ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4試乗記と評価 避けて通れぬ電動化。新世代ミニの真価を問う
ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4試乗記・評価の目次
- 新境地を切り開いたミニ クロスオーバー
- ミニ クロスオーバーの魅力を倍増させたプラグイン・ハイブリッドシステム
- 十分な充電環境があれば、日常使いではゼロエミッション生活が可能
- 駆動方法を見事なくらいにコントロール。その乗り味は、きわめてスムース
- ミニの価値はドライバビリティにアリ! 思わず頬が緩む?
- 「退屈な未来のクルマは造らない!」ミニのメッセージを感じる1台
- ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4価格、燃費、スペックなど
- ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4画像集
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■新境地を切り開いたミニ クロスオーバー
「MINIって、昔と比べてすいぶん立派になったよね」
なんていう声が聞こえているが、もともとはイギリスメーカーだったMINIが1994年にBMWグループの傘下に入って早20年以上が経過。一目でMINIと分かる特徴的なデザインとクラフトマンシップが息づく内外装の巧みな作り込み、走りの気持ちよさといったアイデンティティは継承。そのボディタイプは2ドアのハッチバックのみならず、後席ドアを備えた5ドア、オープントップのコンバーチブル、SUVルックのクロスオーバー、2ドアSUVスタイルのペースマンなど、多彩に展開されてきた。
MINIの中で、最も背が高いクロスオーバーは、5枚ドアのボディに後席にスライド機構をもち、大人がゆったり座れるだけのゆとりと実用的な荷室を備えている。個性的なモデルでありながら、「家族の移動やレジャーで活躍するMINI」という新境地を開拓し、ユーザーの裾野を拡げてきた。
■ミニ クロスオーバーの魅力を倍増させたプラグイン・ハイブリッドシステム
今回紹介するMINIクロスオーバーは、2017年に2代目としてフルモデルチェンジが行われたもの。ボディは先代よりもひと回り大きくなり、全体のフォルムはSUV的な要素を強めて存在感が増している。少し変形した丸目のヘッドライトは、少し物憂げな表情を見せるあたりも、少し大人になった感じがする。
インテリアは、インパネ中央にナビや車両の情報を表示する丸形のモニターを配置しており、エアコンの吹出口はヘッドランプの形状に呼応するように、丸みを変形させたモダンなフォルムで描かれている。インパネ周りの加飾パネルにドアトリム、シートなど、自分好みにコーディネートが楽しめるカスタマイズパーツも豊富。更に、ユニオンジャックを丁寧に縫い上げたレザーシートなど、「MINI Yours」と呼ばれるコダワリのプログラムも設定されていたりする。
新世代のMINIをより一層魅力的にしているのが、パワーユニットだ。3気筒の1.5L直噴ターボ、4気筒の2L直噴ターボといったガソリンエンジンのほかに、2Lディーゼルターボエンジンを用意。さらには、今回ご紹介するプレミアムコンパクトSAVとして初となるプラグイン・ハイブリッド車「MINI Cooper S E Crossover ALL4」をデビューさせた。
「MINIもずいぶんハイテクになったんだね!」
と、驚くなかれ。確かに、クルマを走らせている実感をエンジンや振動でありありと伝えてくるアナログ感満点の昔のMINIも魅力的。だが、新時代のMINIはBMWグループの強みを生かし、新時代の息吹を感じる技術を用いて、MINIの走りの世界観を見事に表現してみせた。
プラグイン・ハイブリッド車に搭載されるユニットは、3気筒の1.5L直噴ターボエンジンに電気モーターと6速ATを組み合わせたもの。最高出力はエンジンだけでも136馬力、220Nmのトルクを発揮する。それに、モーターが88馬力&165Nmというパワーとトルクがプラスされる。
モーターのみで走るEV走行は、アクセルの踏み方やエアコンなどの使う状況にもよるが、満充電の状態であれば最長で約42.4km走行可能。最高速は124km/hまで。
ちなみに、バッテリーは200Vの普通充電でケーブルを繋げば、約3時間で満充電にできる。家や出先で充電しておける環境があれば、普段のドライブはモーター走行を活用して、ガソリンの消費量を極限まで抑えて走ることもできそうだ。まさに、新感覚でクルマと向き合えそうな一台。
■駆動方法を見事なくらいにコントロール。その乗り味は、きわめてスムース
じつは、このプラグイン・ハイブリッドシステムはBMW 225 xeに採用されているもので、すでに十分な実績がある。早速、走行モードをモーターとエンジンを自動的に連携する「Auto e Drive」を選んで走り出してみる。
その前に、スタートスイッチは他のMINIと同様にセンターコンソールの下にあるが、トグル式のスイッチをONにしてもエンジンは掛からず、静かにシステムが起動するだけだ。エンジンがブルンと始動した主張をしてこないあたりは、電動モーターでドライブする特別なクルマだと主張しているかのようで新鮮な感覚といえるだろう。
モーターの動力は後輪に伝達されるため、エンジンが始動しなければ、走り出しはいわゆるFRの状態になる。まるで、大きな手で後ろから押し出されるような動きは、とても滑らか。エンジンが掛からないので、圧倒的に社内は静かで振動を感じない。とにかくスムーズに走る。
さらに、アクセルを深く踏み込むと、モーターの動力に加えて、エンジンが始動して、前輪を駆動し始める。つまり、状況によって後輪駆動で走り、前輪駆動になる瞬間もあり、4輪駆動の状態でも走る瞬間があるということだ。
エンジン、モーター、ブレーキエネルギーを回収する回生ブレーキなどを伴う複雑な連携は、ともあれば身体が揺られたりして不快感を感じる。そのあたりの振る舞いは、プレミアムブランドらしく驚くほどスムーズだ。
その他、MAX EDRIVEモードは、徹底してEVモードを使い走行する。そして、SAVE BATTERYモードは、充電優先のモード。このモードを使用しているときは、基本的にエンジンで走行する。深夜に帰宅する場合など、郊外で十分に充電しておき市街地では、静かなEV走行するなどして使える便利な機能だ。
■ミニの価値はドライバビリティにアリ! 思わず頬が緩む?
3気筒の1.5Lターボエンジンは、ただでさえ十分なトルクがある。そこに、アクセルを踏んだ瞬間から力を生み出すモーターの特性が加わるから、ソノ気になれば相当に力強い。
車重はエンジンのほかに、バッテリーとモーターを搭載しているので、エンジンのみで走るクルマよりも重い。この重さが、乗り味の豊かさとして感じられて、段差を通過する時でも、ガタンとか、ブルブルといった嫌な振動を伝えてこない。基本的な骨格部分は相当しっかり作り込まれていて、足周りも仕事がしやすい環境になっているのだろう。
高速道路の走行では、まるでもっと大きな高級車に乗っているような抜群の直進安定性を発揮する。車線変更で姿勢の収まりがよく、背が高くても重心が低いのでふらつくようなことはない。
そうはいっても、優等生になりきらないあたりがMINIならでは。エンジンの回転が高まると、心地良いビート感を響かせて、クルマを走らせている実感を与えてくれる。
「MINIの価値はドライバビリティにアリ」
そんなメッセージが伝わってくるようで、思わず頬が緩む。
■「退屈な未来のクルマは造らない!」ミニのメッセージを感じる1台
走行時に回収したエネルギーや、コンセントから充電した電気を蓄えておくバッテリーは、後席下に配置されている。車外から後席に乗り込む時は、少しだけ座面が高いので「ヨッコイショ」と座る感じだが、おおむね乗り降りはしやすい。
プラグイン・ハイブリッド車は、駆動用バッテリーなどエンジン以外の装備が増え、荷室の使い勝手に影響を与えることがある。しかし、このプラグイン・ハイブリッド車は、荷室の奥行きや高さなど、日常使いにおいて十分な容量を確保している印象だ。
しかも、さすがに荷室の床下は使えないのではないかと思ったが、エンジン車と同様に床下収納が設けられていた。2代目MINI クロスオーバーで、遊びゴコロを表現したシートクッション「ピクニックベンチ」まで収められていてビックリ。そうしたポリシーにとことん拘って作り込んでくるあたりも、さすがはMINI!なのである。
さらに、後席の背もたれは40:20:40の3分割式でアレンジできる。全てのシートをフラットに倒してキャンプの荷物を積むのも良し、後席に2人座って、中央席だけ倒してトランクスルーで長尺物の搭載も可能という、臨機応変な使い方ができるあたりが嬉しい。
これからの未来、自然や社会をとりまく環境において、電動化はクルマづくりにおいて欠かせない要素となっていく。電動化されたクルマは、楽しくない! なんて、意見も少なからずあるのも事実。しかし、今回のMINIクーパーS E クロスオーバー ALL4の試乗では、
「未来のクルマでも、退屈なんかにしない」
という、MINIのメッセージが伝わってきた気がした。
■ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4価格、燃費、スペックなど
代表グレード | ミニ クーパーS E クロスオーバー ALL4 |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,315×1,820×1,595mm |
ホイールベース[mm] | 2,670mm |
車両重量[kg] | 1,770kg |
総排気量[cc] | 1,498cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 100(136)/4,400 |
エンジン最大トルク[N・m/rpm] | 220/1,400-4,300 |
モーター最大出力[kw(ps] | 65(88) |
システムトータル最高出力[kw(ps)] | 165(224) |
システムトータル最大トルク[N・m] | 385 |
総電力量(kWh) | 7.6 |
ミッション | 6速AT |
タイヤサイズ | 225/50R18 |
JC08モード燃費 | 17.3㎞/L |
EV走行換算距離 | 42.4㎞ |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 4,790,000円〜 |
レポート | 藤島知子 |
写真 | 編集部 |
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