ミニバンは、デカけりゃいいってもんじゃない!
キング・オブ・ミニバンを標榜して登場した日産エルグランド は、デビューした当初はけっこう良く売れたものの、その後はライバル車であるトヨタ アルファード/ヴェルファイア の後塵を拝するようになっている。そこで、2014年1月にビッグマイナーチェンジを実施し、改めて魅力アップを図ってきた。
まず、現行エルグランドのデビュー当初のことを振り返ってみよう。
基本プラットホームを商用車系のものから乗用車系のものに変更し、駆動方式もFRベースからFFベースに変更することで、低床・低重心の合理的なクルマとしたのが現行エルグランドだ。
これによる走りの向上は、目を見張るものがあった。旧型モデルの時代には加減速のときに大きく縦揺れしていたのに、現行モデルではそれが収まって安定性の高い走りを実現した。加減速時だけでなく、コーナーでの安定性も格段に向上し、乗用車に匹敵する走りのミニバン になったのが現行エルグランドだったといっていい。
ただ、低床プラットホームにして、全高を抑えたことで、上級ミニバンとしての迫力がややスポイルされた面があった。大柄なボディを持つ上級ミニバン、それだけで十分に迫力があるが、より迫力のあるデザインを求めるユーザーもたくさんいるため、そうしたユーザーに素直に受け入れられなかった面があった。
とはいえ、クルマは重心高が低ければ低いほど良いといっても過言ではない。背の高いボディにして重心高を高くしたら、その分だけクルマの挙動が落ち着かなくなる。また背の高いパッケージングを採用すると、前面投影面積が大きくなって空気抵抗が増し、燃費に悪い影響を与えるという側面もある。パッケージングの面でも乗降性の悪化につながる。
居住空間の広さが求められるミニバンとはいえ、むやみに大きなボディを持てば良いというものではない。今後、トヨタもヴォクシー/ノア で見せたように全高を下げながら室内スペースを広くするような方向性になるだろう。
エルグランドのクルマ作りは、こうした面で基本的な当たり前の方向に進んだものだったのだが、大きいことは良いことだとか、あるいは背は高ければ高いほど良いと勘違いされることも多く、それが販売の伸び悩みにつながるなど不運な面もあった。
夜に個性を発揮するLEDヘッドライト
そこで改良を図ったのが、今回のビッグマイナーチェンジである。まず変わったのがフロント回りのデザインだ。大型化されたフロントグリルは力強いを感じさせる太いメッキの横桟が配置され、グリル全体もメッキモールで囲まれる形になった。
従来のモデルと比べてみれば、格段に存在感の高まった押し出しの利いた顔つきになったのが良く分かる。あまりこの方向にやりすぎると、下品な印象になりかねないのだが、そこまでどぎつくはなっていないところがよい。相当な迫力である。
同時に、ヘッドランプは主要モデルにLEDヘッドランプが採用され、シグネチャーLEDポジショニングランプを組み合わせることで、目力というか、眼光鋭い顔つきになった。このLEDのヘッドライトなら、夜でもひと目でエルグランドと分かる。こういう個性の出し方は、上級ミニバンにとって大切だ。
ちなみに、今回の改良ではグリルの拡大に合わせてバンパーの形状が変更され、リヤコンビランプやアルミホイールのデザインも変更されている。
ラゲッジアンダーボックスが新設され、ゴルフバック6個搭載できる抜群の積載性
インテリアは、上級グレードのハイウェイスタープレミアムに、深みのある専用のブラックメープルフィニッシャーを採用した。さらに、アンバーアクセントスペシャルステッチを施したダイヤ型キルティングのブラックメタリックレザー(本革)と組み合わせ、特別感と高級感を演出するグランドブラックインテリアとして新設定している。この本革シートはいかにも手の込んだ仕上げという印象だ。
今回の改良では、ボディの全高などは変わっていないが、ルーフライニングの形状を工夫することで、運転席回りの室内空間に余裕を持たせている。全高は低くても、室内高や室内スペースはできる限り広くするという細かいながらもありがたい改良だ。
ラゲッジスペースは、大きく変更され、より広く使いやすくなった。3列目シートを前方向に240mmもスライドできるようにし、これによってラゲッジスペースの容量を拡大。最大でゴルフバッグ6個を積載できる。
現実には、6人もの人が1台のクルマで一緒にゴルフに行くケースは少ないだろうが、ゴルフバッグが何個積めるかは、ミニバンに限らずセダンでも需要な判断基準とされている。今回の改良では、フロア下にラゲッジアンダーボックスが新設された。このラゲッジアンダーボックスを使いゴルフバッグを立てた状態で3個が積め、3列目シートの後方に横に寝かせて3個、計6個積載できる。
エルグランドらしさを堪能したいのなら、250ハイウェイスタープレミアムがベスト!?
搭載エンジンなど基本コンポーネンツについては変更を受けていないので、走りのフィールについては基本的に従来と変わらない。今回試乗したのは4気筒2.5Lエンジンを搭載したモデルだが、タウンユースから高速クルージングまでこれで十分という印象である。
購入予算に余裕があるなら3.5Lエンジンを選ぶのも良いが、2.5Lと3.5Lでは対応するグレードで最低でも50万円以上の価格差がある。2.5L車が現実的な選択だろう。
そんなこともあって、今回試乗したのは2.5Lエンジンを搭載した250ハイウェイスタープレミアムだった。
このグレードは、エンジンは2.5Lながら最上級の仕様を備えたプレミアムなので、前述のように豪華な内装を備えている。マイナーチェンジ前のエルグランドでは、プレミアムは350ハイウェイスターだけで250ハイウェイスターには設定がなかったので、今回から選べるようになったグレードである。実際、マイナーチェンジ後のエルグランドでは、このグレードが最も良く売れている。
さらにいえば、試乗車のボディカラーは今回のマイナーチェンジで新色として追加設定されたインペリアルアンバーである。長い時間をかけて熟成した琥珀をイメージするストロングカラーで、エルグランドの存在感が良く表現された色だと思う。
試乗車のエルグランド250ハイウェイスタープレミアム価格は388万5000円。電動スライドドアをオプション装着すると400万円を超え、カーナビもオプション設定である。かなりの高額車になるので、欲しい仕様を慎重に判断したい。
日産エルグランド価格、スペックなど
●日産エルグランド価格
■3.5L 2WD
350ハイウェイスター プレミアム 7人乗り 5,189,100円
350ハイウェイスター 7人乗り 4,011,000円
350ハイウェイスター 8人乗り 4,011,000円
■3.5L 4WD
350ハイウェイスター プレミアム 7人乗り 5,472,600円
350ハイウェイスター 7人乗り 4,294,500円
350ハイウェイスター 8人乗り 4,294,500円
■2.5L 2WD
250ハイウェイスター プレミアム 7人乗り 3,885,000円
250ハイウェイスター 7人乗り 3,496,500円
250ハイウェイスター 8人乗り 3,496,500円
250XG 8人乗り 3,123,750円
■2.5L 4WD
250ハイウェイスター プレミアム 7人乗り 4,168,500円
250ハイウェイスター 7人乗り 3,780,000円
250ハイウェイスター 8人乗り 3,780,000円
250XG 8人乗り 3,407,250円
車名 | 日産 エルグランド ハイウェイスター 250ハイウェイスター プレミアム 7人乗り |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4945×1850×1815mm |
エンジンタイプ(使用燃料) | 直4DOHC(レギュラーガソリン) |
総排気量[cc] | 2488cc |
最高出力Kw[ps]/rpm | 125[170]/5600 |
最大トルクNm[kg-m]/rpm | 245[25.0]/3900 |
ミッション | エクストロニックCVT-M6 |
定員[人] | 7人 |
価格[円] | 3,885,000円 |
発売日 | 2014年1月15日 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部/日産 |
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