フォルクスワーゲンe-up!(イーアップ)試乗記・評価 やや高価だが、チャデモ式にも対応した快速EV
ガソリン車をベースにEV化したe-up!
フォルクスワーゲン が電気自動車 に対する取り組みを表明し、e-up! を発売し、e-ゴルフを発表した。フォルクスワーゲンの方針は、電気自動車を特別のものにせず、普通のクルマと同じように扱うというものだ。up!にしてもe-ゴルフにしても、標準的なガソリン車を電気自動車に改造する形で設定されている。
日本の自動車メーカーは、三菱 がiをベースにi-MiEV を作ったのに対し、日産 は電気自動車専用車としてリーフを設定している。フォルクスワーゲン の手法は、三菱的なものといえる。
フォルクスワーゲンはMQBと呼ぶ新しい開発・生産システムを展開する中で、ガソリン車も電気自動車も同じプラットホームをベースに生産できるような合理的な手法を採用している。ガソリン車ベースの電気自動車を作っているのだが、現時点ではこの方式で良いにしても、将来的には電気自動車専用車を作る方向に向かうのではないと思われる。BMW のi3 なども電気自動車であることを前提にしたクルマ作りがなされていて、それが一定以上に効果を上げている部分があるからだ。
日本マーケットに合わせ、チャデモ方式の急速充電口を装備
フォルクスワーゲンe-up!のスペックは、エネルギー容量18.7kW/h のリチウムイオン電池(重量:230kg)を床下に搭載する。電池は204個のセルで構成。最大出力60kW(82ps)、最大トルク210N・mの動力性能を持つ小型モーターに最大374Vの電圧を供給する。これによって12.4秒で時速100km/hに達し、最高速度は130km/hに達するという。
フォルクスワーゲンe-up!の満充電時の航続可能距離は、走行及び気象条件などによって異なるが、JC08モードでは185kmとされている。話半分として、ざっと100km程度が実用的な走行距離と考えたら良いだろう。専用のドライビングプロファイル機能により、ノーマル、エコ、エコ+を選ぶことができ、モードの選択によって航続距離を伸ばすことができる。
充電は200Vの普通充電とチャデモ方式の急速充電に対応している。日本のすべての充電装置メーカーの仕様に対応させるのに、かなりの苦労が必要だったという。
ひと目でEVであることが分からないデザインに面白みは無いが、細かい部分に多くのEV専用装備が装着
フォルクスワーゲンe-up!の外観デザインは、専用デザインの前後バンパーやアルミホイールが採用され、前後のバンパーに組み込まれたCの文字をかたどった反射板がガソリン車との違いになる。ただ、ボディサイドのデカールなどを見ないと、e-up!であることに気付かないかも知れないくらいさり気ないものだ。
インテリアは、リチウムイオン電池の床下搭載が影響して、前席シート下の部分がやや盛り上がっている。足元空間に多少の影響があるが、基本的にはガソリン車のup!と変わらない空間がある。
インパネ回りの表示系が電気自動車用のものになり、メーターパネルにはスピードメーターのほかに電池の容量を示すメーターと電気の出入りを示すメーターが配置されている。また、さまざまな車両情報を表示するタッチ+モアと呼ぶ液晶画面がシフトレバーの先に配置。シートヒーターが標準装備されて、エアコンの操作パネルが専用のものになることなどがガソリン車との相違点。
インテリア回りは、全体としてはガソリン車と変わらないが、細かな部分ではe-up!専用となる部分がたくさんある。
違和感なく乗れるクセの無い操作フィーリング高評価。ただし、普及させるには少々高価な価格といえる
フォルクスワーゲンe-up!のシステムをスタートさせ、ノーマルモードで走り出すと、けっこう力強い加速が得られる。これは正に電気自動車の加速だ。電気自動車なので、エンジン音が聞こえず基本的にかなり静かなのだが、走行中はロードノイズや風切り音などがけっこう入ってくる。電気自動車なのに、騒音は大きめである。
ドライブモードはノーマル、エコ、エコ+の3種類が設定されていて、センターコンソールのスイッチで切り替える仕組みだ。モードによって最高出力&最大トルクや加速性能、最高速度などに違いがあり、エコ+を選ぶと40kWの出力で最高速が95km/hに抑えられるが、航続距離を稼ぐことができる。ただし、エアコンが停止するので日本ではなかなか使いにくいモードだ。
スポーティな走りを望むならノーマルモードにすれば、60kWの出力で最高速は130km/hまで出る。ただし、航続距離が短くなるので、あまりお勧めできるモードではない。
ブレーキエネルギーの回生システムも切り替えが可能だ。これはシフトレバーを左右に動かして操作する仕組みで、ブレーキ回生をしない状態のほか、4段階の切り替えが可能だ。
最も強く回生をするBを選んでも、BMW i3ほど極端な回生ではないので、エンジンブレーキ感覚の減速を得ながら航続距離を伸ばしたいなら、これを選ぶことになる。通常は状況に応じてD1からD3を選んで走るのだろう。
乗り心地は、割と落ち着いた感じだ。電気自動車は一般に、重量物の電池を低い位置に搭載することで、乗り心地に優れるクルマが多いが、e-up!もその例に漏れなかった。低重心であることによる走りの安定感も満足のいくものだった。
フォルクスワーゲンe-up!の価格は366万9000円。輸入車ではあるものの、i-MiEVはもちろんリーフに比べても、かなり高めの印象になる。だれでも乗れる普通の自動車をコンセプトにした電気自動車であるなら、もう少し安い価格設定にして欲しいところである。
フォルクスワーゲンe-up!価格、電費、スペックなど
■フォルクスワーゲンe-up!価格:3,669,000円
代表グレード | フォルクスワーゲンe-up! |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3,545x1,650x1,520mm |
車両重量[kg] | 1160kg |
総電力量[kWh] | 18.7kWh |
最高出力[kw/rpm] | 60/3,000-12,000rpm |
最大トルク[N・m/rpm] | 210(21.4)/0-2,500rpm |
JC08モード交流電力量消費率[Wh/km] | 114Wh/km |
JC08モード一充電走行距離 | 185km |
定員[人] | 4人 |
消費税込価格[円] | 3,669,000円 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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