【トヨタ iQ 試乗記】全長3m以下の特異なスタイルとパッケージングで軽の牙城を崩せるか!? [CORISM] [CORISM]
【トヨタ】2008/11/12
従来のコンパクトカーの概念を打ち破るパッケージング
レザーパッケージとディスチャ−ジヘッドランプ装着車はスモークタイプのヘッドランプとなる。
プレミアムコンパクトという発想を基本に、徹底してパッケージングを煮詰めるとクルマをどれだけ小さくできるかにチャレンジしたのがトヨタ iQ。全長が3mを切るコンパクトなクルマながら、全幅は5ナンバー車並みを確保し、これまでにない縦横比というか、長さと幅の比率を持つクルマが仕上げられたと評価していい。
当然ながらプラットホームは完全に新しく開発されたものだし、エンジンとトランスミッションはパッソなどから流用したものだが、iQに搭載するために専用の開発が行われており、ほかにもエアコンのユニットや燃料タンク、サスペンションなどなど、ほとんどの要素部品を新設計して作られている。これほど全面的に新しい開発が行われるクルマはトヨタでも珍しい。このクルマに採用された基本プラットホームやパッケージング技術が、ほかの多くのクルマに展開されていくいう展望があってこその開発だろう。
当然ながらプラットホームは完全に新しく開発されたものだし、エンジンとトランスミッションはパッソなどから流用したものだが、iQに搭載するために専用の開発が行われており、ほかにもエアコンのユニットや燃料タンク、サスペンションなどなど、ほとんどの要素部品を新設計して作られている。これほど全面的に新しい開発が行われるクルマはトヨタでも珍しい。このクルマに採用された基本プラットホームやパッケージング技術が、ほかの多くのクルマに展開されていくいう展望があってこその開発だろう。
全長3mを切る独自のスタイルは注目度抜群高評価!
シンプルな造形のリヤコンビランプ。レンズカットが美しく、プレミアム感は十分感じられる。
クルマは真正面から見るとほぼ5ナンバー車並みの横幅なので普通だが、だんだんに横に回っていくと並みのクルマとは違うことが分かってくる。長さと幅の比率が完全にこれまでのクルマの常識から外れているからだ。普通のクルマなら全長の中央よりも前寄りにドライバーが乗っているが、このクルマでは中央よりやや後ろ寄りの位置に乗っている。クルマの後部をどこかに忘れてきたようなデザインなのだ。
それだけに目立つ。都内で試乗したら、まだ発売されたばかりということもあって、やたらと注目を浴びた。ダイムラーのスマートに乗っていたときも相当に注目を集めたが、iQもまた注目度の高いクルマである。正面を中心にした外観デザインには多少好き嫌いがあるかも知れないが、個性で注目を集めるデザインは良いデザインだと高評価しよう。
それだけに目立つ。都内で試乗したら、まだ発売されたばかりということもあって、やたらと注目を浴びた。ダイムラーのスマートに乗っていたときも相当に注目を集めたが、iQもまた注目度の高いクルマである。正面を中心にした外観デザインには多少好き嫌いがあるかも知れないが、個性で注目を集めるデザインは良いデザインだと高評価しよう。
全幅こそコンパクトカーサイズだが、全長3mを切る縦横比は今まで見たことのないもの。
ホイールベースはなんと2m! 前後のオーバーハングも極端なまでに切り詰められているのが印象的だ。
個性的なフロントマスクは好き嫌いが分かれるデザインかもしれない。正面から見れば普通のクルマだが、横に回ると全長の短さに驚かされる。
独特のインテリアデザインを採用し4人分のスペースを確保した!
インパネのデザインはシンプルながら、プレミアムコンパクトにふさわしい質感を感じさせてくれる。助手席の前方が大きくえぐられ、足元のスペースを稼いでいる。
iQにはインテリアも独特のデザインが採用されている。ステアリングはデザインこそ異なるが、ラウムやプリウスなどにも採用されたことのある楕円形のもので、これによってコンパクトなボディへの乗降性を向上させている。
インストセンター部分のデザインはエイをイメージしたものとのこと。標準車ではそれが素直に生きるが、日本では多くのクルマにカーナビが装着されるため、この部分のデザインが少し変わってしまうのがやや残念なところである。
2mのホイールベースに3mを切る全長ながら、室内にはぎりぎりで4人が乗れる空間が確保されている。助手席を運転席よりも前に出すことによって助手席の後ろにも大人が座れる空間を確保し、運転席の後ろには何とか子供が座れるくらいの空間を確保した。足の置き場なども含めてやや窮屈なのは確かだが、普通の大人3人+子供1人が乗れるのは確か。実際には4名もの乗員が乗ることはないだろうが、その気になれば4名が乗れるのだ。
ただ、無理してこれだけ小さなクルマにするより、軽自動車くらいの全長にしてもっとゆったり座れるようなクルマにしたほうが良かったのではないかという感じもある。軽自動車なら横方向はともかく、前後方向には大人4人が余裕で座れる空間がある。
インストセンター部分のデザインはエイをイメージしたものとのこと。標準車ではそれが素直に生きるが、日本では多くのクルマにカーナビが装着されるため、この部分のデザインが少し変わってしまうのがやや残念なところである。
2mのホイールベースに3mを切る全長ながら、室内にはぎりぎりで4人が乗れる空間が確保されている。助手席を運転席よりも前に出すことによって助手席の後ろにも大人が座れる空間を確保し、運転席の後ろには何とか子供が座れるくらいの空間を確保した。足の置き場なども含めてやや窮屈なのは確かだが、普通の大人3人+子供1人が乗れるのは確か。実際には4名もの乗員が乗ることはないだろうが、その気になれば4名が乗れるのだ。
ただ、無理してこれだけ小さなクルマにするより、軽自動車くらいの全長にしてもっとゆったり座れるようなクルマにしたほうが良かったのではないかという感じもある。軽自動車なら横方向はともかく、前後方向には大人4人が余裕で座れる空間がある。
フロントシートまわりのスペースは十分。横方向のサポートも十分で、座り心地は上々。レザーパッケージ(写真中央)の本革の手触りはとてもいい。リヤシートは確かに大人と子供が座れるだけのスペースは確保されている。リヤのカーテンシールドエアバッグは標準装備で、万一の安全性もしっかり確保されている。
充実した安全装備で万一の時の安心感も高い
大きなスピードメーターを中央に配置したメーターのデザインは、非常に個性的だ。
小さなクルマで気になるのが安全性だが、iQは衝突安全の性能も高いレベルにある。短いストロークで衝突エネルギーを効率的に吸収するボディ構造を採用し、トヨタの基準はもちろんJ-NCAPの6つ星相当の安全性を確保したという。
SRSニーエアバッグやSRSリヤカーテンシールドエアバッグなどを含めた合計9つのSRSエアバッグが採用されたほか、ステアリングとの協調制御を行う横滑り防止装置のS-VSCが採用されるなど、安全装備のメニューも充実している。
SRSニーエアバッグやSRSリヤカーテンシールドエアバッグなどを含めた合計9つのSRSエアバッグが採用されたほか、ステアリングとの協調制御を行う横滑り防止装置のS-VSCが採用されるなど、安全装備のメニューも充実している。
インパネ中央のデザインは、エイをイメージしたという。ナビを装着するとデザインがやや変わってしまうのは残念なところだ。
ミッションは全車CVTを採用。効率のいいエンジンとのマッチングもよく、軽自動車と同等のカタログ燃費(23.0km/L)を実現する。
S-VSC(横滑り防止装置)はステアリングと協調制御も行なう優れもの。9個のエアバッグも装着され、安全装備の充実ぶりはさすがだ。
4人乗車時にはラゲッジと呼べるスペースはない。簡単にたためるリヤシートを収納すれば、実用上十分なスペースが現われる。
効率のいいエンジンと軽量ボディで優れた燃費を実現!
パワートレーンは直列3気筒1リッターの自然吸気DOHC+スーパーCVT-iの組み合わせで、これ自体はすでにパッソやヴィッツなどにも採用されているもの。それにiQ専用のチューンを施して搭載された。
3気筒エンジンはアイドリング時にやや振動があるものの、これはコンパクトカーとして許容できるレベル。神経質にならなければ気づかないくらいだ。
コンパクトなボディは重さがわずか890kgと軽自動車並みに作られているので、68ps(50kW)/9.2kg-m(90N・m)という1リッターエンジンの実力でもほとんど不満は感じない。アクセルを踏み込んだときのレスポンスが俊敏ではなく、もう少し元気の良さが欲しい気もするが、これは燃費に配慮したエンジンとCVTのチューニングによるところもある。ちなみに10・15モードで23km/L、JC08という新モードで21km/Lというのは、ガソリン車で一番ではないが、相当に優れた数値である。
3気筒エンジンはアイドリング時にやや振動があるものの、これはコンパクトカーとして許容できるレベル。神経質にならなければ気づかないくらいだ。
コンパクトなボディは重さがわずか890kgと軽自動車並みに作られているので、68ps(50kW)/9.2kg-m(90N・m)という1リッターエンジンの実力でもほとんど不満は感じない。アクセルを踏み込んだときのレスポンスが俊敏ではなく、もう少し元気の良さが欲しい気もするが、これは燃費に配慮したエンジンとCVTのチューニングによるところもある。ちなみに10・15モードで23km/L、JC08という新モードで21km/Lというのは、ガソリン車で一番ではないが、相当に優れた数値である。
iQに搭載されるエンジンは、パッソなどに積まれるものと共通だが、専用のセッティングが与えられている。3気筒ということで、やや振動が気になる場面もあるが、十分許容できるレベルだ。
レザーパッケージはアルミホイールが標準装備(その他はオプション)される。タイヤはロードノイズも少なく快適性も高いものが装着されている。
ホイールベースの短さを感じさせない乗り心地はさすが。ハンドリングの安定感も十分確保されている。
ホイールベースの短さを感じさせない快適な乗り心地とハンドリング
iQに乗る前に気になったのはホイールベースの短さがどう影響するかということだった。軽自動車でも2500mm級のホイールベースが確保される時代に、わずか2000mmのホイールベースのクルマがどれだけまともに走るかが気になる点だった。
これは結果的には取り越し苦労に近い感じだった。もちろんホイールベースの絶対的な長さが短いので、ヒョコヒョコするようなピッチングを感じる部分があるのは確か。また北海道のテストコースで試作車に試乗したときには、ブレーキをかけながらステアリングを操作するようなシーンでは、S-VSCがすぐに介入してスピンを抑える設定になっていた。日常ユースでスピンモードに入りにくいよう、ステアリングのアンダー傾向がやや強めに設定されているのもiQの特徴だ。
これらの点を指摘してiQのデキがさほど良くないと見ることもできるが、むしろこれだけ短いホイールベースのクルマを良くここまで仕上げてきたとほめるべきだと思う。極端なまでに徹底すれば、クルマはここまで小さくできることを証明して見せたことが高く評価されるべきだと思う。小さくて軽いクルマを作れば、燃費が良くなる。燃費の良いクルマには正義があるからだ。
iQに乗っていると、あえて意識しないことにはホイールベースの短さを忘れてしまうくらいだ。もっとホイールベースの長い普通のクルマに乗っているような感覚になる。それくらいに仕上がったことは評価して良いと思う。
これは結果的には取り越し苦労に近い感じだった。もちろんホイールベースの絶対的な長さが短いので、ヒョコヒョコするようなピッチングを感じる部分があるのは確か。また北海道のテストコースで試作車に試乗したときには、ブレーキをかけながらステアリングを操作するようなシーンでは、S-VSCがすぐに介入してスピンを抑える設定になっていた。日常ユースでスピンモードに入りにくいよう、ステアリングのアンダー傾向がやや強めに設定されているのもiQの特徴だ。
これらの点を指摘してiQのデキがさほど良くないと見ることもできるが、むしろこれだけ短いホイールベースのクルマを良くここまで仕上げてきたとほめるべきだと思う。極端なまでに徹底すれば、クルマはここまで小さくできることを証明して見せたことが高く評価されるべきだと思う。小さくて軽いクルマを作れば、燃費が良くなる。燃費の良いクルマには正義があるからだ。
iQに乗っていると、あえて意識しないことにはホイールベースの短さを忘れてしまうくらいだ。もっとホイールベースの長い普通のクルマに乗っているような感覚になる。それくらいに仕上がったことは評価して良いと思う。
●お勧めグレード
iQを買うなら上級グレードの100Gがお勧め。100Xに比べ、本革巻きステアリングホイール、スマートエントリー&スタート、オートエアコンなどが装備されるので、プレミアムコンパクトにふさわしい満足感が得られるからだ。必要ならさらに10万円を出してレザーパッケージを選んでも良いが、普通に乗るなら150万円ちょうどの100Gで良いと思う。
ただ、iQは商売としては相当に難しい面がある。150万円あれば軽自動車はターボ仕様のエンジンを搭載したモデルが買える。ターボ付きの軽自動車は良く走るし、室内は広いし、税金や保険料などの維持費も安いから、iQも軽自動車が相手だと勝負にならないのではないかと思う。
軽自動車とは異なる別の価値を持つクルマであることを評価できるユーザーでないと、すんなりiQを選ぶことはできないのではないか。私自身も都内用に三菱 i(アイ)を使っているが、お金のことを考えると、iをiQに替えようという気持ちにはなりにくい。
ただ、iQは商売としては相当に難しい面がある。150万円あれば軽自動車はターボ仕様のエンジンを搭載したモデルが買える。ターボ付きの軽自動車は良く走るし、室内は広いし、税金や保険料などの維持費も安いから、iQも軽自動車が相手だと勝負にならないのではないかと思う。
軽自動車とは異なる別の価値を持つクルマであることを評価できるユーザーでないと、すんなりiQを選ぶことはできないのではないか。私自身も都内用に三菱 i(アイ)を使っているが、お金のことを考えると、iをiQに替えようという気持ちにはなりにくい。
代表グレード | トヨタ iQ 100G |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 2985×1680×1500mm |
車両重量[kg] | 890kg |
総排気量[cc] | 996cc |
最高出力[ps(kw)/rpm] | 68ps(50kw)/6000rpm |
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 9.2kg-m(90N・m)/4800rpm |
ミッション | CVT |
10・15モード燃費[km/l] | 23.0km/l |
定員[人] | 4人 |
税込価格[万円] | 150.0万円 |
発売日 | 2008/11/20 |
レポート | 松下宏 |
写真 | 和田清志 |
(レポート:松下 宏)
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