エンジンのパワー、トルクは従来の211PS、350Nmから230PS、370Nmに向上している。ターボチャージャーの圧力が上がる前の低回転でもエンジンレスポンスは良く、2000回転を超えてからは身体がシートに押し付けられる。アルミを多用し先代モデルより-50kgをダイエットした軽量ボディに、このパワー感はスポーツカーの名に恥じない。

そしてこのパワーをしっかり受け止め路面に伝えるのがクワトロシステム（4輪駆動） である。アウディTT のクワトロシステムは、後輪への駆動伝達に電子制御の多板クラッチユニットを使った最新のシステムが採用された。通常は前輪駆動で走行し、前後輪に速度差が生じる、或いは急加速など必要に応じて後輪に駆動トルクを配分するオンデマンドの4輪駆動システムに変わった。これにより、4輪駆動システムの課題であった燃費効率は、通常多板クラッチユニットが切り離された状況になり駆動ロスが減った。軽量化の効果もプラスされ燃料は向上している。

試乗コースは、彼方此方に大きく深い水溜まりがあり、通常であれば慎重に運転するような状況であったが、新クワトロシステムのトラクション性能のおかげでアクセルを思いっきり踏めた。運転感覚はフロントが引っ張られる前輪駆動車と同じで、通常の４輪駆動車のようなリヤから押され曲がりにくい感覚は無い。しかも、この悪天候下でも、タイヤが路面を離さない。今までに経験のない感じすらする安定感だ。

ソフトトップの開閉は約10秒の速さで、50km/h以下のスピードなら開閉操作が可能と実用的であるが雨のためオープンに出来なく残念だった。

アウディTTSクーペ は、シリーズの中で一番のホットモデル。排気量は同じ４気筒２リッターながら、過給圧を高め、シリンダーヘッド、ピストン、コンロッドを専用部品に換え、最高出力286PS、最大トルク380Nmを搾り出す。エンジンパワーは、加給が高まる2000回転を超えると巨大な力が身体に襲いかかり恐怖を感じるほど凄い。0-100km/hは4.7秒とポルシェ・ケイマンGTSの4.8秒（PDK）より速いのだ。しかも、クアトロシステムにより、路面が濡れていようとアクセルペダルを踏むだけで容易にパワーを体験出来てしまう。

走行状況に基づいて、サスペンションの減衰力を制御するアダブティブダンパーシステム（アウディ・マグネティックライド）が標準装備され、通常のTTクーペより車高は10mm低い。走行モードと連動して減衰力は変化するが、モードを変えて選択しても硬すぎないイイ感じのセッティングだ。

　今回のモデルチェンジは、全てにおいて先代モデルを超え、正常進化したモデルである。TTの優れたデザイン、クアトロシステムを継承し、新しい技術を取り入れたことにより、従来からのTTファンの期待を裏切らない仕上がりだ。一方で、クアトロシステムのモデルは589万円からと高価で、TTSは768万円と更に高い。エンジンパワーが強力とは言え、2リッター４気筒の車としてはどうかと思う。また、インテリアのデザインの優位性は高いが、これだけの価格なら質感をもう少し高めて欲しい。

初代アウディTTのインパクトはとても大きく、誰もが乗ってみたくなる車であった。３世代目となったTTは良い車とは理解するが、TTの持っていた先進的なエネルギーが減ったと感じる。

私のお勧めはTTS程のパワーは必要無く、オープンカーでも剛性が高く、走行中もソフトトップの開閉が出来て、カッコいいTTロードスターが一押しである。

■アウディTTクーペ価格
・TT Coupe 2.0 TFSI：¥5,420,000
・TT Coupe 2.0 TFSI quattro：¥5,890,000
・TTS Coupe 2.0 TFSI quattro：¥7,680,000

■アウディTTロードスター価格
・TT Roadster 2.0 TFSI quattro：¥6,050,000

定員［人］2人