マイナーチェンジした「トヨタ86」のちょっと変わった説明&体験試乗会、開催される!
最近の自動車業界のホットな話題といえば自動運転。あれよあれよという間に高速道路である程度、車に運転を任せられる(ただし責任はあくまで人間が負う)「レベル2」の自動運転機能搭載車が実際に発売され始め、究極の自動運転である「レベル4」の車(完全自動運転で車が全責任を負う)も2020年の東京オリンピック頃には登場するかも、といわれる時代になってきました。
便利になるのはいいことだけど、でも運転するおもしろさも無くなってほしくないなー、と思っていたところにトヨタからマイナーチェンジしたスポーツカー 「86」 に関する説明&体験試乗会の案内が。最近の日本車は、何をおいてもまず燃費性能が一番優先、といった車が多いですが、その中にあって「86」といえばいわずと知れたハンドリング性能にこだわった稀有な車。以前サーキットでマイナーチェンジ前のモデルを走らせた時に、そのこだわりはダテではない!ということを体感していただけに、当日喜び勇んで出かけたのでした。
ところが会場に着いてみると、どうもいつもの試乗会の雰囲気と違います。まず、ホストであるトヨタ側の人の数がとても多い! それも、試乗会の運営スタッフではなくて技術者とかデザイナーとか、新しい「86」を生み出すことにたずさわった人たちばかり。そして、その人たちはマイナーチェンジ後のモデルを愛着を込めて「86KOUKI」と呼んでいます。ふつうは「NEW○○」とか呼ぶのに、「86KOUKI」なんてなんか戦闘ロボットの進化版みたいな呼び方で変わっているな、と思っていると、その人たちがおもむろに技術説明を始めたのでした。
性能向上した驚愕の理由とは? なんと、隠し玉兵器(アイテム)が・・・!?
説明のタイトルは「ボデー各部の電位コントロールによるエアロハンドリング向上」。ますます試乗会っぽくないぞ、まるで学会での発表みたいだ、と思いましたが、話を聞いているとまるでマジックのような驚愕の事実が!
トヨタ では車両開発にあたって、同じ車両を使っていても挙動が日や時間によって変わってしまう不思議な現象に悩まされていた、とのこと。その原因をあれこれ追究するうちに5,6年前、ついに行きついたのが車体(ボデー)の「帯電」。車は走行しているうちに次第にプラスの電気がたまっていくらしく、その帯電が悪さをして、ボデーに沿って流れる空気を乱しハンドリング性能を変化させてしまう、とのことでした。
そして、その解決方法を地道に研究し続けた結果、バンパー及びフロント&サイドウインドー、そしてフロントタイヤ周辺の帯電を減らすことが空気流の安定に有効なことを確認。電気を放電させるために、その場所にアルミ箔を貼ると効果的であることも発見しました。
ただし、タイヤに直接アルミ箔を貼るわけにはいかないので試行錯誤した結果、タイヤとつながっているステアリングのコラムに貼っても効果があることを実験で証明しました。これらのことについて現在、特許申請を検討しているそうです。
その後実際に1台の「86」を使い、アルミ箔を貼ったりはがしたりしてその効果を実感する試乗をさせてもらいました。空力に関することなので高速域でないと違いはわからないのではないか、と思いましたが試乗コースは一般道。時速40〜50km/hくらいで普通の道路をスーッと走りましたが、アルミ箔が貼ってあると車の落ち着きが違う!「空気流がしっかり車を抑え込んでくれて挙動が安定するからです」とトヨタの人が説明に思わずうなずきました。
作り手の熱い思いが込められた「86KOUKI」という呼称に納得!
ちなみにアルミ箔効果は乗り比べれば時速10km/hくらいからでも体感できる、とのことでした。また「86KOUKI」は既に放電対策済みボデーなので今回の試乗は前期型を使って行われましたが、直進安定性を高める方向になるバンパーの放電対策は「86KOUKI」にはあえて施していない、とのこと。ハンドリングを楽しんでほしい、というトヨタの強い思いを感じました。バンパーの放電は新型ノア等で採用している、とのことです。
試乗の後は「86KOUKI」の外形デザインを担当した、林秀樹エグゼクティブチーフデザイナーからお話を伺うことができました。林デザイナーがもっともこだわったのはフロントノーズの部分。F1マシンのようにノーズが下まで下りていく造形をイメージしてデザインしたそうです。そして、フロント&リアランプは水平基調にしてワイド&ローな感じを強調するデザインとしつつ、特にリアランプは高級感も感じさせるよう腐心した、とのことでした。
それからリアもバンパー部等を少し絞り込んでメリハリをつけフロント部とイメージを合わせたり、フロントフェンダーのガーニッシュをエンブレムのないシンプルなものに置き換える代わりにヘッドランプ横に「86」のマークをさりげなく配したりと、新しい「86」に生まれ変わったと感じられるよう細部まで気配りしてトータルデザインしていることがひしひしと感じられました。
そんな作り手たちの熱い思いがぎゅっと詰まったマイナーチェンジモデル、皆が愛着を込めて「86KOUKI」と呼ぶ理由がわかったような気がしました。そして世間ではちゃんとその思いを感じ取っている若い人も多いようで、「86KOUKI」の購入者のうち約3割は20代の人、とのこと。それに何よりうれしいのがMT車比率が約5割ということで、運転するおもしろさを求める人は自分だけじゃない、と意を強くした「86KOUKI」説明&体験試乗会だったのでした。
<レポート:堂島 昭>
トヨタ86価格
・G 6速マニュアル 2,623,320円/6AT 2,647,080円
・GT 6速マニュアル 2,981,880円/6AT 3,048,840円
・GT“Limited” 6速マニュアル 3,183,840円/6AT 3,250,800円
トヨタ86スペック、燃費など
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm]207ps(152kw)/7000rpm
代表グレード | トヨタ86(ハチロク)GTリミテッド6MTスペック |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4240×1775×1,320mm(アンテナ含む) |
ホイールベース[mm] | 2570mm |
トレッド前後[mm] | F:1520mm R:1540mm |
車両重量[kg] | 1240㎏ |
乗車定員 | 4名 |
エンジン種類 | 水平対向4気筒 直噴DOHC |
ボア×ストローク[mm] | 86mm×86mm |
総排気量[CC] | 1998CC |
エンジン最大トルク[Nm(kg-m)/rpm] | 212Nm(21.6㎏-m)/6,400〜6,600rpm |
ミッション | 6速MT |
駆動方式 | FR |
サスペンション | F:ストラット R:ダブルウィッシュボーン |
ブレーキ | F&R:Vディクス |
タイヤサイズ | F&R:215/45R17 |
燃料タンク容量 | 50L |
燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
発売日 | 2016年8月1日 |
価格 | 3,183,840円 |
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