奥様にも内緒で買える安心&爽快なカスタマイズカー【日産セレナ ライダー パフォーマンススペック試乗評価】の目次
少し特別な日産車のグレードを支えるライダーブランド
人気の5ナンバーミニバンの中で、日産セレナは高い人気を誇っている。日産セレナは、パッケージングやアイドリングストップ機能などによる低燃費性能など、ライバルを超えるパフォーマンスをもつ。また、走りの実力も前モデルに比べると大幅な進化をしている。ドッシリと安定感のある直進安定性や、しっかりとしたコーナーリング性能も魅力のひとつだと評価したい。
そんなセレナをカスタマイズしライダーと呼ばれるシリーズを送り出しているのが、オーテックジャパンだ。オーテックジャパンは、日産の関連子会社でライダーシリーズなどのカスタマイズ車や福祉車両などを開発・生産している。十数年前、ドレスアップブームを背景にライダーシリーズが登場したときは、正直に言って腰が抜けるほど悲しくなる状態だった。メッキグリルに標準サイズのメッキホイールの組み合わせで、どの車種であろうともとにかくワンパターンだったのを今でも覚えている。そんなライダーシリーズも、作り続けるうちに徐々にセンスが良くなり、今では日産車のラインアップに欠かせない存在へと成長した。
今回試乗したのは、そのライダーシリーズの中でも走りの質を磨いたパフォーマンススペックだ。エアロパーツでのカスタマイズを基本とした通常のライダーシリーズに、ヤマハ製でボディの振動を低減するパフォーマンスダンパーやボディ補強、専用サスペンション、専用タイヤ&ホイールを装備している。
このチューニングメニューだけでも、かなり本格的だ。スポーツカーのチューニングでもよく使われるベーシックな手法でもある。しかし、そもそも、ミニバンに走りのパフォーマンスアップは必要なのか? という疑問もある。ファミリーカーの主流がミニバンになり、クルマも熟成が進む。その中で、さらに差別化を図るためにハイウェイスターのようなエアロパーツ装着車が人気を得た。今では、多少高価だが、こういったモデルが人気の中心。そんなエアロモデルをより差別化させるという流れの行き着く先は、走りのパフォーマンスアップという訳だ。
高速ツアラー的性格が強いセレナ・ライダーパフォーマンススペック
走りだすとすぐに、その違いに気が付く。ステアリング操作に対して、クルマの曖昧さが減っている。曖昧さはある程度必要な要素。あまり機敏に反応すると、右へ左へとクルマの動きが落ち着かなくなるので、ちょっと疲れるクルマになる。とくに、ボディの大きなミニバンのようなクルマは適度な曖昧さが必要だ。そのあたりが絶妙で、ノーマルより機敏だが落ち着かないというほどではないというセッティングだ。
もともとのセレナも意外とミニバンの中では、高いレベルのコーナーリング性能をもっている。リヤサス外側のサスペンションが、なかなか破綻しないので以外なほど安心しれる。このセレナ・ライダーパフォーマンススペックは、そんなセレナのサスペンションを10mmローダウンしたものに変更。そして、バネレートをフロント10%、リヤ20%ほど高めている。重心高が下がっていることは実感出来なかったが、旋回時のロール量も抑えられていて、よりスポーティな動きになっていた。ノーマルセレナのさらにその先に行ける、そんなイメージだ。
そこで、問題はセレナでそんな走りをしてどうするの? ってことだ。同乗者がいれば、間違いなくクレームが入ることは間違いない。そこは、まぁ、お父さん、一人の時に楽しんでくださいということだ。いざとなれば、そこそこ走りが楽しめるということだろう。
さて、セレナ・ライダーパフォーマンススペックの乗り心地。運転してる側は、少しカタめに感じるくらいだ。ところが、2列目、3列目と後ろに行くほどカタさが目立ってくる。これは、ちょっとなぁ、と思ったのだが、2、3列目に他に乗員がいれば印象はもう少し変わったものになると思われる。1、2名乗車だと、1BOXバンでいうところの空荷状態。荷物を積むことを前提にしているので、空荷の時はクルマが跳ねるくらい乗り心地が悪いが、そこそこの荷物を積むと乗り心地が良くなるのと一緒。4名乗車くらいなら良い感じになりそうだ。
試乗コースの西湘バイパスは、道路のつなぎ目だらけの上に、そこそこの速度で走るのでボディやサスペンション性能が分かりやすい。イマイチなミニバンだと、連続してくる道路のつなぎ目のショックを吸収できないだけでなく、ボディの振動も抑えきれないため、クルマが絶えず揺れている感じだ。ところが、セレナ・ライダーハイパフォーマンススペックは、ターン、ターンとシッカリとギャップと振動を押さえ込んでいた。サスペンション性能だけでなく、ボディ剛性を高める補強材やヤマハのパフォーマンスダンパーの効果も高いと評価したい。
パフォーマンススペックというと、ついつい、どれだけ凄い走りをするのか期待が高まるのだが、このセレナ・ライダーパフォーマンススペックは、かなりツアラー的な個性をもつ1台だと感じた。ミニバンのルーズな部分を少し消し、シッカリとした操舵感のあるハンドリングとハイスピードでも暴れないボディは、まさに高速ツアラーとして光り輝く。走りにこだわると言うよりも、爽快に走ることができる。ミニバンに走りなんて、なんて思っているお父さんも一度試してみるといい。ノーマルのハイウェイスターよりも多少高価だが、自分にシックリくれば、それは買い! の合図だろう。
奥様の購入決裁ハードルを超える詰の甘さが・・・。
このセレナ・ライダーパフォーマンススペックの価格は2,919,000円で、ノーマルのハイウェイスターの2,499,000円と比べると、若干装備が違うものの42万円高い。ノーマルのハイウェイスターを購入して、似たようなチューニングをしても42万円あれば出来なくもない。しかし、セレナ・ライダーパフォーマンススペックの価値は「高品質と信頼」だ。日産車を知り尽くしたオーテックが研究を重ね専用に開発されたパーツが装着され、なんと新車保証まで付くのだ。さらに、メーカー直系ということもあり、VDC(横滑り防止装置)も、この状態で再セッティングを行い安全性も考慮している。そう考えると、42万円アップの価値はある。
まぁ、これ以上、オーテックをヨイショするつもりもないのだが、カスタマイズ好きなお父さんにはディーラーで買えるメリットは大きい。カスタマイズするときの最大のハードルは、多くの場合奥様だったりする。例えば、小遣いを貯めて奥様にだまって勝手にインチアップする。そうするとまず「あのクルマにタイヤとホイール付いてんのに、なぜ、別に買う必要があるの?」と言われれば「その通りですけど・・・」と答えるしかない。さらに、ローダウンして乗り心地が悪くなろうものなら「元に戻せ!」とお叱りもある。セレナ・ライダーパフォーマンススペックなら、最初からカスタマイズされているので、多少乗り心地がカタくても「最近のいいミニバンってこんなモンなんだって」で、逃げ切れるかもしれない。
そこで、惜しいのがノーマルのハイウェイスターVセレクションに付いているインテリジェントエアコンシステムが選べない点だ。ビタミンCフィルターで、保湿効果もあるし、プラズマクラスターで除菌や花粉もOK! なんて、話で話題を変えることができるなど、セレナには奥様ウケする機能があったりするからだ。さすがのオーテックも、クルマの仕上げは入念だったが、奥様の購入ハードルを超える売り方研究までには至っていないのが、最大の弱点かもしれない。
<日産ライダー パフォーマンススペック価格>
・8人乗り 2WD 2,919,000円
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