フォルクスワーゲン グループ ジャパンは、コンパクト SUV である「ティグアン」をモデルチェンジし、販売を開始した。

　VWティグアンは、2008年9月にデビューし、ゴルフやポロといった主力車種を脇で支える趣味性の強いコンパクトSUVとしてデビューした。ドロ臭くない都会的なフォルムと圧倒的な走行性能を誇っていた。販売台数こそ大きなものではないが、デビュー以来7速DSGの追加や燃費アップなど、着実に進化させているのはマジメなVWらしさが出ているモデルでもある。

　今回のモデルチェンジでは、エクステリアが大きく変更されている。もともと、SUVの割にはスッキリ系だったティグアンだが、新型になりさらにスッキリ感が増した印象だ。LEDのポジションランプを装着し、上級モデルのトゥアレグと同様なイメージに変更されたのが大きな特徴。ハッと驚かせるエモーショナルなデザインではないが、緻密で完成度の高いデザインは、いかにもドイツ車的でもある。

　新型VWティグアン スポーツ＆スタイルは、安全装備がさらに充実した。日本車では、一部の高級車でしか標準装備されていないカーテンエアバッグやサイドエアバッグ（前後）を含む8エアバッグが全車標準となった。加えて、パサートにも採用されている「ドライバー疲労検知システム」を標準装備。ドライバー疲労検知システムは、ステアリングホイールへの入力などからドライバーの疲労度を検出。ドライバーの集中力の低下をアラーム音と表示で警告し休憩を促す機能だ。

　VWの誇る低燃費エンジンである2.0TSIは、125kW/170PSから132kW/179PSへパワアップ。さらに、7速DSGトランスミッションと組み合わせることで、パワーアップしているのにもかかわらず10・15モード燃費11.6km/Lと従来と同等のパフォーマンスを誇っている。

　VWティグアンのパフォーマンスは、ヨーロッパでもコンパクトSUVのベンチマークになっていて、2012年春に登場するマツダCX-5も、このティグアンを徹底的に研究したというほどだ。

　こういった進化の他に、注目したいのが価格。超円高が進む中、輸入車の価格改定はほとんど行われていないのが現状だ。そういった話をする度に、インポーターは過敏に反応する。その過敏さから、やはりかなり利益が出ていると推測できる。価格改定が進まないひとつの要因として、輸入車の販売は比較的好調であるということだ。VWは今年10月に前年同月比+53.7%という販売台数を記録している。これだけ売れれば、価格改定などすることもないと考えるのが普通だろう。

　このVWの好調要因は、主力車種ポロのバックオーダーが解消されてきたことや、低金利＆メンテナンスフリープログラムなどの販売支援によることも大きい。何もせずに売れているわけではないのだ。そこで、主力車種の価格改定には及ばなかったものの、脇役であるVWティグアン スポーツ＆スタイルは、勢いに乗るためモデルチェンジをきっかけに389万円という価格訴求に踏み込んできた。

　前モデルが426万円だったので、37万円も安くなっている。安くなっただけではなく、パワーアップされたエンジンに加え、安全装備の追加までされている。装備まで含めば、円高分よりもお買い得感はアップしているように思える。そういう意味では価値のある一台になった。

　今回の価格設定は、今後のVWの価格戦略を占う意味でとても重要。VWは2012年に、コンパクトカーUP!(アップ）の導入を予定している。VWアップの価格は、国産コンパクトカー並を目指しているという噂も流れていて、VWのエントリーカーとしての大きな役割を担う。そういう意味で、これからゴルフやポロといった主力車種の価格戦略が、どのように行われるのか注目したい。