メーカー自ら「万人受けしない」というジュークの魅力とは!? 日産 ジューク【自動車マーケット一刀両断】 [CORISM]

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【ビジネス・経済】2010/07/30

日産 新型ジュークとマーケティングダイレクターの橘川泰介さん(写真右)と、開発責任者でチーフプロダクトスペシャリスト松冨 諭(まつとみさとし)さん

好き嫌いはあっても世界的に見ればボリュームが確保できるクルマ

日産 新型 ジューク 開発者の橘川泰介さん
 6月上旬にデビューした日産ジュークが1カ月で1万台を超える受注を記録した。このジュークは、日産自ら「万人受けするクルマではない」と公言するほど、好き嫌いがハッキリと別れるクルマだ。好き嫌いがハッキリするクルマというのは聞こえがいいが、逆の意味で一歩間違えると、ただの不人気車種になる恐れもある。メーカーとして、少量しか売れないクルマを作るわけにはいかないはずだ。
「確かに、ジュークはメインストリーム狙いのクルマではありません。新しいマーケットを創造するという意味で、多少ニッチ狙いかもしれませんが、日産のチャレンジでもあります。そんなこともあり、ジュークは日産の中でも、企画段階からブレずに商品化できた数少ないクルマです。もちろん、メーカーですから、売れなくてもいいという商品ではありません。勝算も十分にあります。ジュークは、上級コンパクトカーのクラスに属します。このクラスのマーケットボリュームはとても大きいのです。ですから、多少、好き嫌いがあったとしても、十分な販売台数が見込めると思っています」と、日産自動車マーケティング本部マーケティング・ダイレクター橘川泰介さん。

戦略的価格と新技術という付加価値で売る!

 日産の車種展開は、基本的にグローバルでの販売だ。日本だけだはなく、北米やヨーロッパというマーケットも同時にカバーするクルマでないと生産が許されない。今回のジュークも、メインはヨーロッパにおいている。日本専用車ではないからこそ、販売できた。ホンダのハイブリッド・スポーツカーであるCR-Zも同様な考え方で発売されたクルマだ。
 さて、日産の橘川さんが「勝算あり」と言っていたのは、マーケットボリュームが大きいといことだけではない。さらなる仕掛けがあった。1か月で1万台を受注した理由とは。
「ジュークは、約179万円からというお求めやすい価格がポイントです。手が届く価格帯というのでしょうか。ベーシックなコンパクトカーに、あと少しプラスしたら、個性的なジュークが手に入る。そう、思っていただくことが重要でした。技術的な付加価値もプラスしました。副変速機付きの新型CVTなど、数々の新技術を追加しています。それなのに、この価格に抑えるには技術陣を含めかなりの努力が必要でした。まさに、そこが好調の要因で、我々の狙い通りという結果になっています」

日産の狙い通りに好調な滑り出し

日産 新型ジューク フロントビュー
 コンパクトカーは、価格重視の顧客が多い。そこに、さらなる新技術の追加と個性派デザインで付加価値をプラスする。そんな戦略が見事に成果を出しているようだ。とはいえ、個性的であるゆえに、最初だけ調子がいい打ち上げ花火的な販売にならないのだろうか? 「そういったことも十分に注意して、販売戦略を行っていく予定です。秋にはジュークのターボモデルも投入し、現在のお客様とはまた違ったタイプのお客様が購入していただけると思っています。また、ジュークは個性的なクルマなので息の長いモデルとして、じっくりと売っていきたい。だから、常にジュークが話題になるような仕掛けも考えています」
 ジュークの受注状況だが、インテリアカラーのレッド59%、ボディカラーはテーマカラーのラディアンレッドが29%でトップと、大胆なレッドカラーの人気が高い。インテリアカラーもボディカラーも、モノトーン系が主流になるのが通常のコンパクトカーの傾向。そんなことからも、ジュークの魅力に共感したユーザーは多い。今のところ、日産ジュークの販売は、日産の狙い通りの結果になっているようだ。

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(レポート:大岡 智彦

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