三菱ミラージュ新車試乗評価の目次
個性派無いが、低燃費デザインを評価する
40歳代以上の人にとって、三菱ミラージュという名を聞くと、パワフルな走りや最先端テクノロジーを搭載した個性派という記憶がよみがえるのではないだろうか。ホンダとのパワー競争や、1.6Lで世界最小であるV6エンジンなど、バブル期は今では考えられないくらい、やりたい放題といったコンパクトカーだった。
しかし、時代が変化しミラージュと言う名は、一旦残念ながら姿を消した。そして、復活したミラージュは、超円高やグローバルでの価格競争力を得るという背景から、タイで生産され輸入されることになる。
そんな昔のミラージュを思い出しながら、新型三菱ミラージュに乗った。全長
3,710mm×全幅1,665mm×全高1,490mmというサイズは、コンパクトカーの中でも、小さいクラスに属する。そのため、居住性はイマイチかと思っていたのだが、窮屈さはなかった。視界もよく、ボンネットの両端が見やすいので、車両感覚もつかみやすい。
デザインは、シンプルにまとめられていて好き嫌いがハッキリ出ない無難なものだ。それゆえに、個性が薄く、ハデめのボディカラー以外だと、街中でも存在感がない。しかし、このデザインは、コンパクトカーでクラストップレベルの低CD値0.27を達成。空気抵抗の低減が施された低燃費デザインでもあると評価していい。
軽いボディの恩恵で、軽快感は抜群だが、楽しくはない
エンジンは、1Lの直3エンジンが搭載され、GとMグレードには、アイドリングストップ機能が装備される。このエンジンは、最大出力51kW(69PS)/6,000rpm、最大トルク86N・m(8.8kg-m)/5,000rpmを発生。ごく平均的なスペックのエンジンだ。スペックだけ見ると、最大トルクの発生回転数が5,000回転と高めなので、実用域ではトルクの細さを感じるかなぁ、と思ったが、逆に軽快さが際立っていた。
軽快さを際立たせた理由は、ボディの軽さにある。ボディ骨格で約12%の軽量化が施されたことにより、車両重量は870kgに抑えられている。トヨタのパッソが910kgなので、さらに40kg軽く、軽自動車並の車両重量を誇る。また、ワイドなギヤレシオをもつ副変速機付きCVTのため、1Lとは思えない軽快さを後押しする。街乗りや、イッキに加速したい時など、ストレスを感じることは無かった。
軽快だからといって、運転が楽しいかというとそうでもない。カーブを曲がる時にクルマの傾きを抑え、安定した姿勢をつくるスタビライザーが装着されていないので、速度が上がれば上がるほど、クルマは大きく傾くのだ。直3エンジンの振動も気にならないし、軽量ボディによる軽快感もいいだけに、もったいない状況だ。その分と言ってはなんだが、乗り心地は満足できるレベルにはあった。いわゆる、街乗りを主体にセッティングされている。
アイドリングストップ機能の停止、再始動なども標準的なレベル。アイドリングストップ機能と、このクラスで最も小さい排気量ということもあり、27.2km/Lという優れた低燃費性能をもつ。このクラスは、価格競争力が強く求められる。コストの掛かるアイドリングストップ機能をエントリーモデルこそ未装着だが、量販グレードには標準装備としたことには評価したい。未だアイドリングストップ機能が、標準装備化されないリーディングカンパニーのトヨタに比べれば、環境意識は高いということになると評価できる。
後席中央のヘッドレストが未装備なのは危険
気になったのは、エアコン使用時にアイドルアップした時の音だ。カチっ、ブーンという音が繰り返えされた。恐らくリレーの音かと思われるが、今時リレー音の聞こえるクルマは軽自動車でさえほとんどない。
また、安全装備について、志が低いと感じる部分がある。後席中央のヘッドレストが装備されていないのだ。ヘッドレストは、追突時などに首への傷害などを減らす効果がある装備。3点式シートベルトは義務化されたが、ヘッドレストは義務化されていないので付けていないのだ。コンパクトカーなので、5人乗車はほとんどないということなのだろうが、乗車定員すべてに平等な安全装備がなければ、もしもの時に大きなリスクを背負うのは後席中央に座った乗員ということになる。オプションでも用意されていないので、5人乗車することがある顧客は購入リストから外すべきだろう。
さらに、横滑り防止装置(ASC)も標準装備化されていなくオプション。オプションでも選べないクルマがある中で、選択できるというのは評価できるにせよ、横滑り防止装置は、2014年10月には法律で義務化される。せめて、上級グレードには標準装備するくらいのことはあってもいい。オプション対応する理由は、とにかく価格を安く見せたいという理由からであり、顧客のメリットやデメリットは考えていないのだろう。
燃費を含め、実用車という視点で見ると新型三菱ミラージュはよく出来た道具となる。取り回しの良さを表す最小回転半径は、4.4mというクラストップレベル。トヨタ パッソは、さらに上回る4.3mだが、もうどちらも完全に軽自動車レベルだ。車両感覚がつかみやすい見切りの良さとの相乗効果で、狭い道も苦にならない。そのため、免許を取ったばかりの初心者からお年寄り、運転が苦手な人などに優しいクルマに仕上がっていると評価できる。
<三菱ミラージュ販売価格>
「E」 99.8 万円
「M」 118.8 万円
「G」 128.8 万円
代表グレード | 三菱ミラージュ M |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3710x1665x1490mm |
ホイールベース[mm] | 2450mm |
車両重量[kg] | 870kg |
総排気量[cc] | 999cc |
最高出力[ps(kw)/rpm] | 69ps(51kW)/6000rpm |
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 8.8kg-m(86N・m)/5000rpm |
トランスミッション | CVT |
燃費[km/L] | 27.2km/L |
定員[人] | 5人 |
価格 | 1,188,000円 |
発売日 | 2012年8月31日 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | 編集部 |
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