危機感がモデルチェンジを早めた? スズキワゴンR/ワゴンRスティングレー試乗!
スズキ ワゴンRが、フルモデルチェンジを受けた。1993年に初代モデルがデビューして以来、これまできっちり5年ごとにフルモデルチェンジを重ねてきたクルマだが、今回は4年でフルモデルチェンジを迎えた。
この間にスズキは軽自動車販売首位の座をダイハツに奪われ、銘柄別ランキングでは首位を維持してきたワゴンRも今年はN BOXにあおられて首位の座が危うくなっていることから、モデルチェンジの時期を繰り上げたのではないかなどと言われているが、クルマのフルモデルチェンジは、そう簡単に1年も繰り上げられるものではない。
ただ、スズキが現在の状況に満足していないというか、危機を感じているのは間違いなく、銘柄別販売ランキング首位、あるいは軽自動車販売首位、軽自動車生産台数首位などを確保するために、早い時期から主力車種のワゴンRのモデルチェンジを繰り上げることにしたのだろう。
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約2倍の発電能力のあるオルタネーターを搭載。だから「発電エコカー」エネチャージ?
渡辺 謙が出演するCMで、発電エコカーをキーワードにした軽自動車、5代目新型ワゴンR/ワゴンRスティングレーがついにデビューした。
ワゴンRは、1993年にデビュー。当時、軽自動車といえば、アルトに代表されるロールーフ型が主流だった。そんな中、背の高いワゴンタイプボディを持ったワゴンRは、軽自動車に足りないと言われていた居住性を革新的なパッケージングで解決。広々とした空間と、アップライトなドライビングポジションがもたらす見晴らしの良さから空前の大ヒットとなり軽ワゴンのパイオニアと呼ばれるようになる。2010年末には、国内累計販売台数が350万台を超え、まさに、スズキの大黒柱となっている。
そんな、大黒柱である新型ワゴンRゆえ、フルモデルチェンジに際し、スズキにとって例を見ないほどの大量のCMが投下されている。そのキーワードは「発電エコカー」。ダイハツとの燃費競争に出遅れたスズキは、スズキ=低燃費というイメージを奪還すべく、軽自動車としては驚くほどのテクノロジーを投入して、JC08モード28.8km/Lを達成し「軽ワゴン燃費ナンバー1」の座を奪取した。
発電エコカーというキーワードは、多少誤解しやすいところがあるが、エネチャージと呼ばれる減速エネルギー回収機能のことだ。何らかの方法で、自ら発電してモーターなどでアシストし走るハイブリッドの類ではなく、一般的なガソリン車だ。
まぁ、スズキが発電エコカーと呼ぶには、それなりのワケがある。このエネチャージには、一般的な軽自動車の約2倍の発電能力がある高出力オルタネーターを装備する。この約2倍の発電量が発電エコカーの理由なのだろう。
高価なリチウムイオン電池を使い、電気を効率良く充放電する!
クルマで使う電力は、タダではない。通常は、エンジンをかけた時からエンジンの力を使いオルタネーターで発電している。エンジンから見れば、オルタネーターは完全に抵抗で、燃費を悪くしているのだ。つまり、我々はオルタネーターの発電で悪化する燃費分の燃料費を電気として使っている。エネチャージでは、必要電力のほとんどを減速時のエネルギーでまかなう。加速時にオルタネーターを切り離すことで、エンジンの負荷を低減し低燃費化しながら軽快な走りも実現している。
さらに、驚きなのは、約2倍の発電した電気を軽自動車なのに電気自動車や一部のハイブリッド車にしか使われない高価なリチウムイオン電池を使い瞬時に貯める。通常の鉛バッテリーと2つの系統を持ち、効率良く充放電を繰り返すのだ。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、充放電が早いのでEVやハイブリッド車などに使う場合、最も効率がいい電池と言われている。この新型ワゴンRに使われるリチウムイオン電池の容量は、36whというノートPCなどに使う小さな容量のもの。
減速エネルギー回生システムで得た電気を貯める方法は、各社色々と手法が異なっている。10月にデビュー予定という新型マツダ アテンザには、電池のように化学変化をさせないで、電気のまま蓄電するi-ELOOP(アイ・イーループ)と呼ばれるキャパシタを使う。
蓄冷剤入りのエアコン、エコクールと、低速域からエンジンが停止するアイドリングストップ機能
スズキ新型ワゴンRは、さらに低燃費化するためにエコクールを開発。このエコクールは、新型ワゴンR全車に標準装備されるアイドリングストップ機能の効果をより高める技術。一般的に、アイドリングストップしていると、多くの電力を使うエアコン機能は送風へと切り替わり節電モードに入る。そのため、より長くアイドリングストップさせ低燃費化する。
しかし、室内温が一定以上になると、まだアイドリングストップできても、室内が不快になるためエアコンが始動するのだ。このエコクールの発想が素晴らしいのは、エアコンユニット内に蓄冷剤が入っている。通常走行時に冷やされた蓄冷剤は、アイドリングストップすると送風へ切り替わるが、蓄冷剤を経由するので冷風を室内に送ることができるのだ。これなら、室内温が急激に上昇することを抑制し、エアコンを再始動するまでの時間が長く取れる。つまり、アイドリングストップしている時間を長くし、結果、低燃費化するというものだ。
そして、肝心のアイドリングストップ機能も進化している。アルトエコに搭載されたアイドリングストップ機能は、9km/h以下になると停止するものだった。新型ワゴンRのアイドリングストップ機能は、なんとさらに速度を上げ13km/h以下と結構な速度なのにエンジンを停止させる。このあたりは、試乗時にジックリとチェックしたい。ちなみに、第3のエコカーで有名なダイハツ ミラ・イースは、7km/hでエンジンを停止。そう考えると、新型ワゴンRのアイドリングストップ機能は、ミラ・イースの倍近い速度でもエンジンを停止しているということになる。
細かい技術の積み上げで生まれた28.8km/Lという超低燃費
こういった最新テクノロジーでの低燃費化の他に、もっともベーシックな方法として車両重量の軽量化が上げられる。新型ワゴンRは、軽ワゴン最軽量の780kgと達成。先代ワゴンRに比べ最大で70kgものダイエットに成功した。
エンジンもアルトエコに搭載されているR06A型を、さらに改良した新世代エンジンを搭載した。CVTもワイドな変速比を実現したジヤトコ製副変速機付きCVTの改良型を採用している。また、全高を20mm下げ、ルーフの傾斜を緩やかにすることで空気抵抗を低減した。
このような、細かい低燃費化の技術の積み重ねが28.8km/Lというクラスナンバー1の低燃費を実現しているのだ。また、今まで燃費が悪いといわれていたターボ車も26.8km/Lを達成し、全車エコカー減税免税という快挙を実現している。
新型ワゴンRには、オプションでも装着できない予防安全装備があった!
新型ワゴンR/ワゴンRスティングレーのスタイルは、徹底したキープコンセプト。オーナーでない限り、先代モデルを横に並べないと、その違いがスグに分からないくらいだ。これだけ、徹底した低燃費化が行われたのだから、思いっきり大胆なスタイルチェンジもあってもいいと思う。しかし、多くの顧客に愛され続けているスズキの大黒柱でロングセラーモデルゆえに、大きな冒険ができないという事情もあったのだろう。
パッケージングは、先代比+25mmという超ロングホイールベース化され2,425mmになった新プラットフォームが開発された。このプラットフォームの恩恵で、室内長は2,165mm(+115mm)、前後乗員間距離1,000mm(+25mm)と、さらに広大な室内となっている。ホイールベースを延長しながらも、先代の14インチホイール車と同じ4.4mという使いやすい最小回転半径も継承した。
軽自動車で、ここまでやるのか! と、驚くほどの低燃費化テクノロジーを投入した新型ワゴンR。価格も1,109,850万円からと、最先端の低燃費技術が投入された割りにはお買い得感が高い。より良い物を低価格で買えるという努力は、さすがスズキといえるものだ。
だが、安全装備に関しては不満もある。滑りやすい路面や、緊急時に車両を安定させる横滑り防止装置ESPがスティングレーのみオプション設定で、ワゴンRにはオプションでも設定できない。低燃費ブームで、多くの顧客から注目されるような部分には、スズキの意地をかけているものの、分かりにくいがクルマの基本ともいえる予防安全装備に関しては、残念ながら軽視しているようだ。
ココだけをフォーカスするのなら、いかにもマーケティング的な商品企画である。軽自動車は、新型生産2014年10月1日以降に新たに型式の指定を受ける自動車、継続生産車は2018年2月24日以降に製作される自動車には、横滑り防止装置の搭載が義務付けられる。燃費同様に、規制を先取りして安全装備を高めるという気概を見せて欲しかった。
実際に、新型スズキ ワゴンRを買う場合、燃費だけでなく、こうした安全装備にも注目してクルア選びをすることをオススメしたい。小さいクルマなので、安全性は重要だ。今の段階ならば、横滑り防止装置をオプション装着するのなら、ワゴンRスティングレーを選ぶしかなく選択肢はイッキに減る。この安全装備以外は、非常にレベルの高い完成度を持ち、お勧めできる軽自動車といえる。
<スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレー価格>
■ワゴンR
・FX 2WD 1,109,850円
4WD 1,227,450円
・FXリミテッド 2WD 1,249,500円
4WD 1,367,100円
■ワゴンRスティングレー
・X 2WD 1,333,500円
4WD 1,451,100円
・T(ターボ) 2WD 1,496,250円
4WD 1,613,850円
代表グレード | スズキ ワゴンR FX |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3,395×1,475×1,640mm |
ホイールベース[mm] | 2,425mm |
トレッド前/後[mm] | 1,295/1,290 |
車両重量[kg] | 780kg |
総排気量[cc] | 658cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 52PS(38Kw)/6000rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 63(6.4/4,800rpm |
ミッション | CVT |
タイヤサイズ | 155/65R14 |
JC08モード燃費 | 28.8km/L |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 1,109,850円 |
発売日 | 2012/9/6 |
レポート | 編集部 |
写真 | 編集部 |
2012年8月26日更新 スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレー、発電エコカー9月6日フルモデルチェンジ決定!
新型スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレーが、9月6日にフルモデルチェンジすることが決定した。新型ワゴンRは、下記で解説している通り、高価なリチウムイオン電池を使った減速エネルギー回生システムや、アイドリングストップ機能を長時間使えるエコクールという低燃費技術を駆使して、クラスナンバー1低燃費28.8km/Lを達成した。未だ、新型車であってもアイドリングストップ機能がオプションというクルマが存在する中、軽自動車がここまでやるのか! と、いうほど気合タップリのフルモデルチェンジだ。発電エコカーというキャッチフレーズでCMも流れている。
すでに、ディーラーでも先行受注活動中。営業マンによると、スタイルは限りなくキープコンセプトで大きくイメージチェンジすることはない。キープコンセプトのデザインは、ワゴンR/ワゴンRスティングレーとも同じだという。
また、フルモデルチェンジということでプラットフォームも新しくなったという。新しくなったプラットフォームのおかげで、ホイールベースも伸び居住性もさらに上がったとの説明だ。低燃費技術に居住性のアップと新型ワゴンRの完成度に期待が高まる!
軽自動車初! ワゴンRは、ここまでやった! リチウムイオン電池を搭載した減速エネルギー回生システム
スズキは、急速に進む低燃費化に対応するため、高価なリチウムイオン電池を使った減速時エネルギー回生機構「ENE-CHARGE(エネチャージ)」と、蓄冷材を通した冷風を室内に送る「ECO-COOL(エコクール)」を開発した。
このシステムは、2012年9月上旬にフルモデルチェンジされ発売される新型スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレーから搭載される技術だ。この技術は、低燃費化でダイハツに比べ遅れを取ったスズキが、意地の起死回生を図る画期的なもの。
普通乗用車では、未だに新型として出てきたモデルでさえ、コストを言い訳にアイドリングストップ機能さえ標準装備化できないメーカーもある。よりコストが重視される軽自動車でありながら、アイドリングストップ機能だけでなくエネルギー回生などまで装備した新型ワゴンRは、日本マーケットに大きな衝撃を与えるものだ。この技術により、新型スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレーは、軽ワゴンクラスでトップの低燃費28.8km/Lを実現した。
アイドリングストップ機能は、ダイハツのミライースが7km/h以下でエンジンが停止するのに対して、アルト エコは9km/h以下だった。新型ワゴンRでは、さらにエンジン停止速度の見直しや適切なタイミングでのエンジン再始動など、さらに制御を進化させた新アイドリングストップ機能になった。恐らく10km/h以上のスピードでもエンジンが停止すると思われる。
このアイドリングストップ機能と組み合わされるのが、エネチャージだ。高級車では、すでにドンドンと採用されている低燃費化技術としては基本的なもの。通常のクルマは、加速時でも減速時でもオルタネーターで発電している状態。エアコンやナビなどを動かすクルマの電気代は、タダではない。エンジンの一部動力を使いオルタネーターで発電している。動力を使うということは、燃費は悪化する。この発電を加速時にしないことで、エンジンの負荷を減らし燃費を上げるというものなのだ。
発電するのは、減速時などエンジンの負荷がない状態で行う。減速時にエネルギーで、オルタネーターを回し発電してバッテリーに蓄える。通常、エネルギー回生システムは、メーカーによって異なるが、1つの鉛バッテリーやサブバッテリーで対応する場合が多い。鉛バッテリーを採用する理由は、コストによるところが大きい。しかし、スズキのエネルギー回生システムは、なんと高価なリチウム電池を使う。トヨタのハイブリッド車でさえニッケル水素電池だ。リチウムイオン電池を使うのは、大きな電力を使う日産リーフなどのEVくらい。
リチウムイオン電池は、素早く充放電できるなど、高効率・高出カのオルタネーターを併用した場合に高い効果を発揮するという。この電池の容量は36Whという小さなもの。少し大きめなPC用バッテリーくらいだろう。当初は、規格ものの18650型かと思ったのだが、スズキ技術者に聞くと自社開発だそうだ。ただし、リチウムイオン電池は高価。それを燃費のためとはいえ、大胆にも価格競争が重要な軽自動車でチャレンジしたスズキのチャレンジはさすがである。このリチウムイオン電池は、新型ワゴンRの助手席下にセットされる。
快適性を損なわず、さらにアイドリングストップ時間を延長させ低燃費化したエコクール!
エコクールは、エアコン空調ユニットの中に蓄冷材を採用し、アイドリングストップ中の車室内に蓄冷材を通した冷風を送る機構。通常は、アイドリングストップ時は、送風になる室内音は上昇する。それを単純に冷気で快適な室温を維持するというだけではない。
アイドリングストップ機能は、バッテリーに余力があっても室内温度がある一定になると、快適性を重視しエアコンを始動する。つまり、アイドリングストップできる力があるのに、しないのだ。室温が基準値まで上がる時間を長く取れれば取れるほど、再始動しエアコンをかける必要がないので、結果、燃費が向上するというものなのだ。
日本のマーケットは現在、ダウンサイジング化が加速中。一時は、コンパクトカーへのシフトだったが現在では、コンパクトカーから軽自動車へのダウンサイジングが目立ち始めている。僅かな排気量しか無い軽自動車が、ここまでやって燃費向上を図りCO2の排出量を低減している。しかし、未だ、新型車として出てきたクルマの中には、アイドリングストップ機能を標準装備さえしない、もしくはアイドリングストップ機能さえ付いていないコンパクトカーも存在する。コンパクトカーと軽自動車、どちらも高い価格競争が必要なクルマだ。環境性能という面だけでみれば、軽自動車がコンパクトカーを超える逆転現象が起き始めた。そんな新型スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレーは、9月上旬に発売される。コスト意識の高いスズキだけに、販売価格にも注目だ!
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