ミニ ペースマン(MINI PACEMAN)新車試乗評価の目次
SUV+クーペという斬新さはミニだからこそできたスタイリング
ミニのラインナップにSAC(スポーツアクティビティークーペ)として、新型ミニ ペースマンが加わった。かつては、シンプルなバリエーションで効率良く販売を伸ばすことで知られていたミニも、今や全部で8種類のモデルをラインナップするようになった。
新型ミニ ペースマンは、クーペタイプのボディを持つ点でミニクーペと重なる部分もあるが、ミニクーペがミニのハッチバック車をクーペ化したのに対して、ペースマンは4ドア車のクロスカントリーをベースに2ドアクーペ化した点の違いがある。
このためミニ クーペが乗員2名であるのに対し、ミニ ペースマンは4名乗車が可能。似たようなクーペと思うかも知れないが、実は使い勝手に大きな違いがある。
外観デザインは、ひと目でミニと分かるもの。ただ、クロスカントリーをベースにするだけに、全幅が拡大された3ナンバー車だ。サイズ感に戸惑いを感じる部分はあるものの、後方に向けてルーフが下がっていくのはミニクーペと似た印象がある。
リヤビューは、ミニらしさに加えて新しい要素が盛り込まれている。横長にデザインされたテールランプや、後部にPACEMANの車名エンブレムが入る点が、ミニとして初めての設定という。
SUV(SAV)とクーペの融合という点で、レンジローバーのイヴォークと似た雰囲気を感じるかも知れないが、イヴォークは格段に大きく、また本格SUVである点に明確な違いがある。
インテリアは、ミニらしさが凝縮
インテリアもミニらしいもので、インスト中央の上部に大きなメーターが配置されるのを始め、シートから各種スイッチ類のデザインに至るまで、ミニのデザインが採用されている。その中で、ドアの内張り部分にペースマン専用の形状が採用されたり、あるいはクロスカントリーと共通のセンターレールが配置されるなどの特徴を持つ。
逆に操作系が変わって、普通のクルマと同じようになったのはパワーウインドーのスイッチで、インストセンター側からドアのアーム部分に変更されている。操作しようと思う部分に近い位置にスイッチがあったほうが良いのは言うまでもない。ほかのモデルもいずれは、この位置に変更してほしい。
もうひとつ、ステアリングホイールの向こう側にアイフォンが取り付けられているのも特徴だ。それも伸びたアームの先端に取り付けられている。アイフォン+ナビアプリによってカーナビの役割を果たすような設定だ。
センター部分にカーナビを装着できないための設定で、ある意味で苦肉の策ともいえるもの。特にほめられた仕様とはいえないが、自分でアイフォンを固定してなどということを考えると、このような設定にして、センターコンソールのスイッチで操作できるのは良い。
2ドアなので、後席への乗降性は決して良いとはいえないが、乗り込んでしまえばけっこう広い空間がある。クロスオーバーに比べてルーフが低くなった分だけ多少の圧迫感はあるが、乗車定員が4名なので左右方向に窮屈さを感じることがない。
ミニよりはやや高めながら、低めの着座位置に座ると、ミニに乗り込んだという気分になる。またスターターボタンからサイドブレーキレバーに至るまで、ミニ独特の操作系が採用されている。初めてのユーザーは慣れるのに少し時間がかかるが、オーナーになればすぐに自分のものになる。
気持ちよさで選ぶなら、やはりターボモデルがおすすめだ!
ミニ ペースマンの搭載エンジンは、ほかのミニモデルと共通。直列4気筒1.6Lの直噴仕様で、自然吸気エンジンとターボ仕様の2機種が用意される。自然吸気エンジンの搭載車もクーパーなので、90kW/160N・mを発生するパワフルなチューンが施されたタイプが搭載されている。またクーパーSには135kW/240N・mを発生するターボ仕様エンジンが搭載され、FFと4WDのオール4の設定がある。
なお、ペースマンの発売後に、よりパワフルな仕様のターボエンジンを搭載するジョン・クーパー・ワークスも追加設定されている。
やや大きめのボディを持つだけに、ペースマンの車両重量はちょっと重い。単純に比較するなら、ミニ クーペに比べるとざっと100kgほど重くなっている。ミニONEに搭載されるベースエンジンの設定がないのはそのためもあるだろう。
少々ボディが重くなったとはいえ、クーパー用のエンジンであれば十分な実力がある。際立ってスポーティな走りとはいえないが、クーペモデルにふさわしい元気の良い走りが得られると思っていい。6速ATの変速フィールも上々のものだ。
ミニのハッチバックが、低い着座位置でゴーカート感覚の走りを実現するのに比べると、クロスカントリーをベースに作られたペースマンは着座位置がやや高いが、それでもペースマンを走らせていると、しっかりしたボディ作りなどが、ゴーカート感覚を感じさせる部分がある。ペースマンもやはりミニの範疇に入るクルマなのだ。
ターボ仕様エンジンを搭載したモデルは、クーパーSのオール4に試乗した。こちらは4WDであるためFFのクーバーに比べるとさらに100kgほど重くなっているが、それでも動力性能の向上幅のほうが大きい。パワーもトルクも自然吸気の50%増しなのだから、とても力強い走りが得られるのは言うまでもない。走りの気持ち良さという点では、ターボ仕様エンジンが勝っている。
また、すべてのグレードにMTが用意されているのも特徴。今となっては少数派であるMTの比率は10%を切ると見込まれている。効率が重視される自動車メーカーだが、そんな少数派に対しても、MTを用意しているのもミニの魅力のひとつだ。
乗り心地に関しては、タイヤサイズがクーパーの17インチに対して、ペースマン クーパーSオール4は19インチになる。空気圧も220に対して240と高めの設定となるため、乗り心地は当然ながらクーパーSのほうが硬い。ミニらしさという点ではクーパーSオール4なのだろうが、日常的な使い方を重視するならクーパーで良いというのが最終的な結論になる。
ペースマンの価格は、ドア数が少なくなるのでクロスオーバーに比べてやや安くなるのかと思ったら、逆に高くなっていた。クーパーで13万円、クーパーSオール4で10万円高く設定されている。つまりミニのラインナップの中で最上級シリーズの位置するのがペースマンというわけだ。ペースマンの持つ新しい魅力に共感できる人が選ぶクルマである。
新型ミニ ペースマン価格、燃費、スペックなど
・MINI Cooper Paceman1.6L直列4気筒 6速MT ¥ 3,120,000 6速AT ¥ 3,250,000
・MINI Cooper S Paceman1.6L直噴直列4気筒ツイン・スクロール・ターボ 6速MT ¥ 3,620,000 6速AT ¥ 3,750,000
・MINI Cooper S Paceman ALL4 6速MT ¥ 3,830,000 6速AT ¥ 3,960,000
代表グレード | ミニ クーパー ペースマン スペック |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,125×1,785×1,530 mm mm |
ホイールベース[mm] | 2,595mm |
トレッド前/後[mm] | 1,525/1,550mm |
車両重量[kg] | 1,360kg |
総排気量[cc] | 1,598cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 90kW(122ps)/6,000rpm |
エンジン最大トルク[N・m/rpm] | 160 Nm/4,250rpm |
ミッション | 6速AT |
タイヤサイズ | 205/60R16 |
JC08モード燃費 | 14.0km/L |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 3,250,000円 |
発売日 | 2013/3/2 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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