「ナニにも似ていないから生まれる圧倒的な存在感が武器になる」日産ジューク【自動車マーケット一刀両断】[CORISM] [CORISM]

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【ビジネス・経済】2010/06/11
SUV ジューク 日産

日産 JUKE(ジューク)の開発責任者、日産自動車 商品企画室 松冨 諭(まつとみさとし) チーフプロダクトスペシャリスト

好きか嫌いか両極端?

日産 ジューク リアビュー
 日産ジュークを初めて見たとき、素直に「カッコイイ」と思えた。だが、デザインは難しい。カッコイイ、カッコ悪いというのは、かなり見る人間の好き嫌いに依存するからだ。とくに、この日産ジュークのデザインはアクが強い。明確に好き嫌いがハッキリするようスタイリングをもっている。最近の日産デザインは、ある程度好き嫌いが明確に出る傾向にあるが、このジュークはその中でもさらに異彩を放っている。より多くのクルマを売らなければならない自動車メーカーにとって、このジュークのデザインは、かなり勇気のある選択だったのではないだろうか。
 「BORN ORIGINAL(生まれながらのオリジナル)がジュークの原点です。そのため、走りとデザインには妥協せずに開発してきました。しかし、お客様に本当に受け入れられるかどうか、というのは確かに心配でした。自己満足で終わっては、なんの意味もありませんからね。ちょうど1年半前くらいに、欧州でお客様にジュークを見せて反応を調査しました。すると、ドイツでは全然ダメでした。ドイツ人は固定概念が強いのか、クルマはこうあるべきというような想いも強く、ジュークのデザインはあまり受け入れてもらえなかったのです。ところが、イタリアに持っていくと、こんなクルマが欲しかった! と、絶賛です。そして、日本。草食系男子のお客様には支持されないだろうなぁ、と思っていたのですが、想像以上の好印象でした。さらに、女性にはまったく受け入れてもらえないだろう、と思っていたのですが、これがなぜか、カワイイ! と、いうまったく想像もしていなかった言葉が出てビックリしました」と語ってくれたのは、ジュークの開発責任者である日産自動車 チーフプロダクトスペシャリストの松富 諭さん。
日産 ジューク デザイン検討用クレイモデル

こちらはデザイン検討用の1/1クレイモデル。粘土を削りつつ、微妙なボディ表面のラインを決めてゆく。

日産 ジューク リア周り

コンパクトカークラスとは思えぬほどの強烈な存在感を放つジュークのリアビュー。

日産 ジューク インパネ周り

インテリアも凝っている。センターコンソールはバイクのタンクをイメージ。位置を高くすることでスポーツカーのようなドラポジ感を狙った。

新技術を大量投入しながらローコストに

日産自動車 商品企画室 松冨 諭(まつとみさとし) チーフプロダクトスペシャリスト
 日産ジュークのウリは、デザインだけではない。ハード部分にも、かなりマニアックな新技術が投入されている。ジュークには、マーチなどのコンパクトカーと同じBプラットフォームを採用している。スポーツカー並みのハンドリングというテーマを具現化するために高剛性の井桁サブフレームを追加。ミッションは、副変速機付きのCVTを採用。燃費向上に大きく貢献。エンジンは1気筒当り1本だったインジェクタを2本にする世界初のデュアルインジェクタシステムを搭載し、こちらも燃費に貢献している。デュアルインジェクタシステムは、直噴化するより低コストでの開発でき燃費向上が見込める技術。こういった技術のおかげで、169万500円からのロープライスが実現できた。
 「速度域の高いヨーロッパをベースに開発していたということもあり、高い走りのパフォーマンスは絶対条件でした。また、SUVであってもスポーツカーのような走りを実現するために、走る楽しさを徹底的に追求してきたつもりです。走りがいいからといって、環境性能(燃費)を無視するわけにはいきません。すべてを満たすために、大小の新技術が満載されているのもジュークの魅力のひとつです。この価格帯のクルマで、これだけの新技術が注ぎ込まれているクルマって、そうないですよ。そういう意味では、本当にお買い得だと思います。デザインやコンセプトが尖っているので、誰にでも合うというクルマではないと思っています。ですから、このジュークの本質をご理解いただける方に、ジックリと売っていきたいですね」
 確かに日産ジュークのデザインは個性が強い。どうも、保守層や年配には敬遠される傾向にある。クルマ離れが叫び続けられている現状、こういったアクの強いクルマの登場によって「ジュークって、なんか気になるよね」と思ってもらえたら日産の勝ちかもしれない。

安全装備の充実を望みたい

松冨 諭サンと日産 ジューク
 唯一残念なのは、横滑り防止装置がオプションですら装着できない点だ。ヨーロッパやアメリカなど自動車先進国では、すでに標準装備化が進められている。それなにの、日本仕様には、オプションですら装着ができない現状をどう捉えるべきなのだろうか。「ユーザーは安全性よりも、販売価格重視」。それもマーケティング結果として、その通りかもしれない。だが、スバルのレガシィに搭載されたアイサイト(カメラを使った衝突回避の安全支援システム)は、約10万円のオプションにもかかわらず50%ほどの装着率を誇っている。まったく同じ機能ではないので、単純に比較はできないが、ユーザーは安全より価格重視ではない。と、いうのも証明された。ジュークへの横滑り防止装置装着へ期待したい。

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