レクサス のラインナップに、IS系の基本プラットホームをベースにしたクーペモデルの新型レクサスRC が加わった。世界のプレミアムブランドは、必ずクーペ やカブリオレ をラインナップしていて、それによってブランドイメージを高めているのに、SCが絶版になった後のレクサスは、クーペがないためにやや物足りないラインナップになっていた。

販売台数は少なくてもクーペやカブリオレは、プレミアムブランドに必須ともいえるものだから、取り敢えずそれが復活したことは喜ばしい。だが、レクサスRC Fを除くRCはRC350とRC300hの設定で、このパワートレーンで良いのか思わせる部分があった。

レクサスRC350に搭載されるのはV型6気筒3.5Lエンジンで、234kW(318ps)/380N・mのパワー＆トルクを発生する。この2GR-FSE型エンジンはレクサスの日本開業に合わせて登場したエンジンで、直噴とポート噴射を組み合わせて効率の良いエンジンに仕上げている。

当時は、このクラスのV型6気筒エンジンとしてデキの良いエンジンだったが、登場後はあまり改良が加えられておらず、今どきの時代環境からズレが生じているのも事実である。

なぜなら、スポーツカー 用のエンジンであっても環境性能の高さが要求されるのが今の時代である。それなのに、2GR-FSE型のエンジンはそれが欠けている。スポーツモデルのRCとはいえ、エコカー減税の対象にならないようなエンジンでは話にならない。アイドリングストップ機構を装着するなどして、燃費性能を高める努力が必要である。

　環境性能には不満があるが、レクサスRC350の走りのパフォーマンスには不満はない。車両重量はIS350に比べると100kgほど重いが、それを苦にしない動力性能である。

レクサスRCのボディが重くなったのは、ロッカーパネルを大断面にしたことなどが影響しているようだ。他にもクーペボディにレーザーウェルディングの溶接技術や構造接着剤が採用され、これにより高剛性ボディとなり、結果として走りの良さが得られている。

中でもRCの“Fスポーツ”の引き締まった走りは好感が持てる。可変ステアリングやLDHと呼ぶ後輪操舵の機構が加えられ、軽快なハンドリングを感じさせる走りを実現する。クルマが思うように動く感じで、ドライバーが自らクルマを操っているという実感が高まるのが良い。

さらに、レクサスRC350には8速ATが組み合わされた。ATの多段化は世界中の自動車メーカーが積極的に進めていて、トヨタややや遅れ気味になっていたが、LSやIS Fに続いてついにRC350にも8速ATが採用された。

多段化ATによる滑らかで素早い変速フィールなどはとても良い。ほかのモデルにもどんどん採用するべきだろう。ただ、時速80kmでクルージングしているときに使っているギアは7速である。日本では、時速80kmで8速に入れて良いと思う。外国車の多段ATも同様だが、レクサスは日本車なのだから、もっと日本仕様に徹すべきである。

レクサスRC350の試乗車は“バージョンL”が660万円の本体価格にオプションが装着されて700万円強、“Fスポーツ”は678万円の本体価格にオプションが装着されて760万円弱の仕様になっていた。絶対的に高い水準にあるだけでなく、この価格帯には魅力的な輸入車がたくさんあるので、RC350がたくさん売れることにはならないだろう。そもそも今の日本では、クーペはあまり売れなくなっている。

■レクサスRC350/RC300h価格
・RC350 5,960,000円
“version L” 6,600,000円
“F SPORT” 6,780,000円

・RC300h 5,650,000円
“version L” 6,290,000円
“F SPORT” 6,270,000円