レクサスIS300hには、クラウンと基本的に同じハイブリッドシステムを搭載
新型レクサスISは、5月中旬に発表される。発表を前に新型レクサスISのプロトタイプ車に試乗する機会があった。プロトタイプ(試作車)といっても、発売直前のことだから、ほとんど市販車と同等に仕上げられたクルマである。
日本でレクサスブランドを立ち上げたとき、最初にラインナップされたのがISとGSだった。インテリジェント・スポーツを標榜するISは、基本部分でGSと共通するものも多かったが、全体としてはGSとは明確に異なる独自のポジションを持つクルマだった。
今回の新型レクサスISもGSと共通の新プラットホームを採用し、2.5Lと3.5LのV型6気筒エンジンについては同じものとしながらも、ISに初めて設定されたハイブリッド車は燃費志向の300hである。GSにパフォーマンス志向の450hが搭載されたのと大きく異なっている。
ハイブリッド車において、ISとGSに明確な違いを持たせたのは良いが、こうなると逆に心配になってしまうのがトヨタブランドのハイブリッド車だ。
新型レクサスIS300h用のハイブリッド車は、基本的にクラウンのハイブリッドと共通である。ということは、クラウンとISがタメを張り、GSはクラウンよりも上に位置づけられる形になるからだ。トヨタブランドの象徴ともいえるクラウンが、GSの下でISと横並びというのでは、何とも複雑な気持ちにさせられる。
わずか10mm超で、全幅1,810mm。国内では微妙なボディサイズをもつレクサスIS
本題はレクサスISなので、話を戻そう。外観デザインは、レクサスのスピンドル(紡錘形)グリルを備えるほか、シャープなキャラクターラインを備えている。ISらしいスポーティさが表現されたデザインだと思う。強いて言えば、前から見たときにGSと見分けにくいのが難点か。
インテリアは、質感の向上が図られたというが、直線基調が目立つインパネの造形はちょっと古くささを感じさせるものでもある。
ボディサイズの拡大やホイールベースの延長に合わせて、室内空間も広がったが、ボディは全長が80mmも拡大され、全幅も10mm拡大されて1810mmになった。クラウンでさえ1800mmで踏み止まっているのに、海外市場をメインにしたISでは1800mmを超えても良いということなのだろうか。
いずれにしても、フルモデルチェンジを重ねるごとにボディを大きくしていくことには、基本的に反対である。むしろボディを小さくしながら、室内空間を拡大するというくらいの技を見せて欲しい。
最もエキサイティングなハンドリング性能を得たレクサスIS350 Fスポーツ
新型レクサスISのプロトタイプ車には、貸し切り状態にしたターンパイクで試乗した。一定の制約はあったものの、貸し切りであることによる自由もあり、いろいろな走りを試すことができた。
先にフルモデルチェンジしたGSは走りのパフォーマンスの面では、相当に良くできたクルマであり、それを受け継いだISも同様に良くできている。
最も好印象だったのはレクサスIS350“Fスポーツ”で、IS350にだけ8速ATが組み合わされるほか、シャシーもLDHが採用されるなど、引き締まった走りを見せる。ターンパイクのような高速コーナーが連続するシーンでは、とても楽しく乗れるクルマである。
可変ダンパーや可変ステアリング、さらにLDHという具合に、トヨタ(レクサス)の最新のシャシー技術を盛り込んで作られたモデルであるだけに、安心して楽しく速く走れるという点でイチ推しのグレードである。
エコカー減税が受けれないガソリン車。ハイブリッドを搭載したレクサスIS300hが、70%の構成比となるのも当然
新型レクサスIS250にも乗ったが、こちらは価格の安い(といっても具体的な価格はまだ発表されていないが)ベースグレードという意味しか感じられなかった。リーズナブルな性能と価格のモデルといえばそうかも知れないが、IS350に比べると動力性能でもシャシー性能でも見劣りするからだ。
V型6気筒エンジンを搭載するガソリン車で、どちらが良いかを比較したら、IS250よりIS350のほうが圧倒的に良いといえるが、その一方でIS350を含めてガソリン車には存在意義が薄い。というのは、具体的な燃費はまだ公表されていないが、ISはGSと同様にガソリン車はエコカー減税の対象にならないようで、今どきのクルマらしくないからだ。
GSとクラウンに続き、今回のISでもアイドリングストップ機構の搭載が間に合わなかったが、早急に搭載して燃費の向上を図るべきだと思う。
ISの事前予約では、ハイブリッド車が60〜70%を占めているという。免税となるハイブリッド車と減税無しのガソリン車とでは、損得勘定で20万円以上の違いがあるのだから、普通の人がハイブリッド車を選ぶのは当然のことである。
レクサスIS300h Fスポーツのハイブリッドシステムを変更できるドライブモードは、メリハリが効いていて楽しい
レクサスIS300hのハイブリッドシステムは、基本的にクラウンハイブリッドと同じシステムを搭載する。直列4気筒2.5Lエンジンに電気モーターをプラスした仕様で、極めて効率の高いハイブリッドシステムに仕上げている。
これまで、レクサスブランド車で、唯一ハイブリッド車を設定していなかったISに初めて設定されたモデルであるだけでなく、これまでヨーロッパ向けに設定していたディーゼルも廃止してハイブリッドで欧州に挑むという。それくらいに、力の入ったハイブリッド車だ。
ハイブリッドシステムの熱効率がディーゼル並みに高いので、ヨーロッパでも勝負になると踏んだのだろうが、都市間高速移動といったシーンで、どこまでディーゼルに対抗できるかとなると、難しいものがありそうだ。
日本ではディーゼルの設定はないので、素直にハイブリッド車を仕上がり具合を判断すれば良い。全体的な印象としては、クラウンで感じた通りに良くできたハイブリッド車であると思う。
搭載エンジンが4気筒であることは、振動や騒音の面で不利にになる要素ではあるものの、実際に走らせても、その不利さを感じるシーンがない。4気筒であるという先入観を持って乗るから多少の振動や騒音が気になるだけのことで、何も聞かずに走らせたら4気筒であることは気にならないと思う。それくらいに良く仕上がっている。
強いて言えば、電気式無段変速機の走りがATなどに比べるとダイレクト感に欠ける感じがあるのが難点になるが、この無段変速機のスムーズさはむしろ長所といえなくもない。
新型レクサスIS300h“Fスポーツ”に乗って、ドライブモードをいろいろと試しながら走らせたら、メーターの色が変わり、パワートレーンのレスポンスが変わり、ステアリングやシャシーなどが変わった。モードの違いによるメリハリもそれなりに効いている。
スポーツやスポーツ+を選んで走れば、パワートレーンのレスポンスが良くなって、素早く力強い加速が得られるようになる。このモードなら無段変速機に対する不満もなくなるから、ふだんはECOモードで走り、その日の気分によってスポーツモードなどを選べば良い。
この他、プリクラッシュセーフティシステムが従来からのミリ波レーダー方式で、人間認識ができないタイプであるなども、もうひとつ物足りなさを感じる部分。ISにあるのはGSやクラウンにあるものばかりで、ISならではの要素がほとんどないのが、最も物足りない点だ。
新型レクサスIS300h スペック等
代表グレード | レクサスIS300h |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,665×1,810×1,430mm |
ホイールベース[mm] | 2800mm |
総排気量[cc] | 2,493cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 178(131)/6,000rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 22.5(221)/4,200〜4,800rpm |
モーター最高出力[ps(kw)] | 143ps(105kw) |
モーター最大トルク[kg-m(N・m)] | 30.6kg-m(300N・m) |
システム全体[ps(kw)] | 220ps(162KW) |
車両重量[kg] | 未定 |
ミッション | 電気式無段変速機 |
タイヤサイズ | F:225/40R18 R:255/35R18 |
燃費 | 非公表 |
定員[人] | 5人 |
税込価格[万円] | 未定 |
燃料 | レギューラーガソリン |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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