新型クライスラー・300は、あのやんちゃ系セダンとして一部で大人気を得ていた300Cの後継モデル。そんな大迫力のスタイルを持っていた300Cから、新型クライスラー・300は、300Cのテイストを残しながらも大幅にフォーマルな印象へと変貌を遂げている。全体的に気品さがあり、洗練された印象だ。300Cオーナーから見れば、アクが無くなり面白くないと感じるかもしれない。ただ、パリっとした格調のあるアメリカンクラシックスタイルは、ある意味新鮮だ。

　新型クライスラー・300のボディサイズは全長×全幅×全高が5070×1905×1495mm。ホイールベース3050mmで、先代モデルと比べるとわずかに長く（＋60mm）、幅広く（＋15mm）、そして低く（－5mm）なった。全長は5mを超え、立派なボディサイズだ。大きく傾斜したウィンドシールド（上端で76mm後退）や細くなったピラーなどによって全体的な印象は格段に洗練された。ドライバーの視界も大きく改善され、高速燃費に影響する空力性能も向上している。

　搭載されるエンジンは、3.6L V6ペンタスターユニットだ。210kW（286ps）/6350rpmの最高出力と340Nm（34.7kgm）/4650rpmの最大トルクを発生。従来型3.5L V6に比べて15％パワーアップした。

　組み合わされるミッションは、クライスラーとして初採用となる最新のZF製電子制御8速AT。セレクターはバイ・ワイヤー式の「Eシフト」を採用し、滑らかで素早い変速を実現してる。また、300Cラグジュアリーには、ステアリングホイール背面にシフトパドルも装備されている。

　新エンジンと8速ATの効果で、燃費は10％以上向上した。燃費は、JC08モードで9.2km/L。さすがに、アメ車ということもあり、燃費はいいとはいえない。メルセデス・ベンツS350は、1920kgで12.4km/L。価格帯も違うとはいえ、今時に登場するクルマなのだから、まずはアイドリングストップ機能くらいは装着して欲しい。アイドリングストップ機能が未装着なのは、レクサスのガソリン車も同様。それらと比べればクライスラー・300の燃費はそれほど悪くはないが、日本ではコンパクトカーや軽自動車にアイドリングストップ機能が標準装備化されてきているので、このクラスに未だ未装着なのはあまりにも環境意識が低いと言わざる負えない。　

　驚きなのは、クライスラー・300の価格だ。クライスラーはマジメで、それほど数の出ないクルマだと分かっていても、日本のユーザーが使いやすい右ハンドル車をしっかりと用意してきている。右ハンドル車を用意することは、当然、コストがかかり販売価格がアップする要因になる。超円高レートだからできる価格ということもあるにせよ、前モデルの300C末期と同様に300リミテッドの価格は398万円というリーズナブルな価格設定だ。なんと、ナビゲーションまで標準装備している。ちなみに、トヨタ クラウン3.5アスリートが487万円なのだから、まさに超戦略的価格だ。

　国産＆ドイツ系セダンでは、もうありきたりで飽きてしまった、そんな顧客がきっとクライスラー・300の顧客層になるのだろう。日本や欧州勢にはない、独特の存在感だったり空気感は、やはりアメ車ならではのもの。日本人は、マイノリティであることを避ける傾向にあるが、今までの平凡な毎日からちょっと抜け出したいと望み、自らがマイノリティであることに自信がある人には、まさにピッタリな1台になりそうだ。