日産エルグランドは、低全高で低床・低重心。クルマとして本質を求めたパッケージオプション
エルグランド とトヨタヴェルファイア /アルファード は、日本独自の環境下で進化したラグジュアリーミニバン だ。どちらもほとんど海外で発売されていないので、ある意味、日本で最適化されたモデル。そのため、日本人のツボをほどよく押さえているのがポイントだ。
日産エルグランド 250ハイウェイスター プレミアム アーバンクロムのボディサイズは、全長4,975×全幅1,850×全高1,815mmとなっている。対して、トヨタ アルファード2.5S Cパッケージは、全長4,935×全幅1,850×全高1,880mm。エルグランドの全長がやや長く、全高が低いことが分かる。このボディサイズで、注目したいのは全高の差だ。エルグランドの全高が65mm低い。このことが、単にデザイン上の違いだけでなくアルファード/ヴェルファイアとの大きな違い生み出している。
エルグランドやアルファード/ヴェルファイアは、高級乗用車であってトラックではない。荷物ではなく、人を乗せる。そのため、上級セダン などのような乗り心地や乗降性、操縦安定、低燃費性能が求められる。そこで、エルグランドは低床フロアを採用し、全高を低くした。
低床フロアを採用し、全高を低くするのには訳がある。低床フロアは、子供やお年寄りが乗り降りしやすくなる。同時に全高を低くすることで、重心高を下げ操縦安定性を高める効果がある。重心高が低ければ、横転する可能性も低くなる。また、全高が低いと空気抵抗も少なくなり低燃費化にも効果があり、横風の影響も少なくなりフラフラすることも低減される。こうした物理的なメリットは大きく、日産だけでなくホンダも低床フロアのメリットをアピールしている。
現行エルグランドのデビューは2010年。当時、日産はエルグランドの低床低全高のメリットは示すため、日産栃木工場内のテストコースで試乗させた。こうした場所で試乗させるには、相当な自信が無ければできない。リヤに上質な乗り心地と高い操縦安定性をもつマルチリンクサスを奢っていたのも、自信がある理由のひとつでもある。とくに、曲がりくねったワインディング路では、ミニバンとしてかなり高い操縦安定性をもっていて、これが大型のミニバンの走行高性能なのかと驚いた記憶がある。
とにかく、ルックス重視のアルファード/ヴェルファイアだが、それでも低床・低重心化技術を取り入れたトヨタ エンジニアの意地
ただし、操縦安定性や燃費だけがマーケットに求められている訳でもないのが、このクラスのミニバンの難しいところだ。マーケットのニーズは、エンジニアが考える物理的なメリットとは真逆のものだった。空気抵抗や乗り降りのしやすさ、低燃費性能、操縦安定性よりも、とにかく大きく見えて威圧感があることが重要視されたのだ。
トヨタは、そうしたマーケットニーズを重視した。とにかく、威圧感がある大きく見えるデザインを採用。ホイールベースも広げ、エルグランドと同等とし、室内長や室内高を広げ、多彩な収納スペースも確保した。
ただ、世界屈指であるトヨタのエンジニアも、物理の原理原則に合わないクルマの開発をすることへのジレンマもあり、随所に低床・低重心へのアプローチが施されている。まず、大きく見えるデザインを採用することで、アルファード/ヴェルファイアは、全高を10mm下げた。
さらに、今まで乗り心地や操縦安定性に物足りなかったリヤサスペンションをトーションビーム式から、ダブルウイッシュボーン式に変更した。このダブルウイッシュボーン式は、なるべくフロアを低床にできるように工夫され新設計されたものだ。こうすることで、できる限りの低重心化を図っている。
明確に違う2つの個性。安定感のある走行性能をもつエルグランド。乗り心地重視のアルファード/ヴェルファイア。
こうした基本設計の違いが、エルグランドとアルファード/ヴェルファイアの走行フィーリングにも大きな違いを与えている。
両車の違いは、運転席に座る前から始まる。エルグランドは、フロアが低床ということもあり、やや上に登るイメージに対して、アルファード/ヴェルファイアは、さらによじ登る感じとなる。ドライバーズシートへのアクセスは、エルグランドのほうが楽。そのため、ドライバーズシートに座ると、着座位置が高いため見晴らしがいいのがアルファード/ヴェルファイアとなる。やや低いエルグランドでも、ミニバンなので十分に見晴らしは良い。
ドライビングポジション以外に、大きな差を感じる部分は、高速道路のICにあるような大きなカーブ。エルグランドは、引き締まったサスペンションと低床化・低重心化の恩恵で、大きく頭が振られることが無く、安定した姿勢で走り抜ける。ミニバンの中でも、不安感の無いキビキビとした反応を示し、走っていても気持ちよい。リヤのマルチリンクサスペンションも熟成され、シッカリと路面をつかみ高い操縦安定性と快適な乗り心地を誇った。
対してアルファード/ヴェルファイアは、乗り心地重視の柔らかめな設定。低い速度域では、路面の凹凸を感じさせない滑らかな走行を誇る。これは、ダブルウイッシュボーン式サスペンションを採用したメリットが生かされている。ただ、スピードが上がってくると、車体は大きく傾く。大きく傾くと言っても、唐突さは無くジワッと傾くので不安感はない。また、着座位置や重心が高いため、やや頭が振られる印象がある。走って楽しいという印象は無いものの、不快感を感じさせない走行フィーリングに仕上げている。
それほど2車の乗り味は違う。エルグランドは、クルマとしての機能を磨き、運転する楽しさも感じさせる。アルファード/ヴェルファイアは、走る楽しさというより、徹底して乗り心地重視といった印象。かなり異なるキャラクターをもつミニバンといえる。
シートバックの中折れ機能はエルグランドだけの機能。両車オットマン装備で、コンフォート性を向上!
今回は両車ともガソリンの2.5Lに試乗。エルグランドの出力が170ps&245Nm。アルファード/ヴェルファイアが182ps&235Nmとなっている。パワーはアルファード/ヴェルファイアが勝るが、トルクはエルグランドが勝る。実用上、ほとんど差が無く必要十分といった印象。両車ともミッションはCVT。燃費性能は、エルグランドが10.8㎞/L。アルファード/ヴェルファイアが11.4㎞/L(アイドリングストップ機能なし)と、こちらも大差ない。どちらのCVTも非常に効率がよく、2トン前後の重量級ボディをストレスなく加速させていく。
インテリアは、両車とも贅を尽くした仕様となっている。アルファード/ヴェルファイアは、エルグランドで好評だった助手席や2列目キャプテンシートのオットマンを採用するなどしてコンフォート志向を強めた。
ただし、シートバック中折れ機能はエルグランドだけのユニークなもの。シートバックが中折れすることにより、リラックスした姿勢を維持。背骨をより自然な形で支え、背骨の負担を減らすというものだ。また、体圧を分散させる効果もある。長距離ドライブによる疲労軽減にも役立つ。これは、エルグランドのもつコンフォート性を明確にアピールする装備と言える。どんなにサスペンションが優れていても、シートの快適性が低ければ、なんの意味も無くなるからだ。
このように、エルグランドとアルファード/ヴェルファイアは、同じ大型のミニバンとはいえ、考え方が違う。どちらかが正しいというものではない。使う側の考え方や好みにより、評価は変わる。エルグランドとアルファード/ヴェルファイアの購入で悩んでいるのなら、シッカリと両車を試乗することをお勧めする。
日産エルグランド価格、燃費、スペックなど
■日産エルグランド価格
●2.5L FF
・250ハイウェイスター プレミアム アーバンクロム 7人乗り 4,276,800円円
車名 | 日産 エルグランド250ハイウェイスター プレミアム アーバンクロム 7人乗り |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4945×1850×1815mm |
ホイールベース[mm] | 3,000mm |
車両重量[kg] | 1,950kg |
総排気量[cc] | 2488cc |
室内長×幅×高[mm] | 3,025×1,580×1,300mm |
最高出力Kw[ps]/rpm | 125[170]/5600 |
最大トルクNm[kg-m]/rpm | 245[25.0]/3900 |
JC08燃料消費率[km/L] | 10.8km/L |
ミッション | エクストロニックCVT-M6 |
定員[人] | 7人 |
価格[円] | 4,276,800円円 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | 編集部/日産 |
トヨタ アルファード価格、燃費、スペックなど
■トヨタ アルファード価格
●2.5L FF
・S “C パッケージ” 7人乗り 4,173,709円
定員[人]7人
代表グレード | トヨタ アルファードS“C パッケージ” 7人乗り |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,935×1,850×1,880mm |
ホイールベース[mm] | 3,000mm |
車両重量[kg] | 2,010kg |
総排気量[cc] | 2.493cc |
室内長×幅×高[mm] | 3,210×1,590×1,400mm |
最高出力Kw[ps]/rpm | 134[182]/6000 |
最大トルクNm[kg-m]/rpm | 235[24.0]/4100 |
JC08燃料消費率[km/L] | 11.4km/L(アイドリングストップ機能無し) |
ミッション | Super CVT-i |
価格 | 4,173,709円 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | 編集部 |
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