日産の国内保有台数を守るために重要な新型ラティオ
日産は、日産ブランドの最小セダンである新型ラティオの発売を開始した。
新型日産ラティオは、トヨタ カローラなどと並ぶコンパクトセダン。10年前の2002年には、まだ20万台あったマーケットも、現在では約6万台と70%も落ち込んでいる。日産は、減少が続く日本マーケットにおいて、確実に収益を上げるためには、日産の保有台数を減らさないことも大切、と考えているようだ。規模が激減したマーケットとはいえ、ラティオはすでに累計16万台を発売済み。そういったコンパクトセダンを必要とする、とくに日産ブランドに乗るコンパクトセダン顧客が他社へ流出させないためにも、販売台数は少ないものの、必要な車種であると考えている。
しかし、トヨタのカローラもそうだが、国内専用車としてはビジネスとして成り立たない。そのため、グローバルで販売されているモデルを日本に持ち込む必要があった。そこで、北米ではヴァーサセダン、中国ではサニーなどと呼ばれるグローバルコンパクトセダンを新型日産ラティオとして発売したのだ。もちろん、国内マーケットはダウンサイジング化が急速に進んでいる。スカイラインやティアナ、シルフィといった顧客がダウンサイジング化した時の受け皿としても重要だ。
また、このクラスは、国内では法人などの営業車として使われることが多い。一定期間で確実に乗り換え需要が見込まれるのだが、高い価格競争力が必要。そのため、日産は価格競争力を得るため、マーチと同じタイから輸入することを決めた。
優れたパッケージングと、クラスレスな堂々としたスタイリング
そんな背景で登場した新型日産ラティオ。コンセプトは、環境と経済性に配慮した正統派5ナンバーセダンだ。基本的には、少し前に発売されたばかりのノートと同じVプラットフォームを仕様。ホイールベースは同じだが、全長は325mm大きく、全高は30mmほど低い、全長4,425×全幅1,695mm×全高1,495mmとなっている。カローラ・アクシオの4,360×1,695×1,460mmと比べると、全長が少し長く背は高めというプロポーションだ。
そのためか、見た目は結構立派に見える。押し出し感のあるフロントフェイスに、たくましい筋肉のような造形をもつリヤセクション、流麗なルーフラインなどは、先代ラティオのイメージをまったく感じさせない堂々としたものだ。
室内もセダンを求めるユーザーが、十分に満足できるゆとりの空間が作り出されている。後席の広さも十分で、ニールームはクラストップ。ティアナクラスの広さだという。
トランク容量も、先代ラティオから大幅に拡大。奥行きは+125mmと広大になり、VDA490Lというクラストップレベルに進化した。
また、シニア層にとって運転がしやすいというのも重要な要素。見切りの良いボンネット形状を採用したり、大きなリヤドアガラスに細いピラーなど、死角を減らす工夫がなされている。
クラスナンバー1の低燃費だが、後席中央のヘッドレストや更なる小回り性能の向上を望む
クラスナンバー1にこだわる日産だけに、燃費性能は重要なアピールポイントのひとつ。新型ラティオには、ノートにも搭載されている3気筒1.2LのHR12DEを搭載。大きな変速比をもち、低燃費化に貢献する副変速機付きエクストロニックCVTと組み合わされる。さらに、トヨタのようにアイドリングストップ機能をオプションとはせずに、全車に標準採用。その結果、JC08モード燃費で、22.6km/Lというクラストップの低燃費を実現した。最大のライバルであるカローラ・アクシオの燃費は、1.3Lが20.6km/Lで1.5Lのアイドリングストップ付きが21.4km/L(アイドリング機能無し20.0km/L)となっている。排気量が少ないので、当たり前といえば、それまでだが、1.3Lエンジンにトヨタがアイドリングストップ機能を標準装備していないことで、新型ラティオが大きな差を付けてクラスナンバー1燃費になっているという側面もある。
ただし、狭い路地や駐車場などでの使い勝手にかかわる最小回転半径は、カローラ・アクシオが有利。カローラ・アクシオが4.9mと5mを切っているのに、ラティオは5.2mと負けている。ホイールベースは同じなので、新型ラティオには使い勝手の部分ではもうひと工夫欲しいところだ。
また、ノートも同様なのだが、後席中央にヘッドレストが無い。ヘッドレストは、衝突時に首への負担を軽減する重要な安全装備だ。5人乗りなら、やはり全てのシートが同様の安全装備であるべき。早急な標準装備化を望みたい部分だ。
セダン不遇の日本。本質で語るなら、最も使いやすい車種でもある
新型日産ラティオは、G/X/S/Bの4つのグレードに分けられている。Bは法人向け、Sは法人や価格指向向け、Xは最量販グレードとなる予定で一般向け、Gは上級装備となる。基本はノートと同じことを考えれば、エコスーパーチャージャの搭載も可能。上級グレードのGには、スーパーチャージャーを搭載して、ひとクラス上の動力性能も欲しいところだろう。
セダン不遇の日本マーケットだが、パッケジングなど、このクラスはグローバルカーとしてシッカリと作ら込まれている。環境や経済性が重視される中、無駄に大きく燃費の悪いクルマはいらない。しかし、シッカリと人とモノを運びたい、というシンプルな考えならば、新型日産ラティオはピッタリとニーズに合うクルマになる可能性は高い。セダンはオヤジ臭い、という先入観を一度捨てて見たらいいだろう。
<日産ラティオ価格>
・B 1,388,100円
・S 1,419,600円
・X 1,470,000円
・G 1,698,900円
代表グレード | 日産ラティオX |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,425×1,695×1,495mm |
ホイールベース[mm] | 2,600mm |
トレッド前/後[mm] | 1,480/1,485mm |
車両重量[kg] | 1,030kg |
総排気量[cc] | 1,198cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 58(79)/6,000 |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 106(10.8)/4,400 |
ミッション | CVT |
タイヤサイズ | 175/70R14 |
JC08モード燃費 | 22.6km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 1,470,000円 |
発売日 | 2012/10/5 |
レポート | 編集部 |
写真 | 日産自動車 |
2012年9月22日更新 ティーダ ラティオから、ラティオに変更。世界170ヶ国以上で売られる本格派小型セダン
日産は、2012年10月5日に新型日産ラティオを発表する。
新型日産ラティオは、日産最小のセダンとなる。この新型日産ラティオは、ティーダの4ドアセダン版であるティーダ ラティオの後継モデル。日本マーケットからティーダが無くなったことを受け、ティーダを取りラティオという単独の車名となっているようだ。
新型ティーダは、すでに中国などで発売済み。しかし、日本マーケットではボディサイズが大きくなり過ぎたため、日本への導入は見送られている。その代わりを担っているのが、つい最近登場したばかりの日産ノート。新型ノートは先代モデルに比べ、若干ボディサイズを大型化。サイズは、先代ノートとティーダの中間くらい。高効率のパッケジング技術で、室内スペースをティーダと同等にすることで、ティーダの顧客にも十分に満足してもらえる居住空間を確保している。
しかし、ノートにはセダンが無い。日本マーケットにおいて、カローラ・アクシオを含め、このクラスは完全に壊滅的な状態。そう考えると、無くてもいい。と、いう判断ができるのだが、あえて日産は新型ラティオをマーケットに投入する。カローラ・アクシオの開発者も、台数だけを見れば無くても良い車種。しかし、法人需要などある一定の層に確実に一定量売れる。と、カローラ・アクシオの存在意義をアピールした。日産も同様な考え方のようで、顧客のダウンサイジング化の受け皿となる車種は多くし、他社に逃げるのを阻止したいという視点もあるようだ。
ただし、新型ラティオとカローラ・アクシオも、日本専用車では存在できない。このクラスのセダンは、グローバルセダンとして、世界的に販売台数が多いからこそ、販売台数が少ない日本マーケットに導入できるのだ。当初、新型ラティオは、ついに中国で生産される「日産 サニー(陽光:ヤンゴン)」を輸入するのか? という見方もあった。しかし、どうやら日本に導入されるのは、タイ生産モデルの可能性が高い。なぜタイなのか? それは、すでに日本向けマーチを生産しているタイ工場の効率化だろう。
この新型ティーダは、タイ工場で生産されていることから、マーチやノートと同じVプラットフォームを採用していることが予想できる。中国モデルでは、1.5LのHR15DEが搭載されているが、日本向けは違うエンジンが搭載される可能性が高い。最近の日産のプロモーションは「クラス ナンバー1」理論に基づいたもの。当然、新型ラティオも燃費クラスナンバー1を狙うとなると、ノートと同じHR12DEとエコスーパーチャージャー搭載のHR12DDRの可能性が高い。HR12DEは、ノートのJC08モード燃費が22.6km/LでHR12DDRのX DIG-Sが24.0km/Lなので、この前後という数字になるだろう。カローラ・アクシオの1.3Lが20.6km/Lと、ノートは排気量が100cc少ないとはいえ、10%もの低燃費ということになる。この差は、ノート搭載のHR12DEにはアイドリングストップ機能が付いている効果だ。
新型日産ラティオは、日本マーケット的に恐らくほとんど注目はされないだろう。しかし、世界170ヶ国以上で売られる、まさにグローバルセダン。それゆえに、中途半端なクルマは作れないだけに、小型セダンファンな一度はチェックしたい。
新型日産ラティオの価格は、今の所不明。カローラ・アクシオのエントリーモデル1.3L Xグレードがサイドエアバッグまで装着されて139.5万円。この価格が、新型日産ラティオの価格の指標になる。
2010年12月20日更新 2011年以降世界170カ国に順次投入予定
次期「ティーダ/ティーダラティオ」「ブルーバードシルフィ」などのベースともウワサされる同モデル、中国でのモデル名は「サニー(陽光、読み:ヤンゴン)」で、東風日産の広州花都工場で生産し、2011年1月に販売を開始する。30歳前後のヤングファミリーをターゲットに、「躍動感あふれる堂々としたスタイリング」「広く快適な室内空間」「クラストップレベルの燃費性能」をアピールポイントとして、中国での中級セダン市場を開拓する。
エクステリアは、流れるようなシルエットのキャビンと彫刻的で抑揚のある面表現をしたボディサイドが特徴で、力強く張り出したフェンダーなどでセダンらしいしっかりとした車幅を強調するボディ下部と、サイドからリヤへ回るエレガントなキャラクターラインを持つボディ上部を組み合わせることで、クラスを超えた風格とダイナミックなスポーティーさを両立させたという。さらに流麗なフォルムやフェンダーの形状、トランクリッド後端のスポイラー状の造形で、空力特性を図っている。
一方室内は、クラストップレベルの広さを実現したといい、特に後席は上級セダンを上回るニールームと広々とした前方視界などで快適性を実現。またパワートレインは、ともに中国初採用となるデュアルインジェクターを採用した1.5リッター「HR15DE」エンジンと副変速機付新世代エクストロニックCVTを組み合わせる。サスペンションには、フロントにマクファーソンストラット、リヤにトーションビームを採用し、低速ではきびきびと軽快に、高速ではしっとりと安定した走りを実現し、ハンドリングの良さと快適な乗り心地を両立させた。
中国での価格は8万2800人民元から11万2800人民元(約104万円から142万円)。中国市場への投入に続き、2011年以降世界170カ国に順次投入する予定だという。なお、日本での発売時期についてはまだ発表されていない。新型「ティーダ」のフルモデルチェンジ情報については、分かり次第「CORISM」でも順次お届けしていく。
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