スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレー新車試乗評価 スズキの危機感が高めたワゴンR史上、最高の燃費と完成度! を評価する!!
苦しいスズキの台所事情を反映したワゴンRの前倒しフルモデルチェンジ!
スズキ ワゴンRが、フルモデルチェンジを受けた。1993年に初代モデルがデビューして以来、これまできっちり5年ごとにフルモデルチェンジを重ねてきたクルマだが、今回は4年でフルモデルチェンジを迎えた。
この間にスズキは軽自動車販売首位の座をダイハツに奪われ、銘柄別ランキングでは首位を維持してきたワゴンRも今年はN BOXにあおられて首位の座が危うくなっていることから、モデルチェンジの時期を繰り上げたのではないかなどと言われているが、クルマのフルモデルチェンジは、そう簡単に1年も繰り上げられるものではない。
ただ、スズキが現在の状況に満足していないというか、危機を感じているのは間違いなく、銘柄別販売ランキング首位、あるいは軽自動車販売首位、軽自動車生産台数首位などを確保するために、早い時期から主力車種のワゴンRのモデルチェンジを繰り上げることにしたのだろう。
モデルチェンジを繰り上げたにもかかわらず、新型ワゴンRにはいろいろな新技術が盛り込まれた。エネチャージ、エコクール、新アイドリングストップ機構などがそれで、電気の力を上手に利用して軽自動車の環境性能を高めるもので、相当に意欲的な技術開発がなされている。これらについては後で詳しく紹介したい。
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■スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレー新車情報/購入ガイド エネチャージで発電エコカー!
代わり映えのしないデザイン。新しくなった気がしない!
本題のワゴンRの試乗に入ろう。まずは、ワゴンRの外観デザインだ。これには文句がある。あまりにも変わらな過ぎるからだ。ぱっと見ただけでは、ワゴンRであることは分かるが、新型なのか旧型なのか分からないくらいの違いでしかない。デザイナーは何か仕事をしたの? と言いたくなるような変更感だ。
スズキは現行スイフトがデビューしたときにも、外観デザインをほとんど変更しなかったが、今回はスイフト以上に変わらない印象だ。ワゴンRの持つ基本パッケージングの良さを生かし、ワゴンRらしさを表現するとこうなるのかも知れないが、もう少し新型らしさが欲しいと思う。
ワゴンRスティングレーは、多少は変更感があるように思われるが、標準車のほうは本当にじっくり見ないと新型なのか旧型なのかが分からない。間違い探しのパズルをやるかのようだ。ワゴンRを毎日見ているオーナーなら分かるということなのだろうか。
インテリアは、外観に比べたら変更感があるというか、すっきりして新鮮な感じのインテリアデザインとされている。
シフトレバーをインパネに配置して横移動が可能なベンチシートを採用し、開放感のある室内としていることなどは従来と変わらないが、内装部品の構造を見直して、インパネ上面を20mm低く、オーディオを20mm遠方に、ピラーのトリムの張り出しも20mm抑制するなど、細かな工夫によって開放感を高めていると評価できる。
このほか、ホイールベースを25mm延長した新プラットホームを採用することで、前後シート間の距離も25mm拡大し、低めのリヤステップ高を採用して乗降性を高めるなど、パッケージングの進化も図られている。
軽さは武器だ! スムースで軽快感のある新型ワゴンRとワゴンRスティングレー
さて、新型ワゴンRの試乗といこう。ワゴンRのFXリミテッドに乗って軽くアクセルを踏むと、普通にすっと走り出す。あれっ? と思うくらいにスムーズな走り出しだ。今回のワゴンRでは最大で70kgボディの軽量化が図られた。試乗したFXリミテッドの車両重量は790kgで、全高の低いアルトとそう変わらない重量になっている。
新しい電子制御技術の採用より、この軽量化のほうが今回のワゴンRのフルモデルチェンジで注目されるポイントだ。やっぱ、クルマは軽いことが大切だというのが、走り出した瞬間に分かる。そのままアクセルを踏んでいくとスムーズに加速していく。
副変速機付きのCVTは、CVT特有のダイレクト感に欠ける印象は残るものの、それを不満として感じるまでもなく、スムーズな走りが得られるのが良い。
柔らかめな味付けの足回りは、今回から仕様が少し変更された。従来のモデルではFXには装備されないが、FXリミテッドには装備されていたフロントスタビライザーが、新型ワゴンRでは標準では廃止されたのだ。
スタビライザーがないことで、操縦安定性が大きくスポイルされたと言われれば必ずしもそうではなく、日常ユースの範囲内では問題はないのだが、急な飛び出しに対応する回避操作などを試すと、ぐらっとする感じがある。
スティングレーに全車に(つまり自然吸気エンジンの搭載車にも)スタビライザーが装着されているのだから、標準車にも装着すべきだと思う。
事故の回避に重要な横滑り防止装置のEPSも、スティングレーにオプションで標準車には設定もない。
軽自動車は法規による対応に時間的な余裕が与えられているので、すでに義務化がスタートした登録車のミラージュやノート、ラティオなどほどには悪くないともいえるが、昨年暮れに発売されたN BOXはその時点で全車標準とされている。ワゴンRの対応が遅れているのは間違いない。
ターボ仕様のエンジンを搭載したスティングレーは、とても元気の良い走りを示す。軽いボディを生かしてどんどん加速に乗っていく印象だ。
当然ながら、パワフルなエンジンを搭載したスティングレーのほうが、CVTによるダイレクト感の不足は強く感じられる。でも、スティングレーのターボ車にはパドルシフトが装備されているから、パドルを操作して積極的な走りを楽しむことが可能だ。
スティングレーは、フロントスタビライザーだけでなくサスペンションのセッティングやタイヤなども含めて、足回りのいろいろな部分に専用の仕様が用意されている。操縦安定性の面でも満足できる仕上がりだった。
ワゴンRの実用燃費を向上させるエコクールは高評価!
ワゴンRに採用された新しい電子制御は、いずれも画期的なものだ。まずエネチャージ。効率の良いオルタネーターを搭載した上で、発電は極力減速時に行うようにすることで、エンジンの動力はできるだけ発電に使わないようにし、さらに発電した電気を通常の鉛バッテリーのほかに追加したリチウムイオン電池に蓄電するものだ。
減速時に回生発電した電気を、電気の出し入れが得意なリチウムイオン電池にも貯めることで、クルマが使うさまざまな電力消費に対応する。高速道路を定速走行するときなどは回生発電が使えないが、市街地などでは高い効果を発揮することになる。
エコクールは、エアコンのエバポレーターの中に内蔵した蓄冷材を通常の走行中に凍らせておき、停車時にアイドリングストップしたときに解凍してエアコンの効く時間を長くするというもの。真夏の炎天下では、せいぜい30秒くらいしか続かないアイドリングストップが、このエコクールを装着すると1分くらいにまで伸びるという。
JC08モード燃費を測定するときには、エアコンは作動させていないので、カタログ燃費に直接影響するものではないが、ユーザーの実用燃費を向上させるのに役立つ。その意味でエコクールはとても良い仕様だと思う。
素晴らしいアイドリングストップ機能だが、スタビライザーとESPの標準装備化を望む!
新アイドリングストップ機構は、ブレーキを踏んで減速していくと、時速が13km以下になるとアイドリングがストップする。ミライースも8km以下で停止するようにしていたが、それを上回る速度でエンジンが停止する。
これによって、ブレーキの踏み具合などによって微妙にエンジンが停止したり、再始動したりすることになるし、あるいは停止しようとしたものの、前方の信号が青になったのでブレーキからアクセルに踏み替えるといった状況など、いろいろなことが考えられる。
なので、試乗中にはいろいろと試してみたものの、停止と再始動で走りがギクシャクするようなことはなかった。ただ、再始動時の騒音や振動は必ずしも良いとはいえず、もう少し静かでスムーズに再始動して欲しい。
新アイドリングストップ機構で、もうひとつ改善されたのは、二度目の停止ができるようになったこと。アイドリングストップ機構に入った後、間違ってハンドルを動かしたり、ブレーキを踏む足を緩めたりして、ドライバーの意志に反してエンジンが再始動しても、もう一度ブレーキペダルを踏み込めば、クルマが動かなくても二度目のアイドリングストップに入れる。これが良い。
メルセデス・ベンツは、同じ位置で何度でも(試したのは10回くらいまで)、再始動、再停止を繰り返せるが、ほかのメーカーで同じ位置で再停止できるのは今のところワゴンRだけだ。二度目の1回だけとはいえ、これがてきるのはとても良い。
このように、新型スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレーは、モデルチェンジサイクルを短縮したにもかかわらず、クルマの進化の幅が大きいといえる。価格アップも抑えられているので、全体として十分に満足できる仕上がりだ。不満点は、前述のフロントスタビライザーとESPの設定くらいである。
<スズキ ワゴンR/ワゴンRスティングレー価格>
■ワゴンR
・FX 2WD 1,109,850円
4WD 1,227,450円
・FXリミテッド 2WD 1,249,500円
4WD 1,367,100円
■ワゴンRスティングレー
・X 2WD 1,333,500円
4WD 1,451,100円
・T(ターボ) 2WD 1,496,250円
4WD 1,613,850円
代表グレード | スズキ ワゴンR FX |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3,395×1,475×1,640mm |
ホイールベース[mm] | 2,425mm |
トレッド前/後[mm] | 1,295/1,290 |
車両重量[kg] | 780kg |
総排気量[cc] | 658cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 52PS(38Kw)/6000rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 63(6.4/4,800rpm |
ミッション | CVT |
タイヤサイズ | 155/65R14 |
JC08モード燃費 | 28.8km/L |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 1,109,850円 |
発売日 | 2012/9/6 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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