スタイリッシュな外観デザインとクロスカントリーの性能を合わせて持つモデルとしてボルボ XC60が発売された。比較的コンパクトなサイズのプレミアム クロスオーバーのモデルはボルボとしても初めての設定で、シティ セーフティと呼ぶ先進の安全装備を世界初採用したのが特徴と評価しよう。
XC60は60という数字が示すように、サイズ的にはボルボのラインナップの中で中心に位置する。全長が4625mmに抑えられているのはコンパクトといえるが、全幅は1890mmで日本で使うにはかなり大きなクルマとなる。ターボ仕様の直列6気筒3リッターエンジンを搭載し、AWD機構を採用したクロスオーバーモデルであるため車両重量も1930kgとかなり重い。

　外観デザインはまずフロント回りが印象的で、ボルボらしさと新しさが表現されている。グリルの中央に位置するアイアンマークが大きくなったほか、グリルの左右に配置されたLEDポジショニングランプも目を引く。またランプ回りやバンパー形状などに彫りの深いデザインが採用され、XC60の存在感を際立たせている。
サイドビューは、ウエストラインから上がクーペ風のデザインとされ、ボディ下部はSUVらしい力強さを表現したものとされた。短い前後のオーバーハングが安定感を感じさせている。またLEDを採用したテールランプの形状は最近のボルボデザインを発展させたもので、夜間にランプを点灯させると際立った個性が表現される。

　XC60ではインテリアにも新しい趣向が採用されている。ボルボ車に共通する特徴ともなったフローティング センタースタックは、XC60で初めて左右対象ではなくややドライバー側に傾けたデザインが採用された。よりダイナミックでスポーティなイメージだ。
XCのXをモチーフに2トーンカラーのデザインを採用した本革製のエキサイティングシートも印象的。後席のシートは3席がひとつずつ独立した分割可倒式とされているので、乗員と荷物に応じた多彩なアレンジが可能。後席にも余裕の広さが確保されている。
5名乗車の状態でもラゲッジスペースには十分な容量があり、トノカバーの下にゴルフバッグ4個を積むことができる。またネットポケットやグローサリーバッグ ホルダー、パワーテールゲートなど、使い勝手に配慮した仕様が用意されている。

　HDDナビゲーションやパワーシート、ハイパフォーマンス オーディオシステムなど、快適装備の充実度はプレミアム クロスオーバーの名に恥じないものが用意される。安全装備の充実度もボルボならではのレベルにある。
今回新しく全車に標準装備されたシティ セーフティは、追突事故の多くを占める時速30km以下での軽衝突に対応するもので、衝突の危険を感知すると、急停止するところまでブレーキをかけ、前車の手前で停止したり、速度を低下させて衝突の被害を軽減させたりする。日本向けだけでなく、世界統一仕様としてXC60全車に標準装備されているものだ。

　搭載エンジンは直列6気筒3リッターのインタークーラー付きターボ仕様で、これを横置きに搭載する。ボルボならではの車両レイアウトをベースに、駆動方式はハルデックスカップリングを使ったプレチャージ式のAWDを採用する。
動力性能は285ps(210kW)/40.8kg-m(400N・ m)の実力で、前述のように重量級のボディながら、重さを全く感じさせないような余裕の走りを示す。滑らかな発進を見せるほか、どんな速度域からでもアクセルを踏み込むのに合わせて力強く加速していくので、ストレスのない走りが得られる。これはわずか1500回転の段階で40.8kg-m(400N・m) の最大トルクを発生するターボエンジンによるところが大きい。マニュアル操作も可能な電子制御6速ATとの組み合わせも上々だ。
今回の試乗では市街地から高速道路、ワインディングロードと、さまざまなシチュエーションで長い距離を走ったが、全体にとても気持ち良く走らせることができた。ワインディングのタイトなコーナーではボディの大きさが気になるシーンもあったが、細めのAピラーによって斜め方向の視界を確保しやすくしていることなどによってストレスの少ない走りが可能だった。

　足回りはやや柔らかめの味付けで、このクラスのライバル車となるBMWのX3やアウディQ5などとは明確に異なる印象。乗り心地の良さをしっかり確保しつつ、操縦安定性との両立を図っている。X3やQ5が固めた足回りによってほとんどロールしないような走りを示すのとは好対照で、適度にロールさせながらも収まりの良さによって安心して走れる足回りに仕上げている。走りの快適性という点では、室内の静粛性などもプレミアムモデルらしい満足のいくものだった。
価格は599万円で、X3やQ5に対して十分な競争力のある水準に設定されている。絶対的には安いとはいえない水準だが、競合車と比較すると動力性能や装備、仕様で上回っていて、お値打ち感を感じさせる価格設定がなされている。最後に登場してきたコンパクト プレミアム クロスオーバーらしい設定といえる。

代表グレード	ボルボ XC60 T6 SE AWD
ボディサイズ［mm］（全長×全幅×全高）	4625×1890×1715mm
車両重量［kg］	1930kg
総排気量［cc］	2953cc（ターボ）
最高出力［ps(kw)/rpm］	285ps(210kw)/5600rpm
最大トルク［kg-m(N・m)/rpm］	40.8kg-m(400N・ m)/1500〜4800rpm
ミッション	6速AT
10・15モード燃焼［km/l］	7.8km/l
定員［人］	5人
税込価格［万円］	599.0万円
発売日	2009/8/29
レポート	松下宏
写真	佐藤靖彦