「技術はお客様のためにあります。我々自動車メーカーは、ついついその技術力を誇示してしまいがちです。それでは、クルマが家電のように選ばれるようになった現在では、お客様に伝わらないのです。だから、技術のひとりよがりには気を付けて開発してきました。例えば、アイドリングストップ機能は、再始動が極めて早く業界トップレベルの実力です。しかし、重要なのはアイドルストップや再始動の早さが目的ではないのです。実用燃費を向上させたい、より自然で静かであるという、お客様に新型セレナを実際に使う上でベネフィットが大切であると考えています。そこを追及していくと、クラス最高燃費を生み出した直噴エンジンや自然で早い再始動を可能にしたアイドリングストップ技術に行き着くのです。開発責任者の角はマジメで、見せかけだけのハデさやハッタリではなく、お客様のためにどういった技術が必要か十分理解して最高なものを作ってくれました。
　また、日産社内においても、セレナ世代がたくさんいます。実際に自分が使っていたりしますし、次に購入したいクルマでもありますから、みんな力が入りますしアイディアもたくさん出てくるんです。さらに、新型セレナは国内専用車です。日産車のほとんどが、グローバル展開ですから、中国やアメリカ、ヨーロッパといった色々な要素を含んで開発されます。ですが、新型セレナは、日本のお客様のためだけ。そういった恵まれた環境の中で開発できたのも、良かったのかもしれません」

　クルマとして完成度を高めた新型セレナだが、プロモーションにも新しい試みも行われている。今までは、親の目線から見た子供とクルマという関係から、子供目線からのクルマとの関係にも力を入れている。人気アニメ「ワンピース」とのタイアップだ。悪く言うと子供をダシにしているとも取れるのだが、それだけではない。10年以上の連載をしている人気漫画だけに、親子で楽しめるほか女性にも人気が高い。ホンダのステップワゴンも同様にウルトラマンで家族を訴求するが、ウルトラマンは男性に傾倒した人気のキャラクターだ。ワンピースは、男性女性問わずに人気があるというのが、ホンダと日産の考え方の違いだろう。
　また、ワンピースの仲間＝家族、船＝セレナというイメージが連想されやすいので、セレナの世界観と合うというもタイアップの理由のひとつ。新型セレナをお茶の間に伝え、家族共通の言語でクルマを語るというものだ。家電化した自動車の新マーケティング手法を駆使して、新型セレナは4年連続販売台数ナンバー１の座を狙う。