操舵感が希薄になりがちな傾向にあるが、GVCによってトルクを絞ることで、荷重が移動して接地感が増す。これが安定性の向上につながるのだ。
とはいえ、一般のユーザーが乗る市販車は、全部にGVCが付いていてオンのままで走ることしかできない。オン/オフの切り換えによる効果の実感ができないことは、GVCの商品性という面から考えたら、どんなものかとも思う。
しかし、走りを良くするのがGVCだから、それをオフにして走ることに意味はない。あえてオン/オフ機能を設けるまでもない。ただ、インジケーターなどで、GVCが利いているかどうかが分かるような表示はあっても良いのではないかと思った。
■FFでも想像を超える操縦安定性を誇る新型CX-5。 i-ACTIV AWDは極めて高い安定性を披露
●新型マツダ CX-5試乗
新型マツダCX-5の2WDとAWDで同じコースを走って商品性を評価するコースでは、夏場に一般道として使われている部分でも試乗した。
新型CX-5は、2WDもAWDもGVCが全車に標準装備されているので、雪道での走行性能は基本的に高いものがある。特に2WDでもけっこう良く走るのは前述の通りだ。
それ以上に良く走るのがAWDだ。iアクティブAWDは、常時後輪にもわずかな駆動力を伝達しながら走り、微小なスリップを検知するとドライバーがスリップを感じるよりも先に駆動力配分を変化させ、安定した走りを実現する。
新型CX-5のAWDシステムとしては、新たに低粘度オイルの採用(CX-3 から)やボールベアリングの採用で抵抗を減らし、よりスムーズで燃費の良いシステムにしていた。マツダではスリップロスの少ないAWDの利点を生かし、2WDを超える燃費のAWDを目指しているという。
現時点では、まだ2WDの燃費を超えていないが、AWDの長所を生かすことで、重量増やメカニカルロスによる燃費の悪化を上回る燃費の向上を実現するという意気込みで開発を続けている。
実際に新型CX-5のAWD車を雪道で走らせた印象は、極めて安定性の高いクルマだった。通常の走行シーンでは、余分な操舵の修正を必要としない安定した走りを示すし、コーナーでの安定性にも優れていたからだ。
■ i-ACTIV AWDは、ロックモードなど切替スイッチや作動インジケータが無いのが疑問だが、燃費やトラクション性能に優れる
●iアクティブAWDの操縦安定性
今回の試乗では2WD(デミオのe-4WD)とCX-5のAWDを乗り比べるコースも設定されていた。当然ながら、CX-5のiアクティブ4WD の良さが際立つ印象になった。
路面に傾斜があるようなシーンでは、デミオを2WDの状態で発進しようとしてもタイヤが空転するだけだった。そうしたシーンでも、CX-5のAWDは後輪に必要駆動力を早めに伝達するので、何もなかったかのようにスムーズな発進が可能だった。
あるいは上り坂で、ステアリングを切った状態での発進も実にスムーズにこなす実力を持っていた。またコーナーの手前で路面が磨かれてツルツルになったようなシーンでも、簡単に破綻しない粘り強い走りを示していた。
最もクリティカルなシチュエーションは、上りの傾斜のある雪の深い脇道から、一時停止して本線に出ようとするシーンだった。ここでもデミオを2WD状態で走らせたのでは発進することができず、スイッチを入れてe-4WDにしてもやっと発進できる程度だが、このシーンでもCX-5のAWDは普通に発進できた。
マツダのiアクティブAWDは、電子制御式の4WD。センターデフ式ではない電子制御式は本物ではないとか、あるいはモード設定のないiアクティブAWDに対し、緊急時の脱出用にロックモードが必要だろうという意見があるのも事実である。
マツダではステアリングやアクセルの操作から、ドライバーの意図を先読みするとともに、道路環境の変化やタイヤのスリップを早期に把握することで、ロック機能を必要としない4WDを実現したという。
ロックモードがない点については、必ずしも全面的に同意することはできないが、実際に走らせてさまざまなシチュエーションで試しても、iアクティブAWDの良さは際立っていた。少なくとも、今回の試乗の範囲では、必要なシーンで必要な駆動力が得られ、十分な走破性を発揮していた。
■ マツダCX-5価格
・20S FF 2,462,400円
・20S PROACTIVE FF 2,689,200円
・25S 4WD 2,689,200円
・25S PROACTIVE 4WD 2,916,000円
・25S L Package FF 2,986,200円/4WD 3,213,000円
・XD 2WD FF 2,775,600円/4WD 3,002,400円
・XD PROACTIVE FF 3,002,400円/4WD 3,229,200円
・XD L Package FF 3,299,400円/4WD 3,526,200円
■ マツダCX-5燃費、スペックなど
定員[人]5人
代表グレード | マツダCX-5 XD PROACTIVE 4WD |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,545×1,840×1,690mm |
ホイールベース[㎜] | 2,700㎜ |
車両重量[kg] | 1,650kg |
総排気量[cc] | 2,188cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 129〈175〉/4,500 |
エンジン最大トルク[N・m(㎏-m)/rpm] | 420〈42.8〉/2,000 |
ミッション | 6速AT |
JC08燃料消費率[km/L] | 17.6km/L |
価格 | 3,229,200円 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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