日本以上に日本車のシェアが高いインドネシア!? 新工場建設で、さらに勢いを増す日産(ダットサン)の戦略とは? アジア戦略車のダットサンGOにも試乗! [CORISM]
なんと日本車のシェアは95%! インドネシアは、ミニバン人気?
インドネシアの自動車市場は、1990年代後半のアジア通貨危機のときに大きく落ち込んで壊滅的な状況になった後は順調な回復を見せ、リーマンショックのときもほとんど落ち込まなかった。2013年の新車販売台数は124万台に達していて、今後も順調な伸びが見込まれている。
注目されるのは、日本車のシェアだ。早くからトヨタ やダイハツ が進出し、ホンダ 、マツダ 、スズキ なども力を入れている。さらに日産も本腰を入れるようになったことから、日本車のシェアは95%を超えている。日本以上に、日本車のシェアが高いのがインドネシアだ。
人口ボリュームの大きさから今後の大きな成長が見込める国とされていて、日系自動車メーカー各社はLCGCを中心に、さまざまな車種を投入するようになっている。
LCGCというのはロー・コスト・グリーン・カーの略で、低価格で販売される環境性能に優れたクルマという意味。政府がこれらの条件に合致したクルマの税額を引き下げる政策をとっていて、自動車の普及を経済発展のテコにしたいと考えている。
東南アジアでは、タイがピックアップトラックが良く売れる市場として知られているが、インドネシアは多人数乗車のミニバン が良く売れる市場だった。トヨタがIMV(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ビークル)のキジャンを量販するなど、以前からミニバンの販売比率は高いが、LCGCはコンパクトカー が中心で、日産は3列シートのGO+(ゴープラス)もLCGCとして売り出している。日産 の販売政策を中心に、インドネシアを取材した。
日本のオジサン世代は納得できない!? エントリーブランドとしたダットサンで、マーケットシェア2倍以上を目指す!
ちなみに、日産に次いでLCGCとして認可されたトヨタ のアギアと、ダイハツのをアイラはいずれもインドネシア専用車で、ホンダはインドやタイで販売されているクルマを導入したため、ブリオ・サティアというサブネーム付きで販売しており、スズキもカムリオン・ワゴンRの名前で販売している。
日産は、ダットサンをエントリーモデル用ブランドとして使うことにして、インドやロシアなどで低価格車のGOの展開を始めている。ダットサンが日産本来のブランドであり、フェアレディZ もサニーもダットサンとして販売されていた時代を知っている者からすると、ローエンドのエントリーカーがダットサンというのには、やや違和感もある。
話をインドネシアに戻すと、日産はインドネシアでは後発メーカーであり、トヨタやダイハツなどの先行メーカーを追いかける立場にある。
2013年の販売台数も5万8000台ほどにとどまっていて、GOとGO+や新型エクストレイルの発売で2014年には9万台を目指し、2016年には16万台を販売して、インドネシア市場でのプレゼンスを高めていく計画としている。現在は、5%前後にとどまっているマーケットシェアも10%を超える水準を目指すとのことだ。
そのために、2014年にダットサンブランドを立ち上げた時点で39店舗にとどまっていた販売店を2014年の終わりには105店舗にまで拡大し、年内に4万台を販売する計画である。
競合メーカーのLCGCがハッチバック 車だけであるのに対し、3列シートのG0+をラインナップすることを強みに販売を強化していく計画である。
今回の取材でGOを扱うダットサンのディーラーを取材したが、GOの2車種しか取り扱いがないことから、ダットサン専売ディーラーではなく日産ブランドと併売する形でディーラーが展開されていた。建物内では日産ブースとダットサンブースは明確に分けて展示されていた。
インドネシアに第2工場を建設し、需要増に対応。日本人従業員数は、わずか10人! 徹底した現地化が進んだ工場だ!
工場には3000人ほどの従業員がいるが、そのうち日本人はわずか10人だけで、ほとんどがインドネシア人によって運営されている。東南アジアには、さまざまな国にさまざまな自動車メーカーが進出しているが、ここまで徹底して現地化が進められた工場を珍しい。
新興国の工場らしく、ラインが自動化されている部分はほとんどない。今回見学したのは、組み立てラインだけだが、溶接ラインも含めて基本的に人間の手でクルマが運ばれ、組み立てられている。部品容器の回収など、付加価値を生まない部分では、ごく一部自動化されているが、きわめて限定的である。
ダットサンGOの走りは、軽量ボディ+1.2Lエンジンで余裕のある走り! しかし、新興国向けのため安全装備や乗り心地は・・・。
日産GOとGO+には1200ccのHR12型エンジンが搭載されている。このクラスのクルマには1000ccエンジンが搭載されることが多いが、排気量に余裕がある分だけ、そこそこ良く走る印象があった。
エンジンの動力性能は50kWの実力ながら、車両重量がGO+で812kgと相当に軽いため、ボディに見合った動力性能という感じでけっこう良く走った。
ただ、いろいろな走りを試したわけではないものの、足回りについては何とも仕上がり不足の印象があり、特にチープなタイヤが装着されていたことから、乗り心地や操縦安定性には物足りなさを感じた。
同時に試乗したグランドリヴィナも中国などの新興国向けに開発されたクルマだが、こちらのほうがはるかにまともなクルマに仕上がっていたと思う。
GOやGO+には横滑り防止装置のVDCはおろか、ABSも装着されていないから、日本ではクルマとして認められない存在である。インドネシアのような新興国で、クルマを持つことによって幸せになると考えるユーザーにとって、一定の意義を認めることはできるが、新興国のエントリーユーザーも、すぐにこの仕様では満足できなくなるのではないか。そんな風にも考えた。
ただ、逆の考えもある。最初にダットサンに乗り始めたユーザーは、その後もダットサンに乗り続ける可能性が高いことだ。
これは、日本のメーカーがアメリカに進出した当初のことを考えても想像がつく。最初にトヨタやホンダ、日産のコンパクトカー から乗り始めた若いユーザーは、成長して収入が増えた後も日系ブランド車に乗り続けた。
GM やフォード などが、いずれ大きくて豪華なアメリカを求めるようになるはずと考え、高を括って待っていたら、日系ブランド車にとどまったままのユーザーが多かったのだ。
だから、ダットサンブランドでエントリーユーザーを確保し、それを将来的に投入されるダットサンに引き継ぎ、また日産車に引き継いでいくという戦略は理解できる。
トヨタやダイハツ、ホンダなども、インドネシアの市場と政府の政策に合致したクルマを供給しているわけで、インドネシアでは当面はLCGCを中心にした低価格車の販売が伸びていくのは間違いない。
レポート:松下 宏
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