ドライバーを見送った後、クルマが自ら自動で駐車場へ! 自動運転はここまで進んできている!!
日産はカリフォルニアで開催した日産360において、自動運転技術を具現化した実験車両を公開した。日産では2020年に自動運転技術を搭載したクルマを発売すると発表している。夢のクルマともいえる自動運転機能を備えたクルマが、すぐに手の届くところまで近づきつつあることを明示した。
今回公開されたデモ走行では、道路の車線や標識を認識して車線に合わせて制限速度で走る機能を始め、遅いクルマがいたときに車線を変更して追い越す機能、道路が狭められていたときには、それを避けて斜めに走る機能、クルマの陰から人が飛び出したときに、ハンドルを操作して衝突を避ける機能などが示された。
このクルマに助手席に同乗していたが、運転席に座ったドライバーは、ハンドルに手を添えることなく、クルマが上記の動きを自動で行っていた。
さらに、ドライバーがクルマから降りた後、クルマだけが動き出して、駐車場内でほかのクルマを避けて走り、空きスペースを見つけて駐車するといったデモもあった。
このクルマは、後でドライバーが呼び出せば、元のクルマを降りた位置まで自動運転で戻ってくるという。
日産の実験車両には、長距離を見るためのミリ波レーダーを始め、中距離を見るためのレーザースキャナー、近い周囲を見るためのカメラなど、さまざまなセンサーが搭載されて周囲の状況を認識する仕組み。
そうした得られた情報をベース、人工知能やアクチュエーターがクルマを制御して、複雑な状況に対応してうまく運転していた。直ちに自動運転にまで達しなくても、それに至るまでに実用化できる技術もいろいろとあることがアピールされたいた。
このように、人間が操作しなくてもクルマが自律運転をすることはすでに可能な水準にまで技術が進んでいる。グーグルなどのIT系企業も自動運転を目指した開発を進めていることが報じられているが、自動車メーカーの技術水準はさらに高いところに達していると考えていい。
クルマ側の技術は、自動運転直前。自動運転を支える社会インフラなどの整備が急がれる
個々の機能を見ると、すでにほかのメーカーが実用化していたり、あるいは技術を発表しているものが多い。速度制限などの道路標識の認識は、すでにボルボが実用化しているし、前の車両に合わせて走るレーダークルーズコントロールや車線を維持して走るレーンキープアシストなどは多くのクルマに採用されている。
カメラで周囲を確認するアラウンドビューモニターは、(今回はデジタルカメラを採用したので中身は違うものの、日産自身が実用化している技術だ。
あるいは、最新のメルセデス・ベンツSクラスに採用されている知能化された運転支援システムは現時点で最も自動運転に近いものといえる。
今回のデモ走行の中で、目新しい印象があったのは、遅いクルマの追い越しや飛び出した人をハンドル操作で避けることなどだ。
これらを含めて自動運転の技術が進化していくことになるが、実用化まではいろいろな課題があるのも確か。
センサーやスキャナーの性能を上げて、状況認識の精度を高める必要がまずあるし、現時点ではパソコン10台分くらい処理能力を持つ制御装置が必要ということだが、これをシンプルで処理能力の高いものにしていくなどの技術的な課題となる。
それ以上に問題なのは、道路インフラの整備や法環境の整備など、社会的な条件の整備だ。標識や車線などを認識するには、どこを走ってもそれが整備されていることが必要になる。もちろん整備されている前提だけの技術開発ではなく、整備されていない状況でも自動運転できるようになることを目指しているが、整った環境でなら自動運転がより容易になる。
法整備のほうが、むしろ大きな課題かも知れない。現在の道路交通法は人間が運転することを前提に作られていて、自動運転などは全く想定されていない。ハンドルから手を離したら、それだけで違反に問われることになる。そうした初歩的なレベルから、法環境の整備が進まないと自動運転は実現しない。
そして、法環境などを整備していくためには、自動運転に対する社会的な合意も必要になる。社会から認められる自動運転でなければ実現の可能性はない。
最後に、ドライバーに対する運転支援という意味でクルマが自動運転の方向に進むのは当然の流れだろうが、人間にはクルマを意のままに操りたいというニーズもある。ときには、自動運転に任せて楽をしたいと思うと同時に、自分で操ってクルマを走らせたいという欲求がある。
自動運転が可能なクルマでありながら、運転することが楽しいクルマであるように、異なるニーズを両立させていくことが求められる。だから、自動運転をさせること自体を目的にするのではなく、運転支援システムの進化の延長上に自動運転に近い状況がある、そんな形ではないだろうか。
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