トヨタは、人気の5ナンバーミニバンであるヴォクシーとノアに、それぞれ特別仕様車を設定し発売を開始した。

　トヨタ ヴォクシー＆ノアは、2014年に登場した。現行モデルが3代目となっている。この3代目ヴォクシー＆ノアの最大の特徴は、初めてハイブリッドシステムであるTHS-Ⅱが搭載されたこと。搭載されたハイブリッドシステムは、プリウスαなどに使われていた1.8L。システム最高出力は136psを誇り、23.8㎞/Lという超低燃費を誇った。

　ミニバンファン待望のハイブリッド車ということもあり、やや高額な価格設定ながらヴォクシー＆ノアは売れに売れた。2014年の販売台数は、ヴォクシーが109,174台。5ナンバーミニバンにおいて、販売台数ナンバー1。全体でも5位に入るという大躍進を果たしている。

　その後、2017年7月にマイナーチェンジ。外観デザインを、より迫力＆威圧系に変更。とくに、従来ノアはファミリー感のある優しめな顔だったが、こちらも迫力＆威圧系に変身している。これは、ミニバンユーザーが迫力＆威圧系のフェイスを好む傾向が非常に強いためだ。そのため、やや優しい顔をしていた従来のノアは、ヴォクシーに対し販売台数面で大きな差となっていた。当然、ノアを扱う販売店にすれば、納得がいかない。しかし、同じような迫力＆威圧系デザインにすれば、顧客を同じトヨタ間で奪い合う形になる。それでも、トヨタのミニバン全体として、販売台数がアップすればよいという考え方だ。

　また、デザインと共に、女優の新垣結衣を起用したCMも好評。発売直後の販売台数前年同月比では、ヴォクシーを上回る数値を連発している。

　しかし、ヴォクシー＆ノアはマイナーチェンジ直後ながら、両車とも直近の販売台数面では低迷。すでに、前年同月比割れが続いている。

　こうしたマイナーチェンジ直後の販売不振状態の大きな理由は、ライバルであるステップワゴンにハイブリッド車が登場したこと。

　しかも、ヴォクシー＆ノアは、歩行者検知ができない自動ブレーキしかない。しかも、一部車種はオプション設定。それに対して、ステップワゴンは歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「ホンダセンシング」全車に標準装備。こうした安全装備に対する遅れも販売不振の理由の一つとされている。

　また、直近では日産セレナが完成検査不正問題で登録ができなかった。これから2～3月の繁忙期にかけて、セレナも一気に販売台数を伸ばしていくことが予想され、現状のヴォクシー＆ノアは非常に厳しい戦いが強いられることは確実だ。

　こうした理由によりヴォクシー＆ノアは、マイナーチェンジ直後なのに特別仕様車を投入するしかない状況に追い込まれているのだ。

　今回用意された特別仕様車は、ヴォクシーZS煌（きらめき）とノア Si W×B（ダブルバイビー）。

　ヴォクシーZS煌は、歴代ヴォクシーにも度々設定されてきた定番といえる特別仕様車。このヴォクシーZS煌は、「ZS」をベースに、フードモールやドアミラー、センタークラスターパネルなど、内外装の随所にシルバーを配し、よりクールな印象を際立たせている。

　ブラック系ボディとのハイコントラストになる加飾を追加することで、ギラギラ感をアピール。ヴォクシーにより精悍さをプラスした仕様だ。定番の特別仕様車ということもあり、なかなか人気も高い。外板色には、ブラックを含む全5色を設定した。

　ノア Si W×Bは、「Si」をベースに、外板色にはホワイトパールクリスタルシャインやブラックなどの全4色を設定。内装色にはブラック＆フロマージュ（特別設定色）とブラックを設定し、モノトーンの世界観をアピールした仕様だ。さらに、「W×B」の専用エンブレム、ホワイトステッチを施した専用シート表皮（合成皮革＋ファブリック／消臭機能付）を特別装備した。そして、アクセントとして、アウトサイド・インサイドドアハンドルにメッキ加飾を施すなど、よりスタイリッシュな高級感もプラスしている。W×Bという名前の特別仕様車は、カローラシリーズにも採用されていて、高い人気を誇っている。

　さらに、両車ともにワンタッチスイッチ付デュアルパワースライドドア（デュアルイージークローザー、挟み込み防止機能付）、リヤオートエアコン、LEDルームランプを特別装備。ヴォクシー特別仕様車には、スーパーUVカット機能・IRカット機能付ガラスを採用し快適性を高めている。

　そして、特別仕様車ヴォクシーZS煌ハイブリッドの価格は、3,363,120円となった。ハイブリッドのZSが3,269,160円なので、約9万円のアップとなった。

　特別装備されたワンタッチスイッチ付デュアルパワースライドドアの価格だけでも61,560円。リヤオートエアコンが43,200円なので、この2つの装備だけで10万円をオーバーする。さらに、スーパーUVカット機能・IRカット機能付ガラスがプラスされているので、ヴォクシーZS煌は、やや買い得感のある仕様となっている。

　ノア Si W×Bの価格は、3,363,120円。ベースのハイブリッドSiが3,269,160円なので、こちらも約9万円のアップとなっている。こちらもリヤオートエアコンとワンタッチスイッチ付デュアルパワースライドドアの特別装備で10万円オーバーとなる。

　さらに、通常ファブリックのシート表皮がホワイトステッチを施した専用シート表皮（合成皮革＋ファブリック／消臭機能付）となり、グレードアップしている分を含むと、こちらもやや買い得感のある価格設定となっている。

　トヨタ ヴォクシー＆ノアのグレード選びは、まずハイブリッド車かガソリン車かという選択からだ。ガソリン車とハイブリッド車の価格差は、約50万円と大きい。ただ、ハイブリッド車はエコカー減税が免税となり、節税メリットが大きい。グレードにより価格差は異なるが、12万円前後価格差が縮まる。実質38～40万円前後が実際の価格差となる。

　ガソリン車も低燃費性能に優れているので、さすがにハイブリッド車が燃費が良いとはいえ、燃料費で元を取ることは難しい。また、ハイブリッド車は7人乗りのみの設定。8人乗りが必須という人は、ガソリン車しか選べない。

　ただ、新車でハイブリッド車の人気が高いということは、中古車でもハイブリッド車の人気が高くなる。そのため、ハイブリッド車のリセールバリューは若干高めとなることが予想できる。クルマを短中期で売却するのであれば、リセールバリュー分のメリットまで含めると、ガソリン車とハイブリッド車は同等といえるレベルになるだろう。

　こうした部分まで含めると、やはり多少無理してでもハイブリッド車がお勧めとなる。ハイブリッド車は、静粛性も高いので満足度は高い。

　ヴォクシー＆ノアのグレード選びは、次に買い替えるときのリセールバリューを考えると、ヴォクシーはZS、ノアはSiがお勧めだ。このグレードは、専用エアロを装着しており、見た目も最も迫力があるスタイルになっていて人気が高くリセールバリューも高い。

　また、ミニバンを選ぶなら、両側ワンタッチスイッチ付パワースライドドアは必須装備といえるものだ。この装備は、オプション設定。ZSもしくSiを選び、両側ワンタッチスイッチ付パワースライドドアのオプションを選ぶのなら、ノアW×Bもしくはヴォクシー煌を選んだ方がより装備が充実して買い得感がある。そのため、グレード選びはノアW×Bもしくはヴォクシー煌をベースに選んだ方がよいだろう。

　重要なのは安全装備。ヴォクシー＆ノアにはサイド＆カーテンエアバッグは標準装備されていない。多くの人を乗せることがあるミニバンなので、こうした安全装備は積極的に装備したい。

　そして、さらに注意したいのは、自動ブレーキなどの先進予防安全装備。ヴォクシー＆ノアの自動ブレーキは、歩行者が検知できないタイプだ。このクラスのミニバンで、歩行者検知式自動ブレーキが標準装備化されていないのは、ヴォクシー＆ノアだけ。購入時には、こうしたことを踏まえ購入を検討したい。

■トヨタ ヴォクシー特別仕様車ZS“煌”価格
・2.0Lガソリン車　2WD（FF）8人　2,839,320円/7人　2,869,560円
・2.0Lガソリン車　4WD　8人　3,033,720円/7人　3,063,960円
・1.8Lハイブリッド車　2WD（FF）　3,363,120円

■トヨタ ノア特別仕様車Si“W×B”価格
・2.0Lガソリン車　2WD（FF）　8人　2,839,320円/7人　2,869,560円
・2.0Lガソリン車　4WD　8人　3,033,720/7人　3,063,960円
・1.8Lハイブリッド車　2WD（FF）　3,363,120円