【日産 新型 電気自動車(EV) プロトタイプ 新車試乗記】未体験フィールにドキドキ! 日産の最新電気自動車(EV)試作車にいち早く試乗した!

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【日産】2009/08/03

 

ガソリンを燃やして走る時代はもう終わり!

 「急速充電器のインフラ整備がどうだとか、航続距離がまだ少ないとか微妙なネガティブな要素なんてどうでもいいから、早く一般に売ってくれ!」と、ドキドキとした気持ちいい高揚感に溢れる日産の電気自動車(EV)に乗った後、とにかく強くそう評価したいのだ。
この日産の新型電気自動車(EV)は、 2010年秋に発売されるという。電気自動車(EV)は、もうすでに三菱からi-MiEV(アイミーブ)が発売されている。日産の電気自動車(EV)と大きく違うのは、i-MiEV(アイミーブ)が既存の軽自動車であるi(アイ)をベースにしてEVにしているのに対し、プラットフォームと呼ばれる車体の骨格部分から、EV専用に設計されている。そのため、もっとも重要で重いリチウムイオン電池の収納スペースを効率よく搭載できたり、車両の重量バランスの最適化や、室内のスペースをより広大にすることができた。
今回試乗したEVは、まだプロトタイプの状態。細かい部分では、まだまだ市販車の域には達していないが、そのパフォーマンスは素晴らしい。「ガソリンを燃やして走る時代はもう終わる」と思えるほどのものだ。

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ テスト走行中

試乗車はあくまでテスト用のプロトタイプ版だったが、加速フィールや運動性能といった走りのパフォーマンスについては極めて完成度が高かった。

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ エクステリア

プラットフォームは2010年市販予定の新型EV「リーフ」用のものを使用するが、車体は「ティーダ」をベースにワイドフェンダー化したものが使用されていた。

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ リアビュー

モータやインバーターをフロントに、ホイールベースの間に薄型バッテリーをそれぞれ搭載するため、後部のラゲッジスペースはガソリン車並みの空間を確保する。

スムース&パワフルな未体験フィーリング

 初めてEVに乗ったのなら、まずその未体験の加速フィーリングに驚くはずだ。アクセルをグッと踏み込むと、ガソリン車ならエンジンの音がブォーンと高まっていくのと同時に加速していくのに対し、EVをほぼ無音のままドンと加速する。とくにアクセルを踏み始めの数秒間の加速度は、ガソリン車の倍はあるのではないかと思うくらい速い。
驚きは続く。その加速感がしばらくの間、ほぼ無音のまま滑らかな加速が続く。ガソリン車なら、まさにエンジンは高回転で回り騒音は結構なもの。室内が静粛性に優れるのももちろんだが、車外音が少ないのもEVの特徴。全開加速をしているのにもかかわらず、外でいると騒音はタイヤの音と風切り音、そしてわずかにモーターの高周波の聞こえるのみ。世の中EVだらけになったら、街は相当静かになると実感した。
この走りを支えるモーターは、80KWの出力と280Nmというトルクを発揮する。注目したいのは280Nmというトルクだ。このトルクは、ガソリン車に換算すると3リッターエンジン並である。それもガソリン車なら、3〜4千回転というところまでエンジンの回転数を上げないといけないのに対し、EVはほぼ0(ゼロ)回転からからこのトルクを発生するのだ。強烈な加速ができるのは、このモーターの特性によると評価したい。
日産 新型 電気自動車(EV) プロトタイプ テスト走行シーン

スポーツマインド溢れる高剛性&低重心ボディ

 今回特に感動したのは、EVの運動性能。クルマの重心がとにかく低い。個人的な感覚で申し訳ないが、通常このクラスのクルマだと重心高がボクのヘソくらいにあるイメージ。日産EVの重心高は、ヘソよりかなり下でお尻の下あたりのイメージなのだ。そのため、クルマのコーナーリング性能が高い。まるでスポーツカー並みにスイッスイッと、よく曲がる。重心が低いため変なロール(クルマの傾き)も少ない。これは、重心が低いだけでなくEV専用車として開発されたプラットフォームに秘密があった。通常のクルマにはないインバーターやバッテリー搭載用のフレームが装備されていて、結果的にボディの剛性が上がっていることにも起因する。この日産EVは通常のFF方式だが、この走りができるのなら、ぜひFRでスポーツカーを! と思ってしまうほど楽しいと高評価なんだ。

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ プラットフォーム

新型EV専用プラットフォーム。バッテリーはホイールベース間の床下に配されフレームで囲まれた。低重心化に貢献するとともに剛性感の向上にも寄与する。

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ プラットフォーム フロア形状に合わせラミネート型リチウムイオンバッテリーの形状を変化させている点に注目

バッテリーはこのように搭載する。フロア形状に合わせ、ラミネート型リチウムイオンバッテリーの形状を変化させている点に注目。

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ 薄型ラミネート式リチウムイオン

奥が軽量・コンパクトで冷却性にも優れる日産独自の薄型ラミネートセル。これを複数枚で構成したのが手前のバッテリーパックのモジュールだ。

走行可能距離は100km前後!?

 そんな今までにない走りを提供してくれる日産EVの基幹となるリチウムイオンバッテリーは、NECとの共同開発。薄い平板形状のラミネート構造。冷却性に優れ、薄く軽いので構造上のレイアウト自由度が飛躍的に向上したのが特徴で24kWhの容量を持つ。
今のところこのバッテリー容量で走行可能距離は、アメリカのモード(USLA4モード)で160km以上とのこと。実際の走行可能距離は、100km前後ではないかと予想できる。日産では 100km走れば、日常用途の80%以上(グローバル)をカバーできるというが、充電せずに行ける距離は片道50km程度となる。微妙な距離といえばそれまでだが、一般ユーザーに普及が進めば、EVユーザーを顧客として取り込みたい企業がこぞって急速充電器や200V電源の提供を始めるだろうと僕自身は楽観視している。

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ 急速充電器による充電風景

急速充電器による充電風景。

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ 充電口はフロントに2口付く(左はコンセント、右は急速充電用)

充電口はフロントに2口付く(左はコンセント、右は急速充電用)

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ 日産では非接点型の充電方法についても検証中だ

日産では非接点型の充電方法についても検証中だ。

自社ディーラーに急速充電器を即時配置できないのか?

 それに対して、年度予算などに縛れてスピードの遅い自治体主体のインフラ整備を待っていたら、どんどん普及は遅くなるのではと思う。最初は多少不便さを感じるだろうが、一般ユーザーに早く販売し民間のインフラ普及を促すのも戦略の一つではないだろうか。とくに日産の地元となる神奈川県は、EVに関するインフラ整備も始まっているし、発売元の日産ディーラー全部に急速充電器を配備するだけでも安心感は違う。
少し危惧しているのは、日産自ら自社ディーラーに急速充電器をどれだけ設置するというインフォメーションがないことだ。EVを発売しおきながら自社のディーラーに急速充電器は置かずに自治体や他の民間企業をあてにしている、そんな都合のいいことを考えてはいないとは思うが・・・。
三菱は2010年度分の個人向け販売車両の予約を開始した。2010年度、日産はEVを5万台生産すると発表している。今のところ、2010年向けは海外と法人向けリースだという。単純に考えると、日産は三菱に対し1年間のビハインドを背負っている。これを挽回するには、5万台という生産力と販売網を生かし、イッキに個人向け販売を加速させることだと思う。ライバルは三菱だけでなく、トヨタ&ホンダは相変わらずハイブリッド車攻勢をかけてくる。現在のハイブリッド車ブームに打ち勝つには、EVの魅力をどれだけ一般に普及できるかがカギを握るのではないだろうか。

参考記事1(「CORISM」)「日産 リーフ」新型 電気自動車(EV) 新車情報
参考記事2(「CORISM」) 2010年デビューの電気自動車(EV)実験車両を公開

日産 新型 電気自動車 プロトタイプ 試乗レポート[写真は日産の新型EV「リーフ」のプラットフォームを使用したテスト車両]

written by 大岡 智彦
市販モデルの車名 NISSAN Leaf(日産 リーフ)
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4445x1770x1550mm
ホイールベース[mm] 2700mm
最高速度 140km/h
駆動方式 モーター前置き、前輪駆動
電池 ラミネート型リチウムイオンバッテリー
電動機 交流同期モーター
最高出力 80kW
最大トルク 280N・m
電池容量 24kWh
電池出力 90kWh以上
走行距離[US LA4モード] 160km以上
定員 5人
主要装備 ゼロ・エミッションEV専用ITシステム
レポート 大岡 智彦(CORISM編集部)
写真 日産自動車・CORISM編集部

[※スペックは全て「日産 リーフ」プロトタイプの数値]

(レポート:大岡 智彦

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