メルセデス・ベンツSクラス新車試乗評価 世界最高水準の安全装備+ハイブリッドを装備しながら、驚きの価値ある価格設定となった新型S400ハイブリッド!
外観は先代を継承、インテリアはキラキラ感のあるラグジュアリーな空間へ変貌した!
8年振りのフルモデルチェンジで登場した新型メルセデス・ベンツSクラスは、ベンツのフラッグシップモデルにふさわしい進化を遂げてきた。
今回のモデルではインテリジェントドライブ、究極の快適性、徹底した効率の向上などが開発テーマとされ、それぞれの面で長足の進歩を遂げている。
新型メルセデス・ベンツSクラスの外観デザインを見ると、変更感に乏しいと感じるかも知れない。最新のデザインにアップデートされているが、全体的なイメージは従来のSクラスのイメージを継承するものだからだ。
ただ、このような形で少しずつ進化を遂げていくのが高級車のモデルチェンジの在り方ともいえる。フロント回りのデザインが、スリー・ポインテッド・スターをグリル中央に配置するアバンギャルドデザインではなく、エレガントでクラシカルなデザインとされた点も好感が持てる部分だ。
外観に比べると、インテリア回りは大きく変わった感がある。高級車にふさわしいラグジュアリーさにあふれた空間が作られている。試乗車はシェールグレーの内装色にメタライズドアッシュウッドインテリアトリムをオプション装着した仕様だったので、まるで宝石箱の中にいるかのようなとてもきれいなインテリア空間が作られていた。
これは、カタログの写真などを見ても良く分からないので、実際にショールームでクルマを見て確認してほしい。とてもメルセデス・ベンツとは思えない仕上がりで、まるでベントレーにでも乗っているかのような印象だった。
パワフルで低燃費なS550。さり気ないが乗り心地を向上させるマジックボディコントロール
新型メルセデス・ベンツS550ロングに搭載されるV型8気筒4.7Lのツインターボ仕様エンジンは、基本は従来のモデルに搭載されていたのと同じだが、設計の見直しによる効率の向上が図られていて、335kW/700N・mのパワー&トルクを発生する。同時に、10.1km/Lという燃費を達成。重量級のボディを持つ高級車としては相当に良い燃費だ。
パワーフィールも申し分がない。アクセルをグイと踏み込めば、それに合わせてひゅんと回るエンジンが一気に吹き上がり、回転の上昇に合わせて豪快な加速フィールが味わえる。力強さと滑らかさは正に高級車のエンジンである。
新型Sクラスの試乗車には、AMGスポーツパッケージが装着されていて、19インチタイヤを履く仕様になっていたが、乗り心地の快適性は損なわれていない。自動ブレーキ用のカメラを使って前方の道路の段差を判断し、それに合わせてサスペンションの減衰力を変化させるマジックボディコントロールが装備されていたことも貢献していたと思う。
この新機構は、1台のクルマを走らせただけでは分かりにくいが、テストコース内に設けられた段差を設定した路面で、オン/オフを切り替えて交互に走らせると、その違いが良く分かった。
自動運転直前ともいえる自ら考えて動く世界最高水準の安全性能
インテリジェントドライブでは、レーダーセーフティパッケージを始めナイトビューアシトプラスに至るまで、能動安全、受動安全とも最新の安全装備がテンコ盛りで用意されている。現在の市販車の中で最も進んだ安全装備を備えたクルマといっていい。
話題の先進緊急自動ブレーキについていえば、近距離用と中長距離用のレーダー、ステレオカメラなどによって前方を監視し、衝突の危険を判断するとドライバーに教え、状況によってはブレーキをかけたりする。
前方のクルマに追従しながら車線を維持しつつ走ったり、斜め後方から死角に入ったクルマ知らせる機構、さらには夜間に赤外線で人間を判断して知らせる機構など、さまざまな安全装備が備えられている。
これらの安全装備に使われるセンサーによって、クルマの周囲が良く見える状況になったことは、自動運転につながる要素でもある。
実際、ドイツでは、125年前にベルタ・ベンツ(カール・ベンツ夫人)が、女性として最初に長距離ドライブした100kmほどのコースで自動運転の実験を成功させている。そんな最先端の安全装備が手に入るのが最新のメルセデス・ベンツSクラスである。
本体価格が1500万円を超えるクルマ(試乗車にはさらに249万6000円のオプションが装着されて1784万6000円の仕様になっていた)なので、良くて当たり前といえばそれまでだが、今回のSクラスは最新の高級車の中でも最も良くできたクルマだと思う。
新型メルセデス・ベンツSクラスのメインは、やはりS400ハイブリッド
新型メルセデス・ベンツSクラスには、ハイブリッドモデルも用意されている。日本においては、このハイブリッドモデルであるS400ハイブリッドが中心に売れていくと思われている重要なモデルだ。
外観デザインについては、やや保守的な印象を受ける。ルーフラインがややクーペ風になるなどしたものの、全体的な印象は従来のモデルと変わらないからだ。ただ、高級車のユーザーは保守的な人が多く、大きな変化を好まない傾向が強い。今度のSクラスのデザインは、そうしたユーザーに対応したものといえる。
インテリアは、右のドアからダッシュボードを通って左のドアに至るまで、全体にドライバーを包み込むようなつながりのあるデザインが採用されている。一体感を感じさせる流麗なデザインである。しかもそれが最高品質のレザーやウッド素材を使って入念に作り込まれていて、エレガントでエクスクルーシブな室内空間を作っている。
よりEV走行ができるようになり、ハイブリッドらしさが前面に出たS400ハイブリッド
新型メルセデス・ベンツSクラスのハイブリッドシステムは、基本的に従来のモデルと変わらない。1モーター方式のマイルドハイブリッドである。しかし、今回のモデルではモーターの出力を20kW/250N・mへと高め、リチウムイオン電池の搭載量を増やすことで、EV走行の領域を拡大するなど進化した仕様のハイブリッド車に仕上げている。
この結果、従来のモデルでは電気モーターによる支援がほんの瞬間的なもので終わったのに対し、今回のモデルではアクセルを踏み込んだときのモーターによるアシストが長続きするようになった。当然、走行中にも容易にEVモードに入るようになりモーター走行できる領域も広がった。
郊外の空いた一般道を走らせていると、ちょっとアクセルを緩めるとすぐにEVモードに入る。そしてじんわりとアクセルを踏んでいると、そのEVモードが長続きする。ハイブリッド車であることを実感できる走りだ。
従来のハイブリッドが、F1のKERSを思わせるような瞬間的な電気ターボ風の走りしかできなかったのに比べると、今回のS400ハイブリッドはハイブリッド車らしいハイブリッド車になったといえる。
優れた安全性能と乗り心地、そして燃費と全方位が進化。それでいてS400ハイブリッドの価格は1090万円から。これはバーゲン価格だ!
乗り心地の快適性も、上々のレベルにある。今回のモデルではベースグレードになったS400だが、電子制御エアマテックサスペンションが採用されており、少々荒れた路面でも快適な乗り心地を確保する。試乗車は、エクスクルーシブだったので19インチタイヤを履いていたが、快適性は損なわれていなかった。
このほか、レーダーセーフティパッケージを始めとする安全装備の充実度の高さはSクラスならではのものだ。ナイトビューアシストプラスなどの一部の高級装備を除くと、基本的な安全装備は全車に標準で装備されている。
試乗車はエクスクルーシブだったので価格は1270万円だが、ベースのS400なら1090万円というのだから、この価格帯のクルマを買える人には相当な割安感がある。前のハイブリッドはロングボディ車に1500万円近い価格が付けられていたのだから、従来のS350並みの価格で買える今回のS400ハイブリッドは値打ちモノの価格といっていい。
メルセデス・ベンツSクラス価格、燃費、スペックなど
メルセデス・ベンツSクラス価格
・S 400 HYBRID 右 3.5L V6直噴+ハイブリッド ¥10,900,000
・S 400 HYBRID エクスクルーシブ 右 3.5L V6直噴+ハイブリッド ¥12,700,000
・S 550 long 左/右 4.7L、V8 直噴ツインターボ ¥15,450,000
・S 63 AMG long 右 5.5L、V8 直噴ツインターボ ¥23,400,000
・S 63 AMG 4MATIC long 左 5.5L、V8 直噴ツインターボ ¥23,400,000
定員[人]5人
代表グレード | メルセデス・ベンツS400ハイブリッド |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 5,120×1,900×1,495mm |
ホイールベース[mm] | 3,035mm |
車両重量[kg] | 2,010kg |
総排気量[cc] | 3,497cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 225(306)/6,500rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 370(37.3)/3,500〜5,250rpm |
モーター最高出力[kw(ps)] | 20(27) |
モーター最大トルク[N・m(kg-m)] | 250(25.5) |
ミッション | 7速AT |
JC08モード燃費[km/l] | 15.4km/l |
価格 | 10,900,000円 |
レポート | 松下宏 |
写真 | 編集部 |
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