「震災復興どころか、それを支える日本のものづくりも終わる」無策な政治にトヨタの悲鳴! トヨタ自動車決算発表
連結営業利益は、前期の約3.2倍、4,682億円
大幅な利益向上要因は、営業面の努力や原価改善によるものと、日本を除く海外での収益が好調だった。とくに、アジアでの大幅な販売台数アップがけん引した。
とりあえず、震災損失は1100億円だが・・・
震災の影響での震災損失は1100億円。しかし、これは3月分ということであって長引く震災復興の過程では、来季はさらに膨らむ可能性もある。とくに、懸念されるのは国内での販売台数。4〜6月の工場稼働率が50%程度。単純に販売台数も50%ダウンと仮定すると、今期の約190万台の販売台数だったものが、7月以降平常の生産に戻ったとしても150万台割れが懸念される。
そんな全く見通しの立たない生産状況もあり、来季の見通しについては、コメントを差し控えるという異例の決算発表会となった。
震災復興のため雇用確保をしたいが、工場の稼働率低下や電力不足、そして超円高がトヨタの足を引っ張る
記者会見場で豊田章男社長は「トヨタは、日本で生まれ育った企業。より早く震災復興をするためにも、トヨタは雇用をいかに守るかを考えている。日本のモノづくりを守りたい」とコメント。
そんなトヨタの想いも外部環境に阻害される。今期トヨタ単体では、4,809億円の赤字となった。前期よりも1,529億円も増えた。その多くは3,300億円もの為替損失。前期比ドルで7円、ユーロで18円もの円高が進んだためだ。トヨタが今期目指していた「750万台生産、為替85円で5%の営業利益」を大幅に割り込む80円台という急激な円高が足を引っ張っている。
さらに、夏の電力不足や噂される増税による消費マインドの低下、さらには電力料金の値上げ。どれをとっても、震災復興=雇用の確保を目指す企業にとって、なにひとつ良い材料は見つからない。
「いち企業の努力の限界を超えている」小澤副社長の悲痛な想いと、無力な政治
日本国内での生産にこだわり、雇用とモノづくり、世界一の自動車メーカーの義務としての納税を守っていきたいトヨタにとって、グローバルでの戦いはすでにハンデ戦となっている。通貨安の恩恵を受け、韓国&ドイツ勢の台頭がいい例だ。さらに、震災という大きな痛手まで負った。
今回の震災でリスク回避のために「日本ではなく海外に生産拠点を」と考える部品メーカーも多い。企業という存在維持を考えるのなら、それも生き残る道だが日本の産業は空洞化し日本の企業だが働く場所がなくなってしまう。つまり、日本のモノづくりの消滅だ。「グローバル競争力」という大義名分を武器に、海外へ脱出するだろう。すでに、そんな流れも着実に進んでいて、日産自動車は昨年主力小型車マーチをタイで生産し日本へ逆輸入を始めている。
円高だけならまだましだが、震災というハンデを背負ったトヨタにとって、もはや海外の企業と同じ土俵では戦えないほどになったということだ。
小澤副社長の「いち企業の努力の限界を超えている」というコメントは、なにもトヨタだけに限ったことではなく、すべての製造業に当てはまる。世界一の自動車メーカーが悲痛な叫び声を上げているということは、裾野の広い末端の製造メーカーは、もはや声も涙も出しつくした感もある。それだけ緊迫した状態なのだ。
そんな中、なんの経済刺激策も打ち出せない民間任せな無力な政治が足を引っ張っている。
「もはや、トヨタも日本に居られなくなる」そんな言葉が出るほど、無策な政治
震災復興の方法は、各社知恵を出し乗り越えられるとしても、異常な円高は企業がなんとかできるものではない。今回のトヨタの悲痛なまでの叫び声は、せめて、企業が継続して復興支援ができるように、何らかの円高対策してほしいとの要請でもある。
今回のトヨタの決算を聞いて、政府はまだまだイケると思うのか、それともかなり危機感を抱くのか、どちらだろうか? それとも無関心か? 日本政府の実力が試される、が・・・。
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