日産リーフ試乗記・評価の目次
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顧客の不安・不満を徹底的に払拭したマイナーチェンジ
日産の電気自動車(EV)であるリーフに対する力の入れようは、半端ではない。デビューからわずか2年でフルモデルチェンジに近い大改良によって、一充電走行距離を従来の200kmから228km(JC08モード)へと、14%向上させた。これは、主に航続距離に不満を感じる顧客への対策。そして、2013年4月には286,650円という異例の大幅値下げに踏み切った。この値下げは、電気自動車(EV)は高い、もしくは高くて買えないという顧客への対策。そして、5年または10万kmの範囲内でバッテリー容量計が9セグメント(初期は12セグメント)を割り込んだ場合、日産が無償でバッテリーを修理または交換し、以前に販売された車両もすべて対象した。これも長く使った時に、バッテリーが劣化し容量が減るのでは? と、不安に思っている顧客への対策だ。世界中をリードする電気自動車(EV)日産リーフは、徹底して顧客が思う不満や不安を解消している。
さらに、充電器の開発や充電インフラの整備促進、リチウムイオン電池の再利用など、EV普及のため、ありとあらゆる方法にチャレンジしている。これで、日産が発電までやり始めようものなら、もはや、自動車メーカーが自ら油田を探し、ガソリンを作り、ガソリンスタンドを建設するようなものだ。なせ、日産はそこまでやるのか。
現在、量産のEVは日産と三菱だけというのが現状で、日産はEVのリーディングカンパニーとなることを目標としている。ハイブリッド車で大成功をしたトヨタのように、完全にEVでイニシアチブを握った後の利益を考えれば、是が非でもリーフで失敗する訳にはいかないのだ。
そんなマイナーチェンジが施された日産リーフに試乗する。パッと見た目は、ホイールが変わったくらいで、ほとんど変化はない。どうせなら、もう少しスタイルも変えればなぁ、というのが第一印象だ。
見えるところを変えないで、見えないところが大きく変化してるの日産リーフのマイナーチェンジの特徴。ほとんど開ける人は少なくなったと思うが、ボンネットを開けてモータールームを確認すると、まったく違うものになっていた。マイナー前は、ギチギチに収まっていたユニットが、かなりコンパクトになっているように見えた。これは、モーター・インバーター・DC/DCコンバーターなど高電圧ユニットを一体化し、全体で容積30%、質量10%の大幅なサイズダウンを実現したからだ。
さらに、大幅な軽量化も施された。車両重量が1520kgから1440kgへと-80kgもダウン。今まで別に存在した充電器などのe-パワートレインを統合。一体化してモータールームに配置することで、-30kgの軽量化に成功した。また、バッテリーも見直されモジュールとケースの構造を合理化しることで、-20kg軽量化できた。
同時に、EVの心臓ともいえるモーターも新設計されている。新設計モーターは、使用されるレアアース(ジスプロシウム)の使用量を、性能を犠牲にすることなく従来比で約40%削減することにも成功。この新モーターと軽量化によって、加速力もアップ。0-100km/h加速は、3%短縮され一段と気持ちのよい加速が可能となったという。
やるじゃん、日産! と思いながら、リーフのアクセルを踏むと、あまり違いが感じることができない。少し軽くなったかなぁ、と先入観で思う程度だ。それよりもハンドリングが、よりスポーティさを増した印象だ。大きく重いバッテリーをフロアに積むので、低重心がもたらすハンドリングは、とてもスポーティなものだ。軽くなったことも影響しているのだろうか、かなりのペースで走ってもクルマがピシっと安定している。より、高いコーナリングピードで走れるイメージが強い。しかし、スポーツカーのようなハンドリングなのに、リーフは着座位置が高いので、妙な違和感を感じる。
ヒートポンプ式ヒーターにすることで、実燃費も向上!
航続距離が200kmから224kmとなり、前モデルから14%向上した。これは、燃費29.2km/Lの軽自動車、日産デイズが一気に33.3km/Lになるのと同じ比率。最近の軽自動車が、0.2km/Lでクラスナンバー1合戦を繰り広げている状態なのと比べてみると、大幅な進化といえる。
デビュー当時と同じ試乗コースで試したところ、電費は確実にアップしていた。マイナー前のリーフが、3目盛りほど残して戻れたコースをマイナー後のリーフは5目盛りほど残っていた。今までは、7km/h以上でなければ回生されなかったが、車速3km/hまで拡大した改良された協調回生ブレーキの効果も大きいのだろう。
この電費を達成したのには、エアコンの消費電力を低減する新しい手法も取り込まれた。なんと、消費電力が少ないヒートポンプシステムを導入した。エンジンのように発熱するものを持たないEVは、暖房時に電力を大幅に消費する。気温にもよるのだが、15〜30%くらい航続可能距離が落ちるとも言われていた。さらに、エアコンに送風モードの追加や直接体を温め体感温度を高めるステアリングヒーターとシートヒーターを標準設定。エアコンの消費電力低減は、天井にも及ぶ。ルーフトリムにアルミフィルムが追加され、車外の温度に影響されない工夫も盛り込まれている。試しに真冬にヒーターをオフ、シートヒーターのみオンで乗ってみたのだが、天気が良かったこともあり意外と寒さを感じなかった。
ザックリとした印象だが、ECOモードオンで市街地を普通に走って、電費7〜8km/Kwhといったところ。24Kwhの電池容量全部使うと不安だろうから、20Kwhを使うとして140〜160km走れる計算だ。ロングドライブに使うというのではなく、ちょっとした移動用なら、なんの不満もない走行可能距離といえる。
EVは基本的に、速度アップ=消費電力大+空気抵抗大になるので、電費は悪化傾向になる。協調回生ブレーキの効果を最大限に発揮するには、急なブレーキを避け、油圧ブレーキをなるべく作動させないように走しろうとすると車間を広めに取らないとならない。スピード控えめ、車間広めとなると見事なくらいの安全運転。割り切れれば、非常に心が穏やかに運転できるのもリーフの魅力だ。
日産リーフ価格、電費、スペック等
■日産リーフ価格
G 3,847,200円
X 3,471,300円
S 3,062,850円
代表グレード | 日産 リーフ G |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4445x1770x1550mm |
車両重量[kg] | 1460kg |
総電力量[kWh] | 24kWh |
最高出力[kw/rpm] | 80kW/3008-10000rpm |
最大トルク[N・m/rpm] | 254N・m/0-3008rpm |
JC08モード交流電力量消費率[Wh/km] | 114Wh/km |
JC08モード一充電走行距離 | 228km |
定員[人] | 5人 |
消費税込価格[円] | 3,847,200円 |
発売日 | 2012/11/20 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | CORISM編集部 |
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