メルセデス・ベンツは、Eクラスをフルモデルチェンジし発売を開始した。「E200アバンギャルド」および「E200アバンギャルド スポーツ」が7月27日より、「E200 4MATICアバンギャルド」、「E220dアバンギャルド」、「E220d アバンギャルド スポーツ」、「E250アバンギャルド スポーツ」、「E400 4MATIC エクスクルーシブ」は10月以降の販売を予定している。

　先代メルセデス・ベンツEクラスは、2009年にデビュー。2013年にマイナーチェンジを実施。このマイナーチェンジで、レーダーセンサーやステレオマルチパーパスカメラを使い部分自動運転を実現した「レーダーセーフティ」を装備。世界トップレベルの安全装備を手に入れた。

　今回フルモデルチェンジした新型Eクラスは、先代の高い部分自動運転技術と安全技術をさらに進化させている。これは、自動運転開発の次のステップともいえる機能だ。新型Eクラスに初めて搭載される新技術「ドライブパイロット」は、先行車との車間距離のみならず周囲の交通状況（車両、ガードレール等車線と平行に位置する物体）を常に監視することで、従来よりもステアリングアシストが作動する状況が大幅に拡大。車線が不明瞭、または表示されていない場合にも自動で先行車に追従する。高速道路上で自動停止した場合には、30秒以内であれば自動再発進が可能となった。機能がより進化したことで、特に混雑時や高速道路での渋滞の際に、運転支援によりドライバーにかかる負担を大きく軽減してくれる。

　ドライブパイロットの注目技術が「アクティブレーンチェンジングアシスト」だ。新型Eクラスで初めて導入された技術だ。この機能は、ドライバーがウインカーを2秒以上点滅させると、行き先の車線に車両がいないことを確認後、自動で車線変更するという運転支援技術だ。初心者や高齢者など、運転技術が未熟な場合や、夜間など視界が悪いときなどに起きる接触事故などを未然に防いでくれ、ドライバーが安心してクルマに乗れるようになる。

　また、走行中にドライバーが気を失ってしまったなど、万が一の場合には、自動的に車線を維持しながら緩やかに減速・停止する「アクティブエマージェンシーストップアシスト」を世界で初めて搭載された。作動速度範囲は約80～180km/hで一般道での利用不可となっている。

　自動ブレーキ関連の技術も機能強化が施されている。突然渋滞の最後尾が現れた場合など、前走車との衝突の危険を検知し、左右などに回避スペースが無いと判断すると、衝突を回避、または被害軽減を図る。回避スペースがある場合は、ドライバーの回避操作を優先するものの、ドライバーが反応しない、または回避操作が遅れて衝突が回避できないと判断した場合には、即座に自動ブレーキが作動。さらに、渋滞末尾で回避操作を行う空間的余裕がない危険な状況を検知し、通常よりはるかに早い段階でブレーキを自動で作動させる機能をメルセデスとして初めて搭載した。

　対歩行者に関しては、車両前方にいる車道横断中の歩行者などとの衝突の危険を検知すると、システムが正確なステアリングトルクを計算して、ドライバーのステアリング操作をアシスト。回避後の車線復帰も同様にサポートする。歩行者検知機能の作動減速範は約7～70km/hとなっている。

　衝突安全技術も進化している。PRE-SAFEインパルスサイドと呼ばれる技術は、フロントバンパー外側のレーダーセンサーが、側面衝突が不可避であることを検知すると、衝突側前席バックレストのサイドサポートに内蔵されたエアチャンバーが瞬時に膨張。乗員をドアから遠ざけることで、衝撃の軽減を図るというものだ。サイド＆カーテンエアバッグなども連携することで、側面衝突に対してより高い安全性を確保する。この機能は世界初だ。

　もうひとつの世界初となる安全装備は、PRE-SAFEサウンド。システムが不可避の衝突を検知すると、車両のスピーカーから鼓膜の振動を抑制する音を発生。鼓膜の振動を内耳に伝えるあぶみ骨筋の反射収縮反応を引き起こす。この収縮によって、衝撃音の内耳への伝達を軽減するというものだ。

　従来のレーダーセーフティを進化させ、より高度な部分自動運転化を可能とした運転支援技術に、世界初となる数々の安全装備をプラスした新型Eクラス。まさに、世界トップレベルの安全性能をもったモデルと言っていい。

　新型Eクラスに搭載されるのは、2.0L直4ターボがE200系に搭載された。184ps＆300Nmを発生し、燃費は14.7㎞/Lとなている。3.5L V6ターボエンジン車は、E400系に搭載され、333ps＆480Nmを発揮する。燃費は審査中だ。

　そして、注目したいのは新型2.0L直4クリーンディーゼルエンジンを搭載したE220d系だ。将来導入されるというRDE（実路走行試験）規制に対応したディーゼルエンジンとして開発されている。先代の2.2Lエンジンよりもシリンダーピッチが狭くなった（94mm→90mm）ことから、前後方向に短くなり、小型化を実現。排気量は2.0Lと先代の2.2リッターより小さいものの、最高出力143kW（195PS）、最大トルク400N・m（40.8kg・m）を発生する。

　また、排出ガス浄化システムについては、システムのコンパクト化と軽量化されている。エンジンは、シングルステージターボチャージャーと可変タービンジオメトリを採用し、シリンダーヘッドとクランクケースはアルミニウム製となった。

　E400の1グレードを除き、すべてが4気筒エンジンとなった新型Eクラス。メルセデス・ベンツの顧客の中には、排気量の大きさがオーナーのステータスと考える人が多かった。現在も、その傾向はあるものの、メルセデス・ベンツそのものが、もうそうした時代ではないことをアピールするラインアップとなっている。まぁ、大排気量のガソリン車ということなら、AMGモデルを買ってくださいということになるのだろう。

　この後、新型EクラスにもPHVモデルも投入されることも予想できる。初期はガソリン車のみなので、慌てて買わずに、まずはラインアップが揃ってから試乗してみてから買うのが賢い。

　外観デザインは、フロントフェイスはとくに先代Eクラスと大きな違いを探せないほどよく似ている。並べてみなくては分からないくらいだ。ホイールベースは、65㎜伸びたことにより、ややスタイリッシュになった感じがある。リヤビューも、SクラスやCクラスと共通するリヤコンビネーションランプを装備した。このリヤコンビネーションランプは先代Eクラスとは大きく違う点だ。新型Eクラスは、すべてのグレードがアバンギャルドということもあり、精悍でスポーティなルックスが特徴だ。

　インテリアデザインは、大きく変更されている。セグメント初となる2つの高精細12.3インチワイドディスプレイを設定。この2つのディスプレイを一枚のガラスカバーで融合したコックピットディスプレイは、空中に浮かんでいるように見え、インテリアデザインの水平方向の流れを強調する中心要素となっている。これだけ大きいディスプレイなら、視認性は抜群だろう。また、コックピットディスプレイのデザインは、「クラシック」、「スポーツ」、「プログレッシブ」の3種類の中から好みで設定することができる。

　さらに、新型Eクラスには、世界で初めてタッチコントロール機能をステアリングに備えている。スマートフォンなどと同様に、タッチセンス機能を内蔵したボタンは、縦方向および横方向のスワイプに正確に反応する。ドライバーは、ほとんどの操作をステアリングから手を離すことなく簡単にできることになる。ステアリングから手を放さないという部分が、容易にタッチパネルに流されない安全を重視するメルセデス・ベンツならではのこだわりといえるだろう。

　新型メルセデス・ベンツEクラスの価格は6,750,000円から。先代E250アバンギャルドが6,870,000円だったので、12万円の価格ダウンとなっている。これはE250からE200となり、ややパワーダウンしていることも影響しているとはいえ、コストに大きく係わる部分ではない。進化した部分を含めれば、実質値下げといてもいいだろう。

　価格が安くするために、安全装備をオプション化していないのも好感がもてる。レーザーセーフティの機能向上や世界初の装備の数々は、グレードを問わずほぼ標準装備化されており、どのEクラスを買っても世界トップレベルの安全性能を手に入れることができる。グレードやオプションは、豪華装備や便利装備などがほとんど。Eクラスを買うすべての顧客に平等の安全装備とした点は、非常に高く評価したいポイントだ。国産メーカーを中心に多くの自動車メーカーは、優れた安全装備があってもオプション化する傾向が強い。交通事故死を減らすことをほとんどの自動車メーカーが企業理念として掲げているものの、実際の商品は「お金をたくさん出した人だけが安全」というクルマをリリースする。見事なまでに本音と建前を使い分けているのだ。

　もちろん、メルセデス・ベンツも国によってはオプション化されているとは思うが、日本仕様をすべて世界トップレベルの安全装備を標準装備化した点は、間違いなく英断だ。クルマは交通事故を起こす商品だ。自動車メーカーは、自らの商品で事故を減らすような技術を積極的に採用することは、社会的な責任でもある。こうしたことを積極的に取り組んだ仕様とし輸入しているメルセデス・ベンツ・ジャパンの安全思想は非常に高いレベルにある。

　新型メルセデス・ベンツのお勧めは、やはりクリーンディーゼルのE220d系になる。これだけ未来感のある高い安全装備を持つ新型Eクラスを買うのに、ガソリン車というのではあまりにも普通だ。やはり、パワーユニットにも先進性や未来を感じたい。本来なら、いずれ投入されるだろうPHVなのだろうが、現状はクリーンディーゼルが最も環境性能や経済性を含め魅力的だ。

　リセールバリュー面でも、クリーンディーゼル車の人気が高まるにつれてガソリン車の価格は下がっていく可能性が高い。クリーンディーゼル車は、ガソリン車に対して23万円高い設定となっているが、エコカー減税が免税。これで、価格差は随分縮まる。さらに、ランニングコスト面では、ハイオク仕様のガソリン車に対して軽油は30円/L前後安い。距離を走る人ほど、購入時の価格差はドンドンと縮まりお得になっていく。これで、リセールバリューも差が出てくれば、価格差は軽く逆転する可能性が高い。

■メルセデス・ベンツEクラス価格
・E 200 アバンギャルド　￥6,750,000
・E 200 4MATIC アバンギャルド　￥6,980,000・
・E 220 d アバンギャルド　￥6,980,000
・E 200 アバンギャルド スポーツ　￥7,270,000
・E 220 d アバンギャルド スポーツ　￥7,500,000
・E 250 アバンギャルド スポーツ　￥7,560,000
・E 400 4MATIC エクスクルーシブ　￥9,880,000

代表グレード	メルセデス・ベンツ E220dアバンギャルド
ボディサイズ［mm］（全長×全幅×全高）	4,923×1852×1468mm
車両重量［kg］	-
総排気量［cc］	1950cc
最高出力［ps(kw)/rpm］	194ps(143kw)/3800rpm
最大トルク［N・m/rpm］	400N・m/1,600～2,800rpm
ミッション	9速AT
JC08モード燃費［km/l］	-
定員［人］	5人
税込価格［円］	6,980,000円
発売日	2016/7/27
レポート	編集部
写真	メルセデス・ベンツ