ルノー ルーテシア ゼン(ZEN)試乗記・評価 ターゲットは、MT派? 小排気量+MTの魅力が詰まったスタイリッシュコンパクト
好調ルノーのけん引役となっているコンパクトカーが「ルーテシア」だ!
ルノールーテシア に新しいエントリーグレードとして、0.9Lの直噴ターボ仕様エンジンを搭載する新グレード「ゼン(ZEN)」が追加された。
現行ルノー ルーテシアが、発売当初に搭載していたのは、直列4気筒1.2リッターの直噴ターボ仕様エンジン+6速デュアルクラッチだけだったが、今回のゼンには0.9L直列3気筒の直噴ターボエンジン+5速MTと組み合わせとなった。
ルノーといえば、ルノースポール とカングー だけが売れるメーカーというイメージだった。一般的なモデルは特徴に欠ける印象があり、なかなか販売が伸びなかったのが実情だった。でも、最近はルーテシアやキャプチャーなども売れるようになってきた。
ルノーは、2014年には前年比23.6%増の4662台を販売した。輸入車全体不調の中、23.6%増もの大幅な伸びを記録したのは大したものだ。これは、ルノーとして過去最高の販売台数だったが、それがルーテシアやキャプチャー
によってもたらせたのは言うまでもない。
1.2Lゼン同等の装備でありながら、低価格設定としたMT車
そんなルーテシアに追加されたのが、0.9Lエンジンを搭載するゼンで、エントリーグレードとなる。208万円という価格もほぼアクティフ並みの設定だ。
外観デザインは、これまでに販売されていたルーテシアと基本的に変わらない。新しいデザイン責任者が就任して、始めた新世代デザインを採用したモデルだ。エントリーグレードながら、16インチのアロイホイールが標準で装備されたり、メッキモールが使われるなどして、上級グレードに対して引け目を感じなくてすむような仕様とされている。
インテリア回りも、デザインは基本的に共通で、装備に多少違いがある程度。1.2Lエンジンのゼンと同様に、エアコンがマニュアルになり、バックソナーや助手席バニティミラー付きサンバイザーが装備されないことなどが上級グレードのインテンスとの違いである。
軽さも武器!? 0.9Lでも、想像以上に元気よく走る!
ルーテシア ゼンに搭載される新開発の3気筒0.9Lエンジンは、これまでの4気筒1.2リッターのうち1気筒をカットして3気筒にする形で作られたもの。動力性能は排気量相応という感じで、88kW/190N・mだったものが、66kW/135N・mに抑えられている。
動力性能の数字は控えめなものだが、エンジンとトランスミッションの違いから0.9Lのゼンは1.2Lのゼンに比べて60kgも軽い。この軽さが貢献するのか、走りそのものに不満はなく、ワインディングに見立てた首都高の都心環状線を走らせても、相当に軽快感のある走りを味わうことができた。
エンジンの性能を効率良く引き出す5速MTは、操作性に優れるのが特徴だった。シフトレバーは軽くてスポスポ入る感じがあって、シフト操作がとてもしやすかった。クラッチペダルも軽くて、ストロークも適度なものだ。スポーティカー のMTとは異なるフィールではあるものの、操作のしやすさは上々のレベルである。
インパネには、シフトインジケーターが設けられていて、矢印によってシフトアップやダウンを促す仕組み。車速によっても表示の地方は異なるが、ECOモードでは2000回転くらいから、ノーマルモードでは3000回転くらいからシフトアップを促す表示が出る。
ECOとノーマルのモードの違いによる走りのメリハリは、それなりにはっきりしている。でも、ECOにすると走らなくて物足りないという感じではなく、ECOモードを選択してもそれなりの加速感を味わえた。
時速80kmで走ると5速で2000回転、100kmでは2500回転程度で、0.9Lターボとしては、ほどほどの回転数といったところである。
0.9Lエンジンのゼンには、1.2Lにはないスタート&ストップ(アイドリングストップ)機構が備えられていて、これも燃費に貢献している。ヨーロッパの複合燃費を日本式に換算すると22.2km/L程度になるとのことで、この日の試乗でも首都高を中心に、40kmほどの距離をそれなりに元気良く走らせながら、燃費計の表示は17.5km/Lをマークした。
フランス車はMTじゃなければガマンできない、コダワリ派向けのモデル?
アイドリングストップは、クルマが完全に停止してからエンジンが停止する仕組みだが、アイドリングストップに入った状態でステアリングを操作しても、エンジンがかからないのは良い点だ。
乗り心地の良さはフランス車らしいもので、0.9Lのゼンは16インチタイヤを履くことも乗り心地につながっている部分がある。空気圧も220/200に設定されていて、燃費を向上させるために無理やり高めの空気圧設定にしていないのが良い。
車速感応式の電動パワーステアリングは、低速ではかなり軽めの印象だが、走らせていくと車速に応じて自然に手応えが増してくる。このあたりのフィールにも不満はなかった。
ゼンの価格は208万円。200万円を切る価格が設定されれば、相当なインパクトがあったかも知れないが、今は消費税8%の時代である。これを含めて208万円の価格は、税金を除いた価格で考えれば完全に200万円を切っている。エントリーグレードにふさわしい価格である。
ルーテシアの1.2L車は全車が6速のデュアルクラッチなので、マニュアル車で運転を楽しみたいユーザーにとって0.9Lのゼンはとても貴重な存在だ。最近は、若いユーザーがマニュアル車を運転できる免許を持っていないので、たくさん売れることは望むべくもないが、マニュアル車を志向するユーザーなどを中心に案外手堅い売れ行きを示すのではないだろうか。
ルノー ルーテシア ゼン価格
・ルーテシア ゼン0.9L:2,080,000円
・ルーテシア ゼン1.2L:2,211,000円
ルノー ルーテシア 0.9Lスペック
定員[人]5人
代表グレード | ルノー ルーテシア ゼン 0.9L |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,095×1,750×1,445mm |
ホイールベース[mm] | 2,600mm |
車両重量[kg] | 1,130kg |
総排気量[cc] | 897cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 66(90) / 5,250rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 135(13.8) / 2,500rpm |
ミッション | 5速MT |
価格 | 2,080,000円 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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