意地のクラストップ燃費を誇る30.2km/Lだが・・・【スズキ アルト エコ試乗評価】の目次
軽自動車業界の燃費戦争勃発中!
ライバル企業間の技術への正当な競争は、我々の生活をよりよいものへ導いてくれると30.2km/Lというクラストップの低燃費を誇るスズキ アルトエコをみてそう思った。アルトエコは、ダイハツのイースの燃費30.0km/Lを僅かだが0.2km/L超えたものになっている。ちなみに、併売されているアルトGの燃費は、22.6km/Lなので約34%にという燃費の向上だと評価できる。
ここまでスズキが徹底して低燃費を狙ったのにはワケがある。軽自動車の低燃費化への対応がダイハツより若干遅れていたこと、そしてCM上手なダイハツにダイハツ=低燃費というイメージをマーケットに完全に植えつけられてしまっていた。
軽自動車マーケットで重視されるのは、車両価格や税金なども含めた経済性。燃費はエコロジーであり、経済性とは関係無いように感じるかもしれないが、燃費が良ければガソリン代も少なくて済むので、今ではエコロジー=エコノミーという考え方が当たり前になっている。当然、経済性重視の軽自動車マーケットでは、購入時に燃費の優先順位が上がっているのだ。どちらにしても、ダイハツとスズキの競争により、より安く燃費のいいクルマが手に入るのは、うれしいかぎりだ。
そんな理由から、スズキ車は燃費が悪いなんてマーケットに思われてしまわないように、イースを超えるクラストップの低燃費車アルトエコを作り上げた。開発関係者によると、短期間による開発は苦労の連続だったという。
スズキの最新テクノロジーを駆使した低燃費エンジン
エンジンの型式R06Aというのは、同じだが中身は大きく異なりエンジニアに言わせると、ほとんど作り替えたというような状態だという。スズキ初として、ピストンコーティングやピストンリング表面処理により、潤滑性の向上や低フリクションかを実現。CVTもフリクションの低減により高効率化が施された。
また、時速9km以下でエンジンが停止するアイドリングストップ機能や20kgの軽量化されたボディなどに加え、車高を15mm下げ、走行抵抗の低減などにも徹底してこだわった。なんと燃費が向上することを見込んで、燃料タンクも30Lから20Lへと変更されるなどの裏技まで盛り込んでいる。
スポーティでキビキビした走りになったアルトエコ。実燃費も軽く20km/Lを超える実力
走り出してすぐに気がついたのが、車高の低さから来る走りの違い。車高を15mm下げたことにより、若干カタメられた足まわりとなったため、意外なほどスポーティな走りになっていた。超高圧なエコタイヤによるカタメの乗り味だが、キビキビ走る印象は高まった。静粛性や振動は、まぁ、こんなものかな程度。良くもなければ、悪くもない。100万円を切る価格であるということを考えれば、上出来だろうと評価する。
アイドリングストップ機能も積極的によく停止する。気になったのは、エンジン停止時からの加速。エンジン始動直後にアクセルを踏み気味にすると、想像以上にクルマがグイッと前に出る傾向にある。慣れないと、ちょっとビックリするかもしれない。
また、エンジンの再スタート時にかかるセルモーターの音が大きい。車内にいるとそれほど気にならないのだが、自分が歩行者になり後方で停止したアルトエコがアイドリングストップし、再始動した車外音がかなり大きくちょっとビックリした。この傾向は、アルトエコだけの話ではない。多くのアイドリングストップする小型車全般にいえる。交通量の多い場所では気にならないが、住宅街などでは意外と気になる音となる可能性が高い。
このアイドリングストップ機能は、ダイハツ イースが時速7km以下なのに対してアルトエコは時速9km以下でエンジンが停止する。エンジンが停止し、クルマが止まる直前に再加速するような時でも、スムースにエンジンがかかり走りだすことができた。
試乗コースとなった東京ディズニーランド周辺は、比較的流れもよかったこともあり、アルトエコの燃費は、20km/Lを軽々と超えていく。ちょっと燃費を気にして走るだけで、25km/Lは簡単に出た。ただ、スズキはダイハツに比べて下手なだなぁ、と思うのはCMだけでなく、メーターの演出にもある。ダイハツのイースが、メーター内を覆うくらい燃費がいい状態、悪い状態を色でアピールするのに、アルトエコはECOと書かれた小さな小さな文字が光るだけだ。これでは地味すぎるし、エコドライブしていないことにもなかなか気が付かないだろう。
ヘッドレストなしモデルしかない現実
価格も100万円を切っていることや、全般的に好印象だったアルト エコだが、残念ながらダイハツのイース同様オススメできないわけがある。このアルト エコには後席のヘッドレストが付いていないのだ。ヘッドレストは、衝突時に乗員の重い頭が前後に大きく揺さぶられ、クビなどにかかる負担を軽減する重要な安全装備だ。
なぜ、ヘッドレストを標準装着しないのか? という質問に対しての答えは、燃費の優先順位が高かった(燃費は安全より重視されなくてはならないのか?)、このクラスには後席に人が乗るケースが少ない(乗らないのなら2人乗りにすればいいし、4人分のシートを付けたのなら、安全性は十分に考慮する必要がある。滅多に乗らない後席にたまたま人が乗り、追突されました。ムチ打ちがひどいです。それは、ヘッドレスとの無いクルマに乗り運が悪かっただけで済まされる問題ではない)。という答えが帰ってくる。最もひどい答えは「法的に付ける義務があるなら付けます」。
スズキやダイハツなど、後席ヘッドレスト未装着車に対する安全意識の低さは、クルマやブランドの価値を大きく損なうと思うのだが・・・。ABS未装着車の販売時もそうだったが、100万歩譲っても、基本的な安全装備はレスオプション化して装着の有無はユーザーに選択させることが最低限ではないだろうか?
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